【こんなときどうする?】税務調査で領収書などを紛失してしまった時の対処法

ポイント
  1. 保存すべき書類は各法律(会社法や税法等)によって定められており、それぞれ保存期間が違う
  2. 税務調査時に領収書等の証憑を紛失していた場合 ①取引先に再発行を依頼する②購入証明書を依頼する③出金伝票を作成する
  3. 頼りになるのが税務のプロフェッショナルである税理士

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税務調査が入った時にまずチェックされるのが帳簿書類です。
しかし、どこかに保存していたはずの領収書や帳簿といった資料が見つからなかったり、紛失してしまったというケースも少なくありません。また、そもそも帳簿をつけていなかった場合などはどう対処すれば良いのでしょうか。
今回は保存すべき書類の種類や、紛失してしまった場合の対処方法などをご紹介します。

1 保存すべき書類と保管期間

領収書等の証憑(相手方から受け取ったり自社で作成した取引の成立を証する書類)や決算に関して作成された書類など、保存すべき書類は各法律(会社法や税法等)によって定められており、それぞれ保存期間が違います。ここでは税務調査で確認されることの多い書類について解説します。

 1-1 法人の場合

法人における保存すべき書類・保存期間は会社法および法人税法によって次のように定められています。

  • 会計帳簿および事業に関する重要書類

総勘定元帳、仕訳帳、各種補助簿など。決算の締切日から10年間、計算書類および事業報告並びにこれらの付属明細書(貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動報告書)も作成日から10年間保存しなければなりません。

  • 決算に関して作成された書類のうち会社法で10年と定められた以外のもの

現金預金の取引等に関係する証憑書類(預金通帳、借用証、見積書、発注書、納品書、請求書、領収書、仕入伝票等)は書類作成日または受領時から7年間保存しなければなりません

 1-2 個人事業主(青色申告)の場合

個人事業主が保存すべき書類・保存期間は所得税法によって定められており、青色申告か白色申告かで異なります。保存期間の起算点はいずれの場合でもどんな書類でも確定申告の期限日であり、作成日や年度末ではないため注意しましょう。

  • 会計帳簿および事業に関する重要書類

総勘定元帳、仕訳帳や各種補助簿などは、7年間保存しなければなりません。

  • 決算に関して作成された書類

貸借対照表、損益計算書、棚卸表等などは、7年間保存しなければなりません。

  • 現金預金の取引等に関係する証憑書類

預金通帳、借用証、領収書などは、7年間保存しなければなりません。ただし前々年所得が300万円以下であれば保存期間は5年間です。

  • 取引に関して作成し、または受領した上記以外の書類

請求書、見積書、契約書、納品書、送り状などは、5年間保存しなければなりません。

 1-3 個人事業主(白色申告)の場合

個人事業主で白色申告者の保存すべき書類は以下のとおりです。

  • 収入金額や必要経費を記載した帳簿

法定帳簿などは、7年間保存しなければなりません。

  • 業務に関して作成した上記以外の帳簿、業務に関して作成し、または受領した請求書

任意帳簿、納品書、送り状、領収書などの書類などは、5年間保存しなければなりません。

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2 証憑を紛失した場合の対処法

では、税務調査時に領収書等の証憑を紛失していた場合、どのように乗り切れば良いのでしょうか。

 2-1 罰則はある?

まず帳簿書類などを紛失したからといってすぐに罰金が科されたりすることはありません。しかし取引の成立を証する書類がないためにその取引が否認された結果、所得が増加し納税すべき税額が増えると、その増加した税額に対して税が加算されることはあります。

例えば経費支出の証憑がなければ経費支出が認められず、その分利益が増加して当初申告納税した税額を上回ることになり、追加で納税すべき法人税や所得税が発生することになります。その上、修正申告が当初の申告期限内に行われなかったことにより加算税、延滞税も加わります。

なお加算税とは未納分税金の罰金のようなもので、追加で納税する税額の10%となります。この金額が期限内申告税額と50万円のどちらか多い方の金額を超える部分については5%加算となります。

延滞税とは未納分税金の利息のようなもので、納期限までの期間および納期限の翌日から2月を経過する日までの期間については、年7.3%と特例基準割合(各年の前々年の10月から前年の9月までの各月における銀行の新規の短期貸出約定平均金利の合計を12で除して得た割合として各年の前年の12月15日までに財務大臣が告示する割合に、年1%の割合を加算した割合)+1%のいずれか低い割合が適用されます。

納期限の翌日から2月を経過する日の翌日以後については、年「14.6%」と「特例基準割合+7.3%」のいずれか低い割合の適用となります(延滞税の利率は納期限が平成29年12月31日の場合、最初の2か月は2.7%、以降は年9.0%)。

 2-2 偽造したらどうなる?

しかし、帳簿書類などを偽造した場合は、追徴が重くなります。「仮装隠蔽を伴う悪質な行為」とみなされ、単なる加算税でなく重加算税が課され、追加で納税する税額の35%~45%を支払う義務が生じます。

例えば領収書を偽造したことにより50万円の税金を免れていた場合、その50万円と50万円に対する35%(17万5千円)を合算した67万5千円を追徴課税されることになります。当然延滞税も加わります。

またそのような追徴課税がされたことを取引金融機関に知られると大きく評価が下がり、今後の融資継続に支障が出る恐れがあるばかりか、刑法上の文書偽造の罪に問われる可能性もあります。

 2-3 紛失時の対処法

では書類が紛失した場合、諦めるほかないのでしょうか。判明してからでもとれる対策をご紹介します。

①取引先に再発行を依頼する

スーパーやコンビニなどでは難しいでしょうが、長年の取引先であれば相手方にも記録が残っていて再発行に応じてくれる可能性があります。領収書に「再発行しません」と記載されているケースも多く、法律的にも売主に再発行の義務があるわけではありませんが、諦めずに依頼してみて下さい。

②購入証明書を依頼する

領収書の再発行は認めなくても証明書は発行してくれるケースがあります。「購入証明書」や「支払証明書」等の名称で発行してくれますが、有料となるケースが多いようです。日付、取引先の名称、金額、取引内容が記載してあれば十分です。

③出金伝票を作成する

上記の方法がダメだった場合は、自己で支払いをした事実を記録に残します。

そもそも領収書を受け取らない取引(電車賃や取引先に関連する各種祝い金や香典)での取り扱いに準じて出金伝票を作成します。②と同様に日付、取引先の名称、金額、取引内容を記載します。

相手方が作成した文書ではないため証明力は落ちますが、何もないよりは良いでしょう。事実なら正々堂々と作成して主張する必要があります。

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