起業当初は消費税が免除される?免除期間の上手な設定の仕方と落とし穴とは?
- 起業のタイミングによって消費税が免除される期間が違う
- 初期投資が多い場合は、消費税の免除制度はかえって不利
- 免税期間であっても消費税は受け取ってよい
個人の場合は、暦年が自動的に事業年度となります。
起業したのが、例えば2019年8月であっても、2019年1月~12月が1年目、2020年1月~12月が2年目というカウントの仕方をします。
1年目は、2年前という期間がありませんので、自動的に免税期間となります。
設備投資がかさむなど、支払の方が多いことが見込まれるのであれば、敢えて納税義務者を選択する検討をしてもよいでしょう。
2年目については、1年目の前半6カ月(特定期間といいます)の課税売上高または給与の額が1,000万円以下であれば、2年目も免税期間となり、消費税の支払が免除されます。
前半6カ月というのは、2019年8月に起業したとしても、2019年1月~6月を指しますので、ご注意ください。
もし、1年目に納税義務者となることを選択している場合は、2年目も自動的に課税事業者となります。
設備投資や当面売上が見込めない場合を除いて、消費税の支払の義務が免除される免税期間が長い方がよい場合が多いと思います。
いつ起業すると、免税期間が最長となるのでしょうか。
1年目は原則免税となります。
2年目は、1年目の1月から6月の課税売上高か給与の金額が1,000万円以下であれば、免税となります。
3年目は、1年目の課税売上高が、1,000万円を以下であれば、免税となります。
3年間の免税期間を得ようと思えば、
・1年目の前半の課税売上か給与の額が1,000万円以下→2年目免税
・1年目の1年間の課税売上高が1,000万円以下
かつ
2年目の前半の課税売上高か給与の額が、1,000万円以下
→3年目免税
となります。
これらの要件を満たせば、消費税が免除されることとなります。
とはいえ、消費税の免税を受けることばかり考えて、売上を抑えてしまうのも起業した意味としてどうかという問題もあります。
納税義務が免除されるかどうかきわどいと考えられるときには、この基準を参考にして頂き、有利な方を選べるように、コントロールすることが必要かと思います。
会社を設立して起業する場合はどうなるでしょうか。
法人の場合は、事業年度が基準となります。
1期目は、2期前の期間がありませんので、原則として免税期間となります。
しかし、はじめからある程度規模のある法人については、免除すべきでないという考え方から、法人設立当初から資本金が1,000万円以上の法人については、納税義務は免除されません。
また、資本金が1,000万円未満であっても、年商5億円を超える法人の出資割合が50%を超える場合には、納税義務は免除されません。
2期目については、1期目の前半6カ月(特定期間といいます)の課税売上高または給与の額が1,000万円以下であれば、2年目も免税期間となり、消費税の支払が免除されます。特定期間である1期目の前半6カ月というのは、1期目が始まってから6カ月の期間です。
2018年5月に法人を設立し、2019年3月が最初の決算日である会社については、2018年5月~2018年10月の期間が、特定期間です。
この期間の課税売上または給与の額が1,000万円以下であれば、2期目も消費税の納税義務が免除されることとなります。
この場合は、特定期間は、設立日から、設立日以後6カ月を経過した日の直前の月末の期間となります。
この期間の課税売上高または給与の額が1,000万円以下であれば、2期目も消費税の納税義務が免除されることとなります。
この場合は、特定期間がないので、免税期間となります。
可能であれば、納税義務が免除される期間は長く取れる方が有利といえます。
2期目も必ず免除を受けようと思えば、1期目の前半6カ月(特定期間)で判定されない、1期目の期間が7カ月となる決算期にすること。こうすれば、最長1年7カ月の免税期間を設定することが可能です。
3期目については、1期目の課税売上高が1,000万円超であれば、納税義務が発生します。
この場合、1期目の期間が1年未満であれば、1期目の課税売上高を、12カ月換算して、算定することになるので、ご注意ください。
例えば、1期目の期間が7カ月で、課税売上高が700万円だったばあい、
700万円/7カ月×12カ月=1,200万円>1,000万円
よって 納税義務あり、と判定されます。
12カ月でない事業年度については、12カ月換算をして、納税義務を判定することになりますので、ご注意ください。
「消費税は免税期間中なので、消費税は払わなくてよいのですが、相手からもらってもよいのですか?」
と質問をいただくことがよくあります。
結論を言えば、免税期間中であっても、消費税は受け取ることができます。
消費税を負担しているのは、消費者であり、お金を支払う方です。
それを預かって、国に納付するのが消費税の仕組みであり、事業者はその義務を負っているのですが、免税期間中はその義務を免除されています。
相手方にこちらが消費税の免税期間中かどうかは、公開する義務もありません。
まだ先のことになりますが、2023年には、インボイス制度が導入されます。
このインボイス導入で、免除制度が実質なくなるといわれています。
インボイス制度になると、消費税の納税額を計算する場合に、
「自分が預かった(受け取った)消費税」から差し引く「自分が預けた(支払った)消費税」については、あらかじめ登録された「適格請求書発行事業者」が発行した「適格請求書(インボイス)」に記載された消費税額でなければならないとされます。
「適格請求書発行事業者」は、つまり、課税事業者です。
課税事業者でなければ、「適格請求書発行事業者」となることはできません。
「適格請求書発行事業者」でなければ、「適格請求書(インボイス)」を発行することができず、「適格請求書(インボイス)」を発行できない事業者は、
・「適格請求書(インボイス)」を発行できないことを理由に、取引から敬遠される
・消費税分をもらうことができないが、日々の仕入や支払では消費税を支払うこととなり、収支が悪化
という恐れがあります。
「適格請求書(インボイス)」が発行できる「適格請求書発行事業者」になるには、消費税の納税義務者でなければなりません。
よって、多くの事業者が、取引から敬遠されることを避けるために、免税期間のメリットを享受せず、敢えて課税事業者になることが予想され、消費税の免除制度が実質なくなるのではと言われています。
インボイス制度が導入されるのは、2023年10月からです。
消費税の支払いに耐えられるくらいの財務基盤と、負けない商品・サービスづくりを今からしておきたいところです。
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