今PRに力を入れるべき?プロが自社で実行してきた「超実践的・PR術」

ポイント
  1. 今、本当にPRに力を入れるべき?
  2. 自社の事業内容に合わせたPR方法を模索せよ
  3. PRは恐れず、勇気を持って。継続することが大事

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人手が足りない、資金もない。そんな創業間もない企業が抱える一つの悩みが、自社サービスの「PR方法」について。

その重要性について頭では理解しつつも、実際にはなかなか時間も人も投下できていない……。内心ドキッとした経営者の方もいらっしゃるのではないでしょうか?

今回お話を伺ったのは、ディアメディア株式会社・代表取締役の味岡倫歩さん。

彼女はこれまでに会社員、そしてフリーランス時代を通じて、数多くの企業のPR・広報案件に携わられてきた経歴を持ちます。

また、現在代表を務めるディアメディア株式会社では、2018年8月に自社サービス「DearMedia」がリリースされ、まさに直近で創業直後のサービスローンチPRを実践されています。

今回はそんなPRを知り尽くした専門家に、これからPRを始める際に必要な考え方、実践されてきたノウハウについて伺ってきました!

「本当に今、PRに力を入れるべきですか?」

味岡 倫歩:ディアメディア株式会社代表取締役。企業広報活動のコンサルティング・広報担当者の育成事業に加え、メディアのための発注書・請求書の自動作成クラウドサービス「DearMedia」を運営。

−味岡さんの会社には、PRに関する数多くの相談が寄せられていると伺っています。これから始めたいという相談があった場合、どのように話を進めていくのでしょうか?

味岡)多くの方が「PRしたい、メディアに売り込みたい、テレビに出たい」といった“事象”からご相談されることが多いんですね。

ですが、その前に経営的な視点から俯瞰し、「今、自分たちに足りていないものは何か」、ここを見極めるのが広報活動を始める前の段階で必要になります。

実はこれが何より重要で、足りてないものが○○だから、どうやってそれをスピード感を持って増やしていくのか、サポートするにはどんな手段があるのか、限られたリソースの中で行う活動のうち「広報」の手法が有効なのか、と考えていきます。

ですので、私たちは「何が何でもPRしてください!」とは絶対に言いませんし、むしろ他に優先度が高いことがあるのであれば、今はそちらを優先してくださいと言うこともあります。

経営者と広報はメインの担当を分けるべし

−では、その上でPRに力を入れていきたいとなった場合に、どういう体制のもと進めていくのがベストなのでしょうか?

たとえば人手が足りていない企業では、スピードを重視して広報の役割も社長が担ってしまった方がいいのか、あるいは別に担当を置いた方がいいのか。

それでいうと、私たちは社長とは別に担当者を置くことをオススメしています。外部のPR会社と連携して進める場合はなおさらですね。

−なぜでしょう?

創業間もない企業の場合、社長は会社の広告塔の役割を担うことが多いと思います。

その状況を最大限に活かすことと、社長だからこそできる業務に徹するべきで、PRや広報ついては、他の方が担当された方がいいと思います。

社長が直接動いてしまうと、良くも悪くもすべてを決済者権限で行うことができてしまいます。

その結果、企業によっては他社との関係性が悪くなってしまった…というような例を耳にしたことがあります。

そういった状況を避けるためにも、間にクッション役となる人が必要なんですね。

プレスリリースを行う際に活用できる外部サービス



−PRといっても様々な手段が考えられます。何から着手すべきでしょうか?

まずは「プレスリリース」を軸に活動を展開されるのがいいと思います。

プレスリリースは効果が出やすく比較的簡単な方法ですので、これから広報活動を始められる会社さんには、プレスリリースを軸に広報活動を考えていくことを勧めています。

プレスリリースを配信するとき、自社だけでも行なえますが「PR TIMES」や「ValuePress!」などのプレスリリース配信サービスを利用することもできます。

様々なプレスリリース配信サービスがあり、それぞれ特徴がありますが、「PR TIMES」は検索に強く、スタートアップだと設立日より24ヶ月以内は無料になるというのがポイントです。

(参考:PR TIMESスタートアップチャンレンジ

「ValuePress!」は1,000メディアにリリースを送ってくれるのが強みです。

送付先も自動的に最適化してくれますし、プランによっては語尾の修正や校正にも対応してくれます。文章が苦手な人は嬉しいサービスですね。

(参考:「ValuePress!」料金プラン・コース一覧

プレスリリース作成時に抑えておきたいポイント

−実際にプレスリリースを作成する際には、どんな点に気をつければいいのでしょうか?

順番に説明していきますね。

まずはプレスリリースによって、自分たちがどんな結果を得たいのかを明確にすることが重要です。

それが決まることによって何を伝えるべきなのか、そのためにはどんな表現が適しているのかが決まってきます。

次にプレスリリースで書く内容についてですが、製品の特徴や優位性はもちろん、それが求められている時代背景や社会的な意義についても記載してあるとベターです。

プレスリリースは広告ではなく、事実を伝えるものなので、独善的な情報発信に終始しないよう気をつけたいところですね。

典型的な例としては、「うちの会社がこういうものを作りました。すごいでしょう。以上です」というものです。

形容詞の多い文章では説明していないのと同じですので、受け取る側からも「それが社会的にどう影響するの?」と思われてしまいます。

これはPR経験のない人が陥りがちな例ですので、気をつけましょう。

PRのプロが行った「PR方法」とは?

−さらに突っ込んでお話を聞いていきたいと思っています。味岡さんはまさに直近で自社の新サービス「DearMedia」をリリースされています。

その際に実践してきた具体的な手法について、長らくPRのお仕事をされてきた、いわば“PRのプロ”の観点から教えていただけますか?

・・・プレッシャーがすごいですね(笑)

「DearMedia」はメディア編集部が使う、発注書と請求書が自動で発行でき、クラウド上で管理するウェブサービスです。

ニッチなサービスですし、我々は昨年このサービスのために創業したスタートアップなので、もともとは「日経新聞」と「THE BRIDGE」に掲載してもらいたいと考えていました。

日経新聞は言わずもがなですが、THE BRIDGEについてはスタートアップを中心に取り上げているメディアですので、まさに私たちのような企業にはうってつけだと考えていました。

ちなみに、自社やサービスの特徴に合ったメディアを事前に把握しておくというのは一つのポイントです。

どの業界にも専門誌や業界紙があるので、チェックしておくと良いでしょう。

またPRの観点では、継続的にリリースを出すということが非常に重要になってきますので、数ヶ月先を見据えてどのタイミングでリリースを出すのか計画立てることが大切です。

「新しいサービスの提供を開始する」となると、どうしても初回の案内だけで終わりがちです。

そうではなく、それを含めて5回分くらいはプランニングしておくといいと思いますよ。

−サービスのリリース前から、ある程度その後のイメージを立てておくわけですね。

そうですね。サービスのリリース後はもちろんですが、実はリリース前の段階もとても重要なんです。

−リリース前の段階も…?

はい。弊社の場合、2018年8月23日に新サービスに関するリリースを出したのですが、事前に2回ほど施策を行っています。

1回目は2017年11月に事前に利用いただけるユーザーを募集しました。

次に2018年7月には、私とSNSで繋がっている人限定で、FacebookとTwitterを使って、こちらも先行利用していただけるユーザーの募集を行いました。

これまでの広報支援・育成のお仕事を通じて、私と繋がっている人はメディア関係者が多いのです。

「DearMedia」の潜在顧客でかつ記事にも書いていただけそうな方々の反応を確認しつつ、2018年8月に本リリースする運びとなりました。

−事前の案内によって、ある程度反響がつかめるわけですね。

おっしゃる通りですね。11月に行った初回の施策については、ユーザーリサーチも兼ねています。

そこでユーザーにヒアリングを行い、得られた使い勝手の感想や機能改善の声を元に追加で開発を行いました。

もちろんその段階でも実用に耐えうる状態には仕上がっていましたが、本リリースを行ったあとに追加で大きい開発を行うのは現実的ではありません。

また、新サービスのリリース時が一番メディアからも注目度が高まるタイミングですので、そこには妥協したくなかったですね。


▲「とはいえ、自社のPRプレスリリース作成は結構バタバタしましたね」と笑う味岡さん(左)と社員の山下さん(右)

−それ以外に、PRの観点で「あまり知られていない」と思うことはありますか?

プレスリリースを取り上げるメディアの記者さんが、どんなネタに興味を持っているかをリサーチしておくのは大きいと思います。

−ん?どういうことですか?

自社の競合にあたるサービスについて調べることはよくあると思うんですね。

その際に、そのサービスがどのメディアに載って、何という名前の記者さんが記事を書いているのかをチェックするんですね。

あるいは、日経新聞に取り上げてもらいたいと考えるのであれば、自社のサービスに近い内容で取り上げている記者さんがいないかを調べるんです。

そこで記者さんの名前やその人が精通している分野などが把握できたら、個別に連絡を取るようにします。

−なるほど。確かにそこまでできている人は少なそうですね。

私たちの場合も、届けたい人にしっかりと届いたというのがメディアに掲載された大きな要因だったと、振り返って思います。

−何となくですが、そういった記者とは直接やりとりをするのはタブーなのでは?という先入観がありました。

もちろん相手あっての話ですので、関連性が低い内容について紹介したり、一方的に押し付けがましく問い合わせるのは厳禁です。

先方も忙しいので、その場では資料だけお送りして一旦連絡を待つようなこともありますよ。

PRは恐れずに勇気を持って発信すること。継続すること

−それでは最後に、これからPRに力を入れていきたい企業経営者・担当者へメッセージをお願いできますか?

自分たちのサービスを広く世に知らせるというのは、実は怖いことでもあるんです。どう評価されるかわからないので、実際に敬遠してしまう経営者も多いです。

ただ、その点については、むしろ炎上するくらい話題になったら、よっぼどのサービスだと思っていいと思います。

反応が得られないこともザラですので、まずは勇気を持ってPRして欲しいなと思います。

加えて、成果を出すと考えるのであれば、必ず中長期的な視点を持つことを忘れないでいただきたいですね。

特にプレスリリースは「掛け算」ですので、毎回のリリースがどんどん蓄積されていって、3ヶ月後、6ヶ月後、1年後に成果が跳ね返ってくるものです。

1度のリリースで効果が得られず、やめてしまうのが一番もったいない!

継続的に情報を発信することで、いずれ成果に繋がります。諦めずに継続して挑戦してもらえると嬉しいですね。

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著者プロフィール

宅美 浩太郎

宅美 浩太郎

「助っ人」編集部所属の編集者&ディレクター。現在は週4で働いています。「コンテンツで世の中を明るく!」をコンセプトに、他のさまざまなWebメディアでも運営、編集を担当しています。ツイッターもやっているので、ぜひ気軽にフォローを!→ https://twitter.com/kotaro53