農業生産者になりたい!農業で起業したいあなたのための

ポイント
  1. 一口に農業といっても業種は様々である
  2. 生産技術はどこで見につければよいのか
  3. 新規就農のための資金調達

目次 [非表示]

5.どうやって住居環境を確保するか

こちらに関しては、自治体がすでに農家を辞めてしまった家(農家を辞めることを「離農」といいます。)の空き家を斡旋してくれることがあります。状態によっては、かなりリフォームが必要になる場合もありますが、新築を立てるよりは遥かに安上がりになるはずです。

また、農業を営むためにはトラクターなどの農機具を収納する「納屋」(なや)が必要になりますが、離農した農家さんが納屋を現状のまま置いていっている場合もありますので、離農した農家の空き家を狙うのはポイントだと思います。

6.農業は田舎じゃないとできないのか?

都市型農業」という言葉があります。大都市の近郊で行う農業です。消費地に近いので、先ほどの販路開拓の例にあった「レストラン」などに直売するというビジネスモデルにするには、向いているかもしれません。

また、農地に都会の自宅から「通勤」可能というのもメリットの一つです。実際に、東京23区の中でも、練馬区の奥の方にはいまだに農地が残っています。

デメリットとしては、やはり耕作面積が限られてしまうので、大規模経営による「規模のメリット」が得られないという点です。

やはり、農業も製造業の一種なので、大規模に一品目を生産した方が単位面積当たりの生産コストは下がります都市型農業だとそもそもそうした農地の確保ができませんので、大規模農業は不可能です

しかし、みなさんは「起業」を考えているかと思いますので、まずは都市型農業から体験してみるというのも一つの選択肢としてあるかもしれません。

ちなみに、田舎で開業した際の生活環境については
地方で生活したいフリーランサーのための田舎暮らしあるある」をご参照ください。

7.夫婦で起業をお勧めします

農業は本当に地道で孤独な作業です。土日も基本ありません。雨が降ったら屋外作業は休みになりますが、ビニールハウス内の作業は可能です。

特に収穫時期は、1日、場合によっては3時間程度タイミングがずれるだけで、商品価値が大きく変わってしまったりしますそういう状況で体力だけでなく、メンタルを維持するためにはパートナーの存在が必要不可欠だと思います

すでに、奥さんがいらっしゃる方は奥さんと一緒に起業されることをオススメします。もっと言うと、組織的に起業するのが正しい姿だと思うのですが、いろいろな法律の規制のせいで純粋な株式会社が農地を保有することが禁止されていたりします
(注):最近は役員の過半数が専ら農作業に従事するなどの要件を満たした株式会社であれば、農地の保有が可能になっています。

しかし、本当に農業をビジネスととらえるのであれば、普通の株式会社のように、製造部門、営業・マーケティング部門、バックオフィス部門といったように分業するとともに、経営のプロが代表取締役を務めることが合理的なような気がするのですが…

また、農業の最大の敵である「天候リスク」(台風などによる水害などで作物がすべてダメになってしまうようなリスク)を回避するためには、会社組織で全国展開することが理にかなっているような気もします。

8.最後に本当に農家は儲かるのか

同じ業種で、同じような商品を扱っていても儲かっている会社とそうではない会社があるように、農家でも同じ作物を作っていても儲かっている農家とそうではない農家がいるのが現実です。

テレビや新聞では農家の所得を上げるべきだという議論がなされていますが、これは平均的な所得の話で、実際に儲けている人は儲けています。

JAの職員の方に、儲けている農家と儲けていない農家の違いを聞くと、「畑を見れば一瞬で分かる」とのことでした。きちんと雑草を取り除いているだけでなく、農具などを整理整頓しているか、で儲かっているかどうか分かるそうです。

また、JAと取引のある農家であれば、農家の収支の内訳も把握しており、儲かっている農家は日々の作業内容を細かく記録するとともに、肥料代や種や苗を仕入代金、ビニールハウスなどの資材代といった諸々のランニングコストをまめに記録して経営状況をきちんと把握しているとのことでした

現状は、労働集約型産業であるため、時間単価で考えると他の職業の方が効率的かも知れません。色々な産業で当てはまるように、農業においても人手不足は深刻で、最近は外国人研修生の受け入れも活発になってきています。さらに、田舎で農家をやろうとすると、そもそも田舎暮らしに適応できるかという話にもなります。

しかし、近年では農業の自動化が研究されています。農業は天候に左右される、生き物(動物、植物)を相手にしている、といったことで、今までは難しかった自動化も、ビックデータとIoTの技術が農業の自動化を可能にしつつあります。

農業も一種の「製造業」だと考えると、自動化の流れはごく自然なことだと思います。近い将来、農業に関しても生産技術よりも営業やマーケティングが重視される時代が来るかも知れません。とは言え、実際に農作物を栽培した経験があるか否かは、商品価値を把握する意味でも、生産計画を立てる上でも、重要な意味合いを持つと考えられます。

実際に、大企業が次々農業分野に参入しては撤退していますが、生産技術のノウハウを軽視していたからという説もあります。その一方で、建設業で農業に進出して上手くいっている会社を多数知っていますが、これは生産技術をよく知っている人間が生産しているからです

なぜならば、特に土木系の建設会社の場合、農家の方が兼業として勤務している場合が多いからです。そのぐらい、農業の生産技術はデリケートなものなのです。

従って、農業が仮に全自動化されることがあったとしても、生産技術そのものを把握しておくことは無意味なものになるとは思えません。せっかく生産者として起業するならば、10年後の農業のあり方を考えておいたほうがいいのかもしれませんね。そして、生産者としての経験は必ずや10年後にも役に立つことでしょう。

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