事業承継・会社/企業の承継って何?承継と継承の違いも合わせて解説
- 承継と継承の違い
- 事業承継(会社/企業承継)について
- 事業承継を成功させる為のポイント
経営者なら一度は「事業承継(じぎょうしょうけい)」という言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか。
しかし、実際にそれが何なのか?については詳しく知らない方が多いと思います。また「継承(けいしょう)」言葉も、承継と似ていますが、その違いについては分からない方は結構いらっしゃることでしょう。
今回は事業や会社/企業の承継に加え、承継と継承の違いについても詳しく解説していきたいと思います。
事業や会社/企業に関する承継を知る前に、そもそも承継とは一体何なのか?を見ておきましょう。
また、承継と継承の違いについても合わせて把握することで、後に解説する事業や会社などの承継を更に深く理解して頂けると思います。
まずはそれぞれの意味を確認しておきましょう。
◆承継
承継とは“前の代より仕事・事業・身分・精神を受け継ぐ”という意味があります。
◆継承
継承は“前の代より財産や権利を受け継ぐ”という意味になります。
つまり、同じような言葉ではあるものの細かく分ければ違いがあることがご理解頂けると思います。ただし、辞書を引いて頂ければ分かるのですが「承継」と「継承」はどちらも双方の言葉が両方に記載されているのです。ですから辞書の考えとしては、どちらの文字も前の代から受け継ぐものであると認識されていることが分かります。
まずは基礎的な部分となる、承継・継承の意味を知って頂ければと思います。
では具体的に、承継と継承ではどのように違いがあり、実際に使われる場合はどんな使い分けが行われているのか?を確認しておきましょう。
まず英語で表した場合ですが、実は辞書と同じように承継と継承は同じ言葉として扱われています。(ちなみに英語ではinheritanceと表記されます)辞書と英語で表した場合が同じである以上、言葉として考えるのであれば“どちらも同じ”という認識で問題ありません。
ただ、承継と継承については法律用語でかなり使われる場面が多くあります。答えとしては法律用語の場合、「承継」という言葉が合う表現となるのです。ですから、会社や企業などの事業に係ることについては、「承継」を使うことが正しいということを覚えておきましょう。
念のために例をあげておきますが、承継については「事業を承継する」や、「相続を承継する」などの場合に用いられる言葉です。一方、継承については「地位を継承する」や、「義務を承継する」などに用いられますので、その違いを把握しておきましょう。
では次に、事業承継(会社/企業承継)について確認していきましょう。
事業承継は、会社の経営を後継者となる方へ引き継ぐことを意味しています。ですから、事業承継=会社を承継することや、企業を承継することと同じ意味合いとなりますので、ここでは事業承継で統一させて頂きます。
事業承継のポイントは、その名の通り「事業そのものを引き継がせる」ということです。
ただ、事業承継の場合、事業を承継させるのであって経営者個人が所有している現金や貯金、資産などを承継させるわけではありません。あくまでも事業(会社/企業)を承継させるという認識を持っておきましょう。
日本には昔から多くの企業が存在し、それが先祖代々から事業を受け継いで繋いできた会社は、沢山あることでしょう。
しかし今の現代社会においては事業を承継してくれる子供・親族がいなかったり、後継者不足が社会問題となる時代でもあります。それは、継がせる側となる経営者の考え方によっても違いはあることでしょう。
しかし実際には子供がいても、子供本人が家業を承継したくない意思を持っている場合や、そのような素質がないと判断される場合。または、子供がおらずに後継者が確保できない場合など、ケースとしては様々です。一昔前の考え方で多くあったと思われるのは、やはり事業を血縁である子に継がせるということではないでしょうか。
実際に現在でも、老舗の多くでは、実の子供に事業を承継させている会社も多くあります。ただ、一般企業で近年見られる傾向にあるのは、承継する者を血族にこだわらないということです。
会社などの企業では、自分1人で経営し事業内容を全てまかなっている場合、承継する方が居なくても、そこまで重大な問題とはなりにくいと考えられます。しかし、従業員を抱えている場合などにおいては、経営者である方自身が高齢になった時、「事業を承継する血縁者も居ないし、自分も引退したいから会社を廃業させよう」という簡単な問題ではなくなってくるわけです。
こうなった場合は従業員が路頭に迷うことは安易に想定できてしまいます。このような場合に使われるのが、第三者による事業承継です。日本が抱える社会問題である少子化も影響があるかもしれませんが、実際に子供には好きな事をさせたいと考える経営者の方も沢山増えています。
また、会社を経営することは誰でも簡単にできることではありません。経営者となるにはそれなりの知識やノウハウなども必要不可欠です。ですから、そのような背景があり第三者に承継させたり、それまで会社で尽力をつくしてきた従業員や役員の中から承継する方を決定する場合も増えてきているのです。
血縁者や子供に事業を承継させることは、決して悪いことではありません。しかしやむ負えない事情や、他に理由があって血縁者や子供ではない方に事業承継するケースは大変多くなってきており、今後も増加すると予想されます。このように、今の世の中では事業承継が血縁者や子供だけではなく、他の第三者や従業員・役員などに承継されるケースが増えていることを理解しておきましょう。
事業承継にも、形によって違いがありますので見ておきましょう。
① 親族内による事業承継
これは親族の中で事業を承継させる方を決める方法です。メリットとしては社内などの関係者において受け入れられやすいという点があげられます。また、親族の場合では相続として承継が入る場合があり、贈与などの承継に関する方法の選択肢が幅広くなるという利点が伺えます。
② M&Aや、親族外による事業承継
M&Aは、他の会社へ事業を引き継いでもらったり譲渡する方法を意味します。
この方法は、近年増加傾向にあり、今後も多くの企業で採用ことが増えると予想される承継方法となります。
M&Aの利点は承継をさせる方を選ぶ際、親族や社内だけではなく社会からも候補者を求めることができるという点にあり幅広く人選をすることが可能となります。また親族ではないが、役員や従業員として長年会社の事業に携わってきた方が承継する場合もあります。
この場合、社内の能力を十分に理解できている為、承継させた後の経営状態が安定しやすい傾向にあるといえます。どちらにしても、後継者を親族・子供に限定するのではなく、事業を存続させることを目的とした人選ができるというところが共通した利点となります。
事業承継には「事業を引き継ぐ」という意味があります。
一方、事業譲渡とは、その名の通り「事業を譲渡する」意味となります。
そもそも、M&Aは売買を表しますが、その手法の中に事業譲渡が含まれています。つまり、事業承継は家族や第三者に事業を受け継いでもらうことを意味し、事業譲渡は譲り渡すことを表すのです。まとめると、事業譲渡は親族などではない第三者とのやり取りとなり、事業承継は親族と第三者両方が相手となる可能性があります。
事業承継を考えるタイミングは、その方によって様々だと思われます。
ただ、一般的に多いのは近い将来、自分が事業から引退することを考えたタイミングではないでしょうか。事業承継を考えるべきタイミングとして良いとされるのは60歳前後といわれています。恐らくこの頃には年齢的なことを考えて次の後継者を考えなければならない時期に入ってくるからでしょう。
ただし事業を承継させることは、承継によってその後も事業を存続させ成長をさせていかなければなりません。ですから人選から育成、そして実際に承継という流れで考えれば、もっと早いタイミングで考えておくことも大切です。
これは親族・社内・社外(M&A)に限らず、早めの行動がカギとなることをポイントとして抑えておくと良いでしょう。またM&Aを行う場合に、マッチング企業を利用されるのであれば想定しているよりも、調節などに長い期間を要する場合が多いため注意が必要です。更に、事業承継についての手続きは税金面や法的な手続きなど、経営者だけでは難しい点が多くなる為、税理士や専門としている企業などの手を借りる方がスムーズに進むと推測します。
現在の日本では、経営者が高齢化することによって事業承継を考えなければならない会社や企業は増加してきています。しかし、中には事業承継のタイミングに失敗する場合や、そもそも事業承継にうまく対応ができずに失敗してしまうという例があります。このような場合には、どのような事態を招いてしまうのでしょうか?
事業承継に失敗してしまうと、もれなく会社は廃業せざるを得ない状況となることは想像しただけでも伺えます。
特に日本では、上場していない中小企業が事業承継を考えなければならないケースが多い状況です。もし上手く事業承継ができずに廃業に追い込まれた場合、会社の資産は全て売却しなければなりません。また、会社に負債がある場合は清算する必要も出てきます。
そうなると、経営者が持っている個別の資産は失われますし、それまで創り上げた“企業の価値”まで、全てが無くなってしまいます。先祖から代々引き継いだ会社・途中から経営者として尽力をつくしてきた会社・自分が1から築き上げた会社、人によって様々です。
しかし、いずれにしてもその会社に対するそれまでの努力や苦労、思い入れは計り知れません。それを事業承継に失敗することによって失ってしまうのは、経営者として大変残念なことです。ですから、事業承継をすることは大変重要なことだといえるでしょう。
今回は、「承継と継承」の違いと、事業承継に関して様々な視点で解説をさせて頂きました。
経営者の高齢化と少子化が進む日本の現状においては、事業承継を行うことは大変重要となります。
日本の企業では、特に中小企業の場合、高度な技術や繊細な技術が必要とされる企業は沢山あります。これらの企業が承継されずに無くなってしまうことは、経営者本人だけではなく、そこに係る人々や日本の社会にとっても大きな損失となります。まずは承継させる相手を誰にするのか?を早い段階で考え、いずれ承継させた後に事業を上手く経営していけるよう育てる期間も考えなければなりません。
人は必ず年齢を重ねるわけですから、いずれ訪れる引退の時期を見据えて、早い段階から事業承継について考えてみることをオススメ致します。
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