【目的は節税?】中小企業倒産防止共済の概要と利用する際の注意点

ポイント
  1. 中小企業倒産防止共済の概要
  2. 中小企業倒産防止共済を使った節税スキーム

目次 [非表示]

2 中小企業倒産防止共済を使った節税スキーム

倒産寸前の中小企業を救済する当制度ですが、実は、連鎖倒産の防止という本来の目的で使っている方はほとんどおりません。

2-1 節税目的の利用がほとんど

中小企業倒産防止共済の制度を利用している方のほとんどは、中小企業倒産防止共済の掛金全額が所得税や法人税の損金として算入されることを利用して、節税のために利用しています。

個人事業主の方であれば、所得税は累進課税制度が採用されていますから、順調に所得が伸びてきて「翌年以降は税率が上がってしまいそう」というときに中小企業倒産防止共済に加入することで税率を引き下げることが可能です。

また、法人でも、課税所得金額が400万円以下であれば25.9%だった税率が、400万円超800万円以下では27.58%、800万円超の場合には33.59%といったように、所得税ほどではありませんが累進課税制度が採用されており、所得が伸びるほど実効税率は上昇していきます。

このように、翌年から税率が上がるというタイミングで中小企業倒産防止共済に加入したり、掛金を増額したりすることで、効率的な節税を行うことができます。

2-2 中小企業倒産防止共済を利用した節税方法の注意点

中小企業倒産防止共済は、掛金を支払ってから3年4か月を経過すると返戻率が100%となり、任意解約したさいには掛金全額が返還されます。一見、デメリットのない節税方法のように思われますが、任意解約したさいの返戻金が全額益金となることに注意が必要です

つまり大きな損金が生じるタイミングで任意解約をしないと、節税どころか累進課税の影響で余計な税金を支払わなければならなくなってしまうのです。大規模な設備投資をする場合などは、減価償却資産の購入でしょうから大きな損金が出るわけではありません。大きな損金が生じる機会は、実際、以下のケースが多くなります。そのため、必然的に中小企業倒産防止共済の解約を行う場合も以下のケースが多くなります。

(1)退職金が発生するとき

長年勤務した方が退職するさいの退職金に備えて中小企業倒産防止共済の掛金を積み立てておくことは非常に有効ですし、実務上もよく行われています。特に、オーナー社長さんの退職金のためにこの制度が利用されることが多いようです。注意点として、個人事業主の方にはご自身の退職金という概念がありませんので、ご自身の退職に向けてこの制度を利用することはできません。

(2)大規模修繕をするとき

店舗や設備の大規模修繕をするさいに備えて中小企業倒産防止共済の掛金を積み立てておくこともできます。実務上、「修繕」の範囲であれば全額が損金となりますが、「修繕」の範囲を超えて「改良(専門用語で資本的支出と言います)」になってしまった場合、資産として計上したうえで減価償却をし、長期にわたって少しずつ損金に参入しなければなりませんので、注意が必要です。

(3)業績不振などで利益が大きく減少するとき

将来、何らかの理由で利益が大きく減少してしまうこともないとは言い切れません。中小企業倒産防止共済の掛金の上限は800万円ですが、上限に達したあとはそのまま掛金を「預けっぱなし」にしておくことができますので、利益が大きく減少してしまう場合に備えて「預けっぱなし」にしている方もいらっしゃいます。この場合、節税になることはもちろんですが、業績不振で現金が必要なときに、まとまった現金を調達できるというメリットがあります。

2-3 損金算入と所得控除の違い

個人事業主の場合、節税に有利と言われる小規模企業共済や確定拠出年金と、中小企業倒産防止共済には大きな違いがあることに注意です。それは、小規模企業共済や確定拠出年金が所得控除であるのに対し、中小企業倒産防止共済は事業所得の損金算入であることです。

どちらも掛金が所得から差し引かれることから、同じようなものだと思われるかもしれませんが、以下の点で異なることに注意します。

(1)所得税との関係
事業税の税額は事業所得の金額によって、国民健康保険料の金額は合計所得金額によって計算されます。倒産防止共済の掛金は事業所得・合計所得金額から差し引かれますが、小規模企業共済や確定拠出年金は所得控除であることから、事業所得や合計所得金額から差し引くことができません。

(2)社会保険の扶養との関係
小規模企業共済の掛金は損金算入であることから、社会保険の扶養に入るさいの収入基準に含まれますが、小規模企業共済や確定拠出年金の掛金は所得控除であることから、社会保険の扶養に入るさいに考慮されません。したがって、たとえば扶養の範囲内で働きたい主婦の方が利用するなどオススメできます。

注意点として、社会保険の扶養に入るさいの収入基準を定めた規則が曖昧で、専門家の間でも見解が分かれるうえに社会保険庁の職員によっても取り扱いが異なります。筆者は仙台北社会保険事務所に照会し、上記の回答を得ておりますが、実際に検討するさいには管轄する社会保険事務所に確認することをオススメします。

(3)節税との関係
年末に突発的な支出があり、予想外の赤字になった場合、所得控除については節税効果がなくなってしまいますが、損金算入であれば損失の繰越控除の制度を利用することにより翌年に節税効果を繰り越すことが可能です。

積極的にその状況にするのは青色申告控除との兼ね合いで節税効果のロスが大きいためオススメできませんが、年末に支出の多い事業を営んでおり、予測しにくい事業を営んでいる方にとっては、所得控除型の節税プランよりも損金算入型の節税プランがオススメできます。

こちらも合わせてお読みください。
小規模企業共済制度を有効に利用する方法を解説!〜基本内容からメリット・デメリットまで〜

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