税務調査で知っておきたい10のポイント
- 税務調査とは、納税者の税務申告の内容が正しく申告されているかどうかを税務署がチェックすること
- 税務調査で調べられる項目とその対策法をご紹介
- 税務調査により誤り等が発見され追徴課税を課せられるケースは少なくないですが、その場合に税務調査でどう対応するべきか
経営者に心配事は尽きものですが、税務調査もそのうちのひとつです。事業規模が拡大し、前年よりも利益が大きくなれば、税務調査を受ける可能性もゼロではありません。
そこで今回は税務調査の準備として、その目的、調査内容、対策方法、調査結果に伴う追徴課税の内容などをご紹介します。
税務調査とは、納税者の税務申告の内容が正しく申告されているかどうかを税務署がチェックすることです。調査の結果、申告内容に間違いがあれば「修正申告」を要求され、追加の税金(=追徴課税)が課されれば、経営者にとって大きな負担となります。
税務調査は主に税務署によって行われていますが、税務署の調査官にとっては上記のような調査本来の目的とは異なった視点で実施されるケースもあります。
例えば、税務署の調査官が自分の人事考課上の評価のため、税務調査で申告の誤りを多く発見し、修正申告で追加の税金を多く獲得しようとするケースです。調査官は積極的に申告の誤りを探し税金を多く取ろうとするモチベーションがあるため、経営者は税務調査が厳しくなる可能性があることを理解して対応しなければなりません。
税務調査を受けやすい会社・個人事業主の特徴や税務調査にどう対応するべきかについて見ていきましょう。
①税務調査を受けやすい企業・個人事業主
一般的に、次に該当する企業や個人事業主の方は調査の対象になりやすいと言われています。
・今までに税務調査を受けたことがない企業・個人事業主
・前の税務調査から長期間が経過している企業・個人事業主
・売上高や所得額が急激に増加した企業・個人事業主
・多額の売上や利益を継続している企業・個人事業主
・業績値に大きな変化、異常値が見られる企業・個人事業主
・過去に重加算税等の追徴課税を受けている企業・個人事業主
・過去に多額の修正申告をしている企業・個人事業主 など
②税務調査に備えるポイント
税務調査が申告の誤りを発見し、追加の税金を多くとるために実施されるのであれば、対策の方針としては税務署が誤りを発見するためのチェックポイントに対して事前に修正することが基本になります。
つまり、チェックされそうな点を事前に確認し修正しておくわけです。
決算期等では決算業務を進める際に税務調査を見越した確認と修正にも取り組むのが望ましいでしょう。税務申告後ではできるだけはやくその申告内容の確認と修正が必要です。
仮に誤りが発見できた場合は、税務調査が入られる前に早めに修正申告することが求められます。
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税務調査で調べられる項目とその対策法をご紹介します。
計上するべき売上を故意で次期に計上すれば本来の売上高が減少し、結果的に納税額も減少するため、税務調査でよくチェックされます。
税務調査での売上のズレの確認は、「見積書」「発注書」「納品書」「受領書」「請求書」「入金データ」といった売上に関する情報から確認されます。
売上の状況は「発注書⇒納品書⇒受領書⇒請求書⇒入金」といった内容で確認できるため、それらで売上の計上ズレがないかチェックされます。
対策として、納税者が売上のズレを事前に確認する場合、決算月の前後の期間における売上で通常月とは大きく異なる計上などを、「取引内容」「発注・発送等の期日」「入金日」などから矛盾がないかを探しあれば修正するようにしましょう。
また、売上の漏れは実際に売上行為があったが、計上されないで帳簿にも記録が残っていないものになります。単なるミスによる計上漏れもありますが、故意による漏れと税務署が判断すれば、罰則的な重加算税が課されることになるため注意が必要です。
売上の漏れの確認は売上高と利益の関係、具体的には売上高総利益率の変化などで疑わしい点がないか確認され、あればその取引に関する取引情報がさらに細かくチェックされます。
例えば、通常月の売上高総利益率が30%であるのに対して決算月が20%である場合などが疑わしいと判断され、その月の売上および仕入に関する取引内容が確認されるのです。
売上計上が漏れている場合、その取引先の仕入額と照合すればその漏れは容易に把握できるため、そうした確認が実施されます。つまり、故意に売上計上を漏らした場合も取引先に確認されれば簡単に見つかります。
対策としては、納税者側が事前に漏れを確認する場合も売上総利益率の減少でチェックすると良いでしょう。なお、決算月の売上総利益率が大きく減少している場合は、売上の漏れのほか、その他の要因についても確認しておく必要があります。
売上の漏れに関しては、「自社の売上データ」「請求書控え」「受領書」「入金データ」「顧客からの発注書」などでその事実を確認します。
また、売上の漏れが実際になかった場合でも利益率の減少があれば、調査官はその理由を追求するためその原因を客観的に説明できる証拠が必要になります。
例えば、「決算セールで低利益率の商品や赤字品を販売した」「他社との受注競争で大幅な値引きをした」など利益率の低下を合理的に説明できる資料などを準備しておきましょう。
仕入計上の時期のズレ等により仕入額が多くなると利益額が少なくなり、税額も減るため、税務調査の対象になりやすいといえます。
「仕入計上のミス」「繰上計上」「架空の仕入(水増し)」などで仕入値引きや返品に対する未処理などもよく確認されます。
調査(確認)の方法としては、売上と同様に帳簿類等から通常の取引の流れに対してイレギュラーな部分に着目し、細かく確認していくという作業になります。仕入時期の妥当性、仕入の検収、仕入先の入金情報などにより仕入の矛盾点がないかチェックされるのです。
税務調査への対策としては、実際の取引の内容を納品書、請求書、入庫データ、入金記録などで確認して次期に仕入計上されるべきもの、計上されてはいけないものがないかを確認しましょう。
また、買掛金の残高が多くなっている場合などは、仕入先の誤った二重請求などの可能性もあるため注意が必要です。
特に決算月の仕入高が通常月の水準以上に多くなっていないかを確認したうえで上記の書類等で調べると良いでしょう。