起業したての会社が税理士に依頼できる8つの業務とポイント

更新日:2018.06.10

個人事業を含め中小企業クラスの会社を設立したとき、手間となるのが「決算書の作成」「各種税務関係書類の役所への届け出」などです。せっかく会社を作ったのに、経営者自らが経理作業や税務申告の準備に追われて、本業がおろそかになってしまったら、本末転倒です。

そこで経営者の強い味方になってくれるのが、顧問税理士です。税理士は、そうした手続を代行するだけでなく、経営へのアドバイスなどを通じて、会社にとっての心強いパートナーとなってくれます。ここでは、起業したばかりの会社が顧問税理士に依頼する内容や、そのメリットをご紹介します。

ポイント1 起業支援ができる

そもそも税理士に何かを依頼するのは、会社を設立した後のことと考えている人も少なくないと思います。しかし、設立時もしくは設立直後にもさまざまな手続きが発生します。

・経営全体のアドバイス

例えば青色申告の届出をしなければ、税制上の優遇措置が大きい青色申告で確定申告を行うことができません。また、社会保険、労働保険などの手続きも行わなければなりません。さらに、これから事業を行うに当たっては、銀行や公的機関からの融資を受ける必要がある会社もあるでしょう。融資を受けるに当たっては、事業計画書が必要な場合もあります。

こうしたさまざまな手続きも、顧問税理士がサポートしてくれる場合があります。税理士業務は、おもに税務に関することだけと思われがちですが、最近ではこのような融資に関するアドバイスから社会保険、労働保険に関することなども含め、経営全般に関わるサポートをしてくれるのです。

・法人化のタイミングも税理士に相談

個人事業主の場合は、ある程度収益が上がってきたとき、株式会社などに変更する「法人成り」というタイミングがありますが、その際の手続きなども顧問税理士に任せると手続きもスムーズに行えます。

ポイント2 決算書や確定申告書類の作成ができる

「決算」や「確定申告」など、年1回の税務処理をともなう申告書類の作成と申告は、特に経理システムが整っていない規模の小さな会社などでは、手間のかかる作業です。しかしこれは会社として必須の作業だけに、省くわけにはいきません。

もちろん、これらの手続きは自分自身で行うこともできますが、顧問税理士に依頼するメリットは、「早さと正確さ」です。顧問税理士以外の人が作成した申告書には、約8割の計算間違いがあり、その多くは税金の納め過ぎと言われています。

事業主といえども、経理の専門的な勉強をしてきたわけではありませんので、プロ並みの申告書が作れないのは当然です。忙しい経営者は、毎年更新される法律をカバーすることも難しいでしょう。

しかし、顧問税理士に依頼すれば、その道のプロですから、法改正なども踏まえ、適正な申告をしてくれます。税理士が作成した決算書は信用力も高く、後述する税務調査のさいも毅然とした対応で臨むことができます。

・税理士が作成する確定申告書

例えば、過去の申告で税金の納め過ぎがあった場合も、正しい手続きを踏まえることで、税金も正しく戻ってきます。そうした手続きも税理士が代行してくれます。

また、申告のためには、日々帳簿に記帳したり、領収書をそろえたり、決算期には棚卸をしたりと、さまざまな作業が発生します。

もちろん、経営者が自ら決算書の作成や申告をおこなうことで、会社の経営状況が把握できたり、税務の知識が身につくこともあるでしょう。

・経営者の本業は、会社運営

しかし、知識不足だったり、段取りがわからなかったりすると、経理業務にばかり時間を取られて本業に集中できないこともあるでしょう。その点、税理士に依頼すれば、記帳などの業務も代行してくれますので、経営者は本業に腰を据えて取り組むことができます。(ポイント5参照)。

また、現在の確定申告では、e-Taxを利用して申告している事業主も増えてきていますが、税理士に依頼すれば、申告書を代理送信してもらうこともできます。その場合、事業主本人の電子証明書も必要ありません。

ポイント3 税務調査への対応ができる

税務署や国税局から税務調査が入ったときの対応も顧問税理士に依頼することができます。

会社経営をしていると税務調査が入ることがあります。

もし税務署職員に申告内容について質問されたとき、経営者は正しく応えなければなりません。しかし申告内容について自信を持って応えられる経営者は多くないでしょう。

・税理士なら毅然とした対応が可能

そういうときでも、顧問税理士に依頼しておけば税務署の対応に立ち会ってもらうことも可能です。専門家の立場から、税務処理の内容の正当性を主張してくれるので、大変心強いでしょう。

税務署や国税局は、会社の業種や規模を見て、「通常ならどのくらいの収益を上げているか」という情報を持っていますから、そうした数字と乖離のある会社には常に目を光らせています。

逆に言えば、税務調査が入るということは、税務署側が、会社の申告内容に何らかの不備があるという確信をもって来るということも言えます。その場合、税務申告の内容を正確に応えられなければ、追徴課税などを受けることもあります。

仮に追徴課税を課せられた場合でも、顧問税理士に対応してもらうことで、追加徴税を減額してもらうことが可能になるケースは多々あります。税務調査の結果、追徴課税として100万円以上となることも珍しくありません。しかし税理士を通せば、それを数十万円に減額することも可能です。

こちらも合わせてお読みください。
はじめての税務調査、対応方法と注意すべきポイント解説!

ポイント4 節税・税金対策ができる

税理士と顧問契約を結ぶ理由として、節税と税金対策を挙げる事業主は多いでしょう。会社を経営する以上、誰もが利益を上げて儲けたいと考えますが、儲ければ儲けるほど税金の負担は増えていきます。

・節税対策として最強の味方

例えば税の対象となる所得が800万円以内なら、法人税率は15%、それに事業税や住民税などを合わせると、約24%の税金がかかります。さらに、所得が800万円以上になると、法人税率が10%近く跳ね上がり、税負担は30%以上になります。1000万円の利益を上げても、300万円は税金で持っていかれるということです。

事業主のなかには、税金の負担の重さに耐えかね、脱税に手を出す人もいます。しかし脱税が見つかった場合、非常に厳しい重加算税などの罰則が課せられますから、脱税という選択肢は考えないようにしましょう。

そこで、顧問税理士に依頼すれば、年間売上と利益を予測し、節税のための対応策を考えて経営者にアドバイスしてくれます。もちろん、脱税をアドバイスする税理士はいません。

・税理士は節税方法を熟知

節税にはいろいろな方法があります。わかりやすいのは基礎控除などですが、さらに経費の計上の仕方によって節税につながるものもあります。優秀な顧問税理士であれば、そうした節税方法を提案してくれます。

財務基盤の脆弱な中小企業にとっては、節税もお金を残す有効な手段となります。

たとえば、貸借対照表上の課題として、「貸方」の「負債の部」を減らして「純資産の部」を充実させる必要があるとします。純資産の部を充実させる方法は2つあり、1つは資本金を増やす「増資」、もう1つは、「利益剰余金の積み上げ」です。利益剰余金は、損益計算書の「(税引後)当期純利益」から積み上げられていきます。つまり、その年の利益から、支払った税金の残り部分を着実に貯めていくことが必要です。

このように、税金を最低限に抑えるために税理士に依頼し、脱税とされないように調整してもらうことができます。

ただし、税理士のなかには、節税に積極的な税理士と消極的な税理士がいる点に注意です。後者は国税局出身の税理士などに多いと言われますが、その点も踏まえて税理士に相談することをオススメします。

ポイント5 記帳代行ができる

記帳代行とは、帳簿作成などの経理業務を代行してもらうものです。平成30年現在、記帳業務は義務化されており、事業主は青色・白色の違いに関係なく、帳簿への記帳と記録の保存を行わなければなりません。

個人事業や中小企業のなかには決算期が迫ると慌てて記帳などの作業を行うところもあるようですが、その場合、誤りも生じやすくなります。誤った申告は、税務調査が入った場合に追徴税金が課されることもありますから、細心の注意を払わなければなりません。

また、記帳の重要性を理解していても、実際には記帳作業が追い付いていない事業主は少なくないと思います。個人事業主の中には、忙しくて記帳業務をする時間を割けないという人も多いでしょうし、経理担当者が辞めてしまったり、あるいは人件費を削減したいために経理を専任で雇用していないという会社もあるでしょう。

・経理業務の丸投げで業務効率化

こういう場合も、頼りになるのが顧問税理士の存在です。税理士には、伝票や仕訳帳、現金出納帳などの帳票類から総勘定元帳を作成する作業や、会計ソフトへの入力なども、丸ごと依頼することができます。会社側は、領収書や通帳のコピー、請求書などを税理士に送るだけで、煩雑な作業は必要ありません。

税理士によっては、記帳代行に限らず、そこから会社の財務状況を把握して、財務体質の改善などを提案してくれるところもあります。また、簿記の知識がない経営者や経理担当者は、税理士に記帳代行を依頼する際、会計ソフトの使い方や記帳の仕方を教えてもらってもいいかもしれません(ポイント7参照で後述)。

税理士に依頼することで、事業主は記帳の煩雑な作業から解放され、本業に集中することができます。また、記帳代行を税理士に依頼することで、経理などにかけていた人件費を抑えることも可能になります。

ポイント6 資金調達支援ができる

顧問税理士に依頼した経験のない事業主の方は意外に思われるかもしれませんが、税理士は、金融機関からの融資などの資金繰りの相談にも乗ってくれますし、さらには融資の協力もしてくれます。

例えば、銀行などの金融機関から融資を受けるさいに必要なのが、決算書です。ポイント4の「節税対策」のところで説明した内容とは一見矛盾するように思われるかもしれませんが、節税をすれば納税額が減ります。納税額が減るのは、利益が少ないということを意味しますので、融資の審査に大きく影響します。

・税理士の活用で融資を有利に

そこで、融資を目的とする場合は、顧問税理士と相談をして、あえて節税をしない、もしくは節税額を調整して、融資が得られるだけの利益を残しておくということもできるわけです。

このように、融資のために決算数値をどのくらいの水準に落とし込んでいくかということや、融資に必要な事業計画書の作成など、融資を通すためのノウハウを顧問税理士はふんだんに持っていますので、積極的に活用するといいでしょう。

場合によっては、顧問税理士に依頼して、必要に応じて融資の際の面談などに同席してもらうこともできます。金融機関の担当者からの専門的な質問にも対応してもらえれば、非常に心強いですし、事業主の心理的負担も軽減されます。

銀行以外でも、自治体の補助金や助成金、日本政策金融公庫等の融資を受ける際に、顧問税理士が協力してくれることがあります。特に現在は、中小企業向けの補助金(ものづくり補助金や創業補助金、小規模事業者持続化補助金など)が促進されており、それらの認定支援機関になっている顧問税理士であれば、補助金の申請を積極的に支援してくれます。

ポイント7 経理・会計指導ができる

ここまで述べてきたように、税理士に依頼することで経営者や社員は煩雑な記帳などの業務が軽減され、経営に集中できるなど、さまざまなメリットが生まれます。

しかし、だからといってすべてを税理士任せにしていたら、いつまでも会社にノウハウが蓄積されません。また、税理士と長く付き合う場合でも、経営者や社員自身が経理や会計の正しい知識を身につけることで、より的確な経営判断や業務上の判断が行えるようになります。

そこで、税理士への依頼を通じて、会計や経理のノウハウを会社の中にも蓄積していくのが賢明でしょう。顧問税理士は、納税に対する正しい知識や情報を提供することにより、その会社の経理処理方法に即した適正な決算、会計帳簿の作成方法、会計ソフトの導入やその使用方法、仕分けの入力方法なども指導してくれます。

また、後述するように、財務内容をベースにした経営上のアドバイスもしてくれます。

ポイント8 経営のアドバイスができる

税理士と、経営上のアドバイスを行う経営コンサルティングは別の役割だと考えている経営者も少なくないようです。やはり税務・会計のイメージが強くなりがちですが、実は税理士は、税務・会計のプロであると同時に、多くの企業と関わり、経営者様の悩みを聞き、資金調達に関する金融機関との交渉なども行うことで多くの知験を蓄積しているのです。

加えて税理士は、その会社の記帳代行や帳簿の作成を行うことで、会社の財政状態も熟知しています。財務諸表からは、経営上の問題点や改善点などの膨大な情報が読み取れます。税理士は、それらの数値を分析することで、会社全体の経営状況を把握し、その会社の状況に応じた改善策を提案することができるのです。

そうした知識、経験を活かし、税理士は経営のアドバイスも行っています。例えば、起業したばかりの会社にとって重要なのは資金繰り、すなわちキャッシュフローです。売掛金の回収前に、仕入れや支払いなどの支出が発生し、最悪、黒字倒産になってしまうケースなどもあるからです。

・税務知識をフル活用

そのため、お金の流れをきちんと把握し、資金計画・財務戦略を立てるうえで、税理士のアドバイスはとても重要です。顧問税理士は、「月次残高試算表」や「資金繰り表」などの帳票類に加え、業績の推移や運転資金の状況を見て、適切なアドバイスをしてくれるでしょう。

お金の流れが安定したら、将来会社を発展させるためにどのくらいの規模の投資ができるのか、そのためには、いくらくらいの融資を獲得する必要があり、会社の財政・経営状況から、どの程度まで負債が許容できるかといった指摘もしてくれます。

このように、顧問税理士に相談することで、直近の資金繰りだけでなく、将来の経営目標に向けての可能性などについても、的確なアドバイスを受けることができるのです。

・税理士は経営アドバイスが本業ではない

ただし、基本的に税理士顧問契約の内容には、経営のアドバイス・提案などのコンサルティング業務は含まれていないということに注意です。税理士に初めて依頼するときや、税理士変更などを行うときは、その税理士が自社の業種を熟知しているか、どのようなアドバイスをくれるのかといったことを確認し、経営パートナーとして相応しい顧問税理士を探すことが重要でしょう。

まとめ

税理士に依頼するとお金がかかると思い、個人事業主の中には、申告なども自分で済ませてしまうという人も少なくないようです。しかし、税金の還付や、青色申告での最大65万円控除などを適正に行えば、顧問税理士への支払いをまかなって余りある節税対策をすることもできます。

ちなみに、年間売上1000万円以下の個人事業主の場合であれば、顧問税理士に毎月来てもらい、帳簿などをチェックしてもらった場合の顧問料は2万円くらいから、同じ売上規模の法人であれば2万5000円くらいからです。心配な人は、まずは税理士に相談してみるといいでしょう。多くの税理士は、1時間以内の相談であれば、ほぼ無料で乗ってくれます。

・個人事業主が税理士に依頼するタイミング

また、個人事業主などが気になるのは、会社がどのくらいの規模になったら顧問契約などを結んで税理士に依頼したらいいのか、ということでしょう。

よく言われる目安は、「売上高1000万円」です。なぜなら、売上高1000万円を超えた個人事業主は、その2年後から消費税の課税事業者になるからです。その場合、消費税の納税額を自分で計算して確定申告を行わなければなりません。

消費税の計算方法は非常に複雑で、消費税法の専門知識が必要となります。個人が会計ソフトなどを使わずに手計算で税額を計算することは、まず困難といっていいでしょう。

そこで税理士の登場です。タイミングとして、売上高が1000万円をこえたら、税理士への依頼を本格的に検討してみるといいでしょう。

こちらも合わせてお読みください。
会計事務所の活用方法 〜何が依頼できるの?税理士事務所との違いは?

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