シニアのスキルが新たな事業を産む!シニア起業が増えている背景とは?

ポイント
  1. 働き方改革がもたらす環境はシニアにとって住みヅライ?
  2. 大廃業時代でシニアのスキルは垂涎の的
  3. 人生100年時代…安定をとるか自己実現をとるか?

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シニア起業のススメ

私は大学を卒業後、地元の信用金庫に入職し60歳で定年を迎えた。そこでは、健康で働きたいと思えば65歳まで働くことが出来た。私自身も定年後半年ほどはそのまま働かせてもらった。その時点では私の中に“起業する”というアイデアはまったくなかったのに…

あるとき、とある事業承継セミナーに参加した。そこで語られていたこと…地域を支える中小企業がなくなる、事業承継の場面に起こる親子間の断絶…長年、中小企業に向き合ってきたものにとって歯がゆいアルな現実がそこにあった。私のスイッチが入った瞬間だった。その1か月後、私は退職し起業した。セミナーから3か月後のことだった。シニア真っ只中での起業である。

働き方改革がもたらす環境はシニアにとって住みヅライ!?

「シニア」とはウィキペディアによれば“相対的な概念でいうところの年上の人”“高齢者”等とあるが、企業に勤めるサラリーマンにとって、「シニア」はどのような年齢層を指すのだろうか。

労働政策研修・研究機構が公表している企業従事者の賃金カーブを見ると、1976年、1995年、2017年の各調査のいずれも50~54歳で賃金カーブのピークが見られる。賃金の対価=仕事のパフォーマンスの視点に立てば、サラリーマンは入社後30年余でキャリアピークを迎えることになる(賃金カーブ表はこちらを参照して下さい)

では、サラリーマンのキャリアは55歳以降ピークアウトするのか、といえば決してそうではない。誰しも入社後、基礎的な業務スキル→専門スキル→マネジメントスキルといったキャリアを積み重ねていく。それぞれのスキルは簡単には失われない。

変化があるとすれば、企業とそこで働く従業員の関係性である。企業が考える社会との関わり方は時代とともに変化する(しなければならない)。昨日まで提供してきたサービスを、今日からまったく別のサービスを取扱うことはよくある話だ。企業の経営判断による既存スキルの陳腐化が生じ、これまでのスキルが求められなくなることがある。こうした企業のドラスティックな経営判断を、そこで働く社員が皆、受容するとは限らない。

企業と従業員の関係性に関して言えば、シニア世代のキャリア形成期と今とでは労働環境が一変している。サービス残業、ハラスメント対策等々従業員の権利保護が手厚くなっている。これは大変喜ばしいことだが、企業の経営効率で一人当たりの生産性が過度に追及されると、管理職に掛かる負荷がこれまでに増して高くなる。制限時間内に業務の達成と部下教育、また社内外からのクレーム処理などをこなしていかなければならない。自らの仕事に対する夢や理想と忙殺される日常業務での狭間で、シニア世代の多くは“あるべき姿”を見失っている。

また、経営効率化の追求は多くの企業内で働き方の均質化、没個性化を招いている。働き方に関して言えばフレックスタイム制などワークライフスタイルの柔軟性が取り入れられているが、アウトプットに対するアプローチがフレームワーク化し、“経験と勘”が排除されるシステムが重宝されている。その結果“波に乗れない”シニアは社内でパフォーマンスを発揮する機会が減り、いつの間にかサイレントマイノリティとして、貴重なスキルが企業の片隅に埋没されてしまっている。

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【大廃業時代でシニアのスキルは垂涎の的】

日本企業の競争力の源泉は、中小企業との密接なサプライチェーンだと言われている。国内383万社のうち、中小企業と呼ばれる企業は382万社。実に99.7%を占めている。

この中小企業が、昨今大きなピンチに立たされている。今後10年間に、社長の年齢が平均交代年齢である70歳を超える中小企業は245万社あると言われているが、このうち約半数の127万社が後継者不在なのである。

精緻な製造加工から、フレキシブルな流通工程など多種多様な知財を有する中小企業を存続させるべく、政府は向こう10年間を事業承継支援強化期間と位置づけ、官民挙げて取組もうとしている。

これで“企業”というハードは一定数守れるだろう。しかし、その中にある“ソフト”は守れるだろうか。高齢期の社長の頭脳の中にある、暗黙知の“ノウハウ”をどうやって見える化できるのか、長年現場で大手企業との取引で味わって培った“経験と勘”を10年前後で後継者に引き継がせることは、ハード以上に困難である。引き継ぐ側の事業従事年数が浅ければなおさらである。こうした“現場の混乱”を収めることが出来るのはシニア世代のノウハウでしかない

人生100年時代…安定をとるか、自己実現をとるか?

シニア世代にとっての家庭環境は、子供が大学進学期、親の介護等とまだまだ経済的負担を強いられている。そんな中、職場環境が意に添わずとしても、安定した給与収入を投げ打って退職し、創業する経済的リスクが取り辛い現実が多くの人にあるのが事実である。

創業を目指すのなら、まず自分に問いかけよう。何故今の安定した経済的基盤を捨ててまで創業するのか。仮に創業に失敗したときにあなたの大切な家族は守れるのか。そのリスクを取ってまで、創業であなたのしたいことは社会的に意義があるのか。そのリスクを超えられる確かな勝算がしっかりと描けているか。そして、あなたの家族にプレゼンテーションしよう。あなたは一番身近な家族を説得できるか、賛同を得られるか。協力を得られるか。

この“谷”を乗り越えなければ創業は断念すべきである。この“谷”は深い。先の見えない不安やオーバーワークの辛さからくる深さではない。罪深い深さなのだ。

この谷を越えられるのは、あなたの覚悟と信念、周到なビジネスプランと家族や仲間の協力が得られるかどうかである。

起業にはタイミングがある。そのタイミングを掴むには、常から起業を想定して自らのスキルを見直しながら、社会ニーズを探っておくこと。自分中心のアンテナを張っていてもいけない。発想は常に社会から。自分のスキルが社会の誰を幸せにすることが出来るのか?この課題を突き詰めて考え、実証して確信していければ、その先に起業する自分の姿が見えてくる。その“トキ”を掴めば、必ず貴方自身の自己実現の扉が開かれる

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著者プロフィール

西田 隆行

西田 隆行

中小企業診断士。1980年大学卒業後信用金庫に勤務。中小企業や小規模事業者へ資金繰りや財務のコンサルティングを行っている。また地域の中核企業、老舗企業の再生に深く関与。「事業を継続するための財務戦略」をメインテーマに活動している。2017年12月から、日本最大の起業・開業・独立者向けポータルサイト「助っ人」(www.suke10.com)の編集チームで、主に「銀行とのつきあい方、資金調達、事業承継」をテーマとしたコラムを担当している。