個人事業主も税務調査の対象になる?

ポイント
  1. 税務調査とは、一般的には税務署が納税者の申告内容につき帳簿等を確認して誤りがないか確認すること
  2. 税務調査には「強制調査」「任意調査」の2種類がある
  3. 7月~12月が税務調査が入りやすい時期

目次 [非表示]

5 税務調査の流れ・内容、個人事業主が気をつけたいポイント

では税務調査が行われるまでの流れについて見ていきましょう。

 5-1 事前連絡には慌てずに

税務調査が行われる場合、通常10日ほど前に税務署より事前に連絡があります。税理士に税務代理を依頼している場合は税理士にも連絡があります。

例外として飲食業や小売業などで一般顧客と現金商売を行っている事業者や、悪意ある脱税を行っていると想定されているケースでは無連絡で税務調査が行われることもあります。

事前連絡の段階でパニックになる個人事業主も多いですが、出来るだけ落ち着いて応対するよう心がけると良いでしょう。

税務調査の日時の打診がありますが、仕事の都合などで対応できないときは遠慮なくその旨伝えて、変更を申し出るようにしましょう。

ただ、正当な理由なく先送りにしようとすると、かえって疑いを強めることもあるため注意が必要です。顧問税理士がいればすぐ連絡して相談すると良いでしょう。

 5-2 調査日までに行いたい2つのポイント

経営者や個人事業主が調査日までに準備しておきたいポイントは2つあります。

まずは軽微なミス(=申告の修正までいかないミス)の修正です。

可能な限り事前に各帳簿、領収書などの証憑(取引があったことを証明する書類 請求書や領収書など)を確認し、日付漏れや記載漏れがないかをチェックしておきます。

よくある例が、会議費や接待交際費の領収書に相手方や人数などの記載が漏れているケースです。損金の否認に繋がるミスは少しでも事前に修正するようにしましょう。

2つ目は重大なミス(=申告を修正したほうがいいミス)の発見です。

売り上げの計上が漏れていた、経費が二重に計上されていた等のミスです。売り上げ除外は脱税とみなされかねない重大なポイントですが意図していなくても漏れることもありますので、税務調査があるとわかった以上必ず自らでもチェックしておきたいポイントです。

このほか経費と認められない支出の混入、在庫の棚卸漏れなどにも注意して下さい。個人事業主は特に事業に関係のない経費計上がチェックされます。これらのポイントは所得に直結するもので誤りがあると修正申告の必要があります。後述する加算税を避けるためにも税務調査日の前に可能なら修正申告をしておきましょう。

 5-3 加算税の仕組み

加算税とは、期限を経過した税金に加算される税金のことです。この加算税には過少申告加算税と無申告加算税があります。これらの加算税が課される割合は以下の修正申告の時期によって変動します。

・過少申告加算税

①法定申告期限等の翌日から調査通知前まで

対象外(課されない)

②調査通知以後から調査による更生等予知前まで

5%(期限内申告税額と50万円のいずれか多い額を超える部分は10%)

③調査による更生等予知以後

10%(期限内申告税額と50万円のいずれか多い額を超える部分は15%)

税務調査前に自分で気づき修正申告をした時の加算税(②のケース)は、税務調査時に指摘され修正した時(③のケース)よりも軽微となります。可能なら税務調査前日までに修正申告をしておいたほうが良いでしょう。

 5-4 調査1日目(午前中)

実地調査はおおむね2日間行われます。2名の調査官がチームとなって調査するのが通例です。

午前10時頃に来るので、提示された身分証明書はしっかり確認しましょう。

調査官はすぐ帳簿の確認に入らず、会社の沿革や個人事業主なら独立した理由、景気など雑談をします。しかし、そういった会話からでも申告内容との矛盾点を探そうとするので、経営者や個人事業主は余計なことは話さず、毅然とした対応で冷静に受け答えすることが大切です。

 5-5 調査1日目(午後)、調査2日目

昼休みを挟んでいよいよ調査が本格的に進みます。ちなみに調査官の昼食を用意する必要はありません。用意しても食べないよう指示されているため、お茶を出す程度で問題ないでしょう。

調査でチェックされるのは以下のポイントです。

①売上計上のチェック

取引がいつ、どのように受注して、どう販売して、どう請求して、どう入金されるか等を細かくチェックします。取引上作成された書類もチェックしていきます。受注前の見積書はいつ作成しているか、出荷台帳と納品書は一致しているか、請求書はいつだれが作成するか、売掛回収のチェックはだれがどのように行っているか等を確認していきます。個人事業主で経費も担当している場合は、あらかじめ領収書などを準備しておきましょう。

なお現金回収の領収書はとても大事なポイントです。架空の領収書を発行していないかで販売先の経費水増しが判明することもあります。

調査官はそのような調査の中で売り上げの計上に不自然な点(ある一定の時期・ある一定の時間の売り上げ計上がない等の兆候)がないかを洗い出します。

②仕入計上のチェック

売上と同じくいつ、どのように発注して、どう仕入して、どう請求されて、どう支払うか等をチェックします。仕入れ前の見積書と納品書・受領証のチェック、請求書と支払額のチェック、品目のチェック等を行います。目的は仕入れの偽装が行われていないかを確認するためです。

③期末棚卸のチェック

期末棚卸しは適正な原価計算のためにも重要なポイントです。期末に行われる実地棚卸しの方法、時期、所要時間、記録形式と人員などを聴取し正しく行われているかチェックします。

④経費計上のチェック

まず人件費や給与についてのチェックです。源泉徴収漏れがないか、年末調整を行っているか、架空の人件費計上がないかを重点的に調査します。不審な点があればその職員の机がどこにあるか等を尋ねる場合もあります。

接待交際費や消耗品、光熱費のチェックは入念に行われることが多くなります。個人事業者における経費過大計上のほとんどは事業に関係のない支出を対象としているためです。事業に関係のない飲食、基準の曖昧なまま電気代を全額計上するなどがよく指摘されるポイントです。

個人事業主は日頃から接待交際費として認められるためのポイント(事業と関連があるか)を理解し、証憑に経緯を記録しておくことが重要です。このほか金額の大雑把な領収書もよくチェックされます。

 5-7 税務調査の結果報告

税務調査は2日間で結果が出ない場合があります。一部資料を持ち帰って引き続き精査する場合もあります。また追加で資料の提出を求められたり、取引先への確認などが続けられたりすることもあります。

そのような税務調査に一通り区切りがつけば、おおむね税務調査後1カ月程度で税務署より会社や個人事業主のもとに次のような連絡があります。

  1. 問題なし(申告是認)
  2. 指導
  3. 指導通りに修正申告

3種類のどれかになりますが、よくテレビ等で大企業の申告漏れが報道されたときは、見解の相違はあるものの当局の指導に従い修正申告をしたとなるのが大半です。

税務署から修正申告して下さいと連絡があった時に理由に納得できなければ拒否することも認められていますが、税務署側は十分根拠があると考えた時は経営者や個人事業主の同意を必要としない「更正決定」をしてきますので、争う時は税理士等の専門家に十分相談してからにしたほうがいいでしょう。

こちらもあわせてお読みください。
個人事業主なら知っておきたい収支計算書と現金出納帳の書き方

6 まとめ

いかがでしたでしょうか。税務調査は黒字の法人にしか入らないと思われている方も多かったと思いますが、個人事業主も税務調査の対象となって様々な調査がなされることがわかります。この記事を参考にして日頃から税務調査に入られても大丈夫な経理をしておくか、自信がなければその道の専門家である税理士さんに依頼しておくのも有効な手段でしょう。

おすすめの関連記事

税理士などに経理作業のアウトソーシングを検討している方はぜひ!
起業後の経理は自分でする?丸投げ? おすすめは?

税務調査の対応の仕方について知りたい方はぜひ!
はじめての税務調査、対応方法と注意すべきポイント解説!

 

関連記事