使わないと損!?会社を設立するときに活用したい税金の免除制度

ポイント
  1. 減免制度がある税金は、消費税・会社設立にかかる登録免許税、法人税等の3つです。
  2. 商工会議所などの創業支援制度をつかえば会社設立費用が安くなるかもしれません。
  3. 起業する地域によって、受けられる減免制度が違います。国家戦略特区制度を活用しましょう。

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起業していきなり売上がどんどん上がる人はまれでしょう。最初は、収入よりも経費が多い時期があることが少なくありません。1円でもかかる費用は節約したいものです。

経営をするうえで税金はコストのひとつですが、起業するときに免除される税金があることも事実です。

あらかじめ知っておくと、上手に使うことができますが、知らなければ適用を受けることができず、損をしてしまうものもあります。
どんな税金が免除されるのかをみていきましょう。

第一章 知っておくとトク。法人を設立して起業するときに免除される税金

(1) 減免される税金はこの3つ

起業するときに免除・減免されることが多い税金は、消費税・登録免許税・法人税等の3つです。

自動的に免除されるものと、手続きが必要なものがあります。
また、起業する地域によって、免除を受けられるものと、そうでないものがありますので、注意が必要です。
 

(2)消費税は全国共通

事業をする場合は、原則として、お客様から代金とともに、消費税を預かります。
預かった消費税は、自社が仕入れや経費と一緒に支払った消費税を差し引いて、国に納付する義務があります

しかし、法人を設立して1期目は、この納税義務は自動的に免除されています。
ただし、資本金が1,000万円以上の法人や、年商5億円を超える企業に50%以上支配されている法人は、1期目から消費税の納税義務がありますので、ご注意ください。

2期目はどうなるでしょうか。
2期目については、1期目のはじめ6ヶ月の消費税がかかる売上高(課税売上高といいます)またはこの6ヶ月の期間に支払う給与の額が1,000万円以下であれば、消費税の納税義務が免除されます。

3期目については、1期目の課税売上高で判定します。
1期目が12ヶ月ない場合は、1期目の課税売上高を年換算して算出した課税売上高が、1,000万円以下でなければ、免税となりませんので、ご注意ください。

どうしたら、消費税の納税義務を免除される期間を一番長くできるか?
くわしくはこちらをお読みください。
起業当初は消費税が免除される?免除期間の上手な設定の仕方と落とし穴とは?

(3)会社設立の際の登録免許税が減免される

会社を設立する際には、たいていの場合、司法書士に依頼をして、設立の登記をしてもらいます。
その設立費用には、「登録免許税」という税金も含まれますが、この「登録免許税」については、起業する地域や起業する前の手続きによって、減免できることがあります。

第二章で詳しくみていきます。

(4)法人市民税や法人事業税の減税が可能な自治体もある

会社を設立して、はじめての決算日から2ヶ月後までに、1期目の帳簿をまとめて決算をし、納める税金を計算し、納税します。
利益が出た場合は、利益の額に伴い、法人税や法人事業税、法人都道府県民税、法人市民税などを支払う必要があります。

しかし、自治体によっては、これらの税金のうち、法人税や法人事業税、法人市民税の減税が可能なところもあります。
起業する場所によって、また、申請によって、優遇制度を使えるかどうかという違いがあります

第三章で詳しくみていきます。

第二章 登録免許税が免除される場合

(1)会社を設立するにはこれほどのお金がかかる

まず、会社を設立するにあたり、かかるお金をみていきましょう。
会社設立の手続にかかる費用は下記の通りです。

① 定款認証手数料 5万円+αくらい  公証役場に支払います
② 定款の印紙代  4万円 定款認証を電子認証で行う場合は不要となります。
③ 登録免許税  15万円   設立登記の印紙代です
 ※正確に言うと、資本の額×7/1000です。15万円に満たない時は15万円となります。
④司法書士に支払う手続き費用 約10万円
 ※司法書士によって異なります。
 税理士事務所が司法書士と提携し、顧問契約を前提として、設立費用を割引しているケースもあるので、依頼する先はよく検討しましょう。
⑤その他会社印の作成費用など

③の登録免許税は、会社設立費用のうち大半を占めるわけですが、ある手続きを踏んでおくことで、この登録免許税を節約することができます。

(2)一番多くを占める登録免許税を節約する方法

租税特別措置法第80条2項によれば、

個人が、
・産業競争力強化法第114条2項に規定する認定創業支援事業計画に係る(中略)認定を受けた市町村(特別区含む)の区域内において、
・当該認定創業支援事業計画に記載された(中略)特定創業支援事業による支援を受けて会社の設立をした場合には、
・当該会社の設立の登記に係る登録免許税の額は、(中略)次の各号に掲げる会社の区分に応じ、当該各号に定める金額とする。

と規定されており、要件を満たした場合には、

登録免許税が株式会社については、資本金の額×3.5/1000か7万5千円のいずれか多い金額
半額になります!

合同会社や合資会社などについても、減免措置があります。

必要な要件は、2つあります。

1つめは、
・産業競争力強化法に規定する認定創業支援事業計画にかかる認定を受けた市町村の区域内であること。
「認定を受けた市町村の区域内において」とあることから、「すべての市町村ではない」ということです。
具体的には、中小企業庁HPの認定市町村一覧表(こちらのページの下の方)からご確認頂けます。

2つめは、
当該認定創業支援事業計画に記載された(中略)特定創業支援事業による支援を受けることです。
その内容は、市町村によって、異なりますが、商工会議所の創業支援のセミナーを受講したり、創業相談をしたりするなど、市町村が規定した創業支援事業による支援を受けることが要件となります。

たとえば、大阪市であれば、
大阪商工会議所の開業スクールを受講する
大阪産業創造館の起業支援インキュベーションセンターである立志庵を利用していること

などが要件となります。

特定創業支援事業は市町村によって、異なりますので、市町村の窓口で「特定創業支援事業について教えてほしい」と問い合わせされるのがよいでしょう。

これらの特定創業支援事業による支援を受けることが、時期にもよりますが、創業支援補助金の申請の要件にもなっていることがあります
市町村も利用を促進する姿勢のところが多いので、ぜひ積極的に利用しましょう。

 

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著者プロフィール

神佐 真由美

神佐 真由美

京都大学経済学部在学中から「プロフェッショナルになるために手に職を」と税理士を志す。卒業後は、税理士を顧客とする株式会社TKCに入社し、税理士事務所を顧客にシステムコンサルティング営業に4年間従事。本当に中小企業経営者にとって、役に立てるプロフェッショナルはどうあるべきかを問い続け、研究する。税理士試験5科目合格後、税理士業界へ転身。
自ら道を切り拓く経営者に尊敬の念を抱き、経営者にとって「一番身近なパートナー」になるべく、起業支援や資金調達支援、経営改善や組織再編、最近では事業承継支援など多くの経験を積む。経営計画を一緒につくり、業績管理のしくみづくりを通して、未来を見通せ、自ら課題を見つけ、安心して挑戦できる経営環境づくりが得意。大阪産業創造館のあきない・経営サポーターも務め、セミナー実績も多数。「経営者のための資金繰り基礎講座」「本当に自社にとって必要?事業承継税制セミナー」など。

<関連サイト>
角谷会計事務所
未来を魅せる税理士 神佐真由美のブログ