個人事業主と法人の経費の取り扱いや範囲の違い

更新日:2017.04.25

みなさん、本日は個人事業と法人での経費の違いについて説明します。

大きなポイントは以下の3点です。

① 社長のプライベートな支出を会社の経費として落とそうとした場合
② 法人の役員は「給与所得控除」が使えます!
③ 従業員の数次第では「社会保険料」の負担が増えるかも…

では早速ポイント①から見ていきましょう。

 

1.1個人事業と法人における「経費」の違いは「社長のプライベートな支出」の扱い!


そもそも一言で「経費」って何だと思いますか?

分かっているようで、分かっていない方が多いのではないでしょうか。

正解は「事業を行う上で、必要不可欠なコスト」のことをいいます。この考え方は個人事業と法人のいずれにおいても違いはありません。

中には、いわゆる「無駄遣い」をしてしまって、必ずしも「必要不可欠」と言えないものもあるかも知れませんが、「業務との関係性」が認められれば、「経費」として認められます。そして、「経費」として認められれば税金(個人であれば「所得税」、法人であれば「法人税」)の計算上でも、所得の計算上、売上から差し引くことができる訳です。

(注)税金計算上は会社の「利益」のことも「所得」と言いますが、話を分かりやすくするため、「利益」で用語を統一します。

ですので、「税金」をできるだけ少なく計算するためには、より多くの「経費」を計上することが大事なのです。これは、逆に言うと「経費」として認められなければ「税金」を多く納めなければいけなくなるということです。個人事業と法人における「経費」の扱いの違い①は、社長が支払ったものが事業との関連性が認められない、すなわち、「経費」ではなく「プライベートな支出」と認められた際に生じます。

なぜ、そうなるのでしょうか?それは、「社長の給料のもらい方」に原因があります。

個人事業の場合、財布は基本的にプライベートと事業とで分かれていませんよね。このため、事業で儲けを出し、税金を支払って、その残りを生活費に充てるわけです。もしも、ある支出が「経費」として認められず、「プライベートな支出」として認定されると、ただ単に納める所得税が増えるだけです。

個人の場合:社長が自らの財布からお金を出す

しかし、法人の場合はどうでしょう。

社長は、法人から「役員報酬」として給料をもらっています。税金に関しては、社長個人にかかる「所得税」と法人の所得にかかる「法人税」の両方を支払っています。もしも、法人から支払ったある支出が「経費」として認められず、「社長のプライベートな支出」として認められるとどうなるのでしょうか。この場合、「社長に法人が給料を支払った」、すなわち「役員報酬を支払った」ことになります。


法人の場合:実際には法人の財布からお金が出て行ったとしても、税金計算上はいったん社長の財布にお金が入って(=「役員報酬」)、それから社長が個人の財布からお金を使ったという扱いになる。

もちろん、「役員報酬」も「法人の経費」であることには変わりはないのですが、法人税のルールでは役員報酬は年1回一定額を決めたら、原則としてその金額は変えられないことになっています。金額を自由に変更できると、役員報酬の金額の操作により法人と個人間で自由に利益の付け替えができて、税金逃れが容易にできるようになるからです。

ここで、社長の給料、すなわち「役員報酬」の金額が増えるとどうなるでしょうか。一定額で決めている「役員報酬」の金額が増えて、「一定額」ではなくなってしまいますね。そうなると、増えた分だけ「経費」として認められなくなるということが起こってしまいます。

一方、社長個人の方では「所得」の金額が増えるため「所得税」が増えることになります。

ダブルパンチですね。

具体例を出して説明します。

例えば、社長が一人でキャバクラに行って10万円分遊んだとします。個人事業主の場合、「経費」として認められなければ、ただ単に「所得」が10万円分増えるだけです。法人の場合、会社の財布から10万円を出したにもかかわらず法人の「経費」として認められず「役員報酬」という扱いになれば、まず、法人の「所得」も10万円分増えます。

そして、社長については、「社長の財布に10万円分法人から入ってきた上で社長の財布からプライベートな支出として10万円分を出した」いうことになるので、「社長の所得が10万円分増えた。あとは、会社と関係ないところで個人的に10万円使っただけ」ということになるのです。

なお、上記は、「社長」など法人の役員がプライベートな支出を行った際の例です。従業員のために、本来従業員が支払うべき支出を会社が払ってあげた場合はまた取り扱いが変わりますので、また別な機会に説明します。

結論をもう一度まとめていうと、法人の役員になっている場合に「プライベートな支出」をいわゆる「会社の経費」として落とそうとした場合、認められなかった場合のダメージが個人事業主のときよりも、法人の役員のほうが大きいということです。

 

1.2「経費」として認められるか否かはアナタ次第!

以上のように、特に社長やその他「役員」のための支出が、「プライベート」なものなのか「経費」として認められるかは、税金のかかり具合を考える上で、非常に重要な点であると言えます。
 
一方でより多くの「経費」が認められるようにしないと、「所得」がより多く発生して、より多くの税金を支払うことになってしまうというジレンマがある訳です。従って、明らかに業務と関連性のないものはダメですが、業務との関連性が一般的な常識に照らしてアピールできるようなものであれば、「経費」として計上することを検討してみてもいいかもしれません。

例えば、前述のキャバクラ代であれば、例えば接客業を営んでいる方ならば、「接客マナーを学びに行った」といえば業務との関連性が認められるかもしれません。また、キャバクラに関する情報誌に記事を投稿するような事業を営んでいれば、「取材費」として間違いなく「経費」として認めてもらえるでしょう。

しかし、あなたにとっての「常識」が必ずしも税務署職員にとっての「常識」だとは限りません。

税理士に相談すると、多少の知恵はつけてくれる人もいるかもしれませんが、税理士もリスクは負いたくない人のほうが多いので、積極的に経費に落とす方法を提案してくれる人は少ないと思います。

結局は、「経費」として認められるかどうかは「自己責任」だということをお忘れなく。

2.1法人の役員は「給与所得控除」が使えます!

サラリーマンを経験したことがある方なら、12月頃に会社から配られる「源泉徴収票」を見たことがあるかと思います。しかし、内容までしっかり見ておられる方はどのくらいいらっしゃるでしょうか。

もしも、きちんと見たことがない方がいらっしゃったら、今一度よく見てみてください。

青枠の「支払金額」はおそらく皆さんすぐに理解できるかと思います。いわゆる「年収」に相当する金額です。そのとなりに赤枠で「給与所得控除後の金額」ってありますね。この金額が何を意味しているか分かりますか?

実はサラリーマンが納めるべき税金である所得税の計算は、「年収」からスタートするのではなく、この「給与所得控除後の金額」からスタートするからなのです。そして、この「給与所得控除」とは何を意味しているかというと、「サラリーマンが一年間のうち個人で負担したであろう経費を差し引いた金額」を意味しています。言い換えれば、サラリーマンであれば、一定金額自動的に経費を支払ったのと同じ扱いがなされるという訳です。

ここで、「一定金額」という単語が出てきました。サラリーマンの皆さんのうち、実際に自腹を切って経費を負担した金額がわかる方っていらっしゃいますか?

実際に接待を自腹で行ったり、業務で必要な知識を得るために書籍を購入したり、業務に相応しいスーツを購入したりと経費性の高い支出をする機会は多いかと思いますが、一年間のトータルの金額まで正確に把握されている方はごく少数なのではないでしょうか。

そこで、サラリーマンが自腹で負担した経費は分からないことを前提にして、所得税の計算上のルールでは、年収に応じていくらの経費がかかったかと一律で取り扱えるような取り決めがなされています。

以下がその一覧表です。

 

給与等の収入金額
(給与所得の源泉徴収票の支払金額)

給与所得控除額

1,800,000円以下

収入金額×40%
650,000円に満たない場合には650,000円

1,800,000円超

3,600,000円以下

収入金額×30%+180,000円

3,600,000円超

6,600,000円以下

収入金額×20%+540,000円

6,600,000円超

10,000,000円以下

収入金額×10%+1,200,000円

10,000,000円超

12,000,000円以下

収入金額×5%+1,700,000円

12,000,000円超

2,300,000円(上限)

表だけ見ても分からないと思いますので、解説します。この表でいう「収入金額」はいわゆる「年収」の額です。先ほどの源泉徴収票で言えば、「支払金額」のことです。

例えば年収8百万円のサラリーマンがいたとします。年収8百万円は上表の6.6百万円~10百万円の範囲内にありますので、「給与所得控除額」は8百万円×10%(=0.8百万円+1.2百万円=2百万円ということになります。

要するに、サラリーマンで年収8百万円だと2百万円の経費が自動算入されるという仕組みです。

これまで、「サラリーマン」の話をしてきましたが、これを法人の役員に置き換えてみましょう。法人の役員は給料をもらっているという面だけとらえれば、「サラリーマン」と同じ扱いになります。従って、上記の「給与所得控除」が使えるということになります。

個人事業主の場合ですと、実際にかかった経費しか「経費」として扱われませんが、法人の場合ですと、法人でかかった経費は「法人の経費」として認められる一方で、役員個人にも「経費」が認められるということになります。

いわゆる「法人成り」といって、事業の売上高が一定金額を超えた場合、『「個人事業主」から「法人」に切り替えて「法人の役員」になった方が節税になる』という話を聞いたことがある方もいらっしゃるかと思いますが、この「法人成り」による節税メリットの根拠の一つにこの「給与所得控除」が挙げられます。

例を出して説明します。

例えば、売上高20百万円、経費のうち8百万円が役員報酬で残りの経費が11百万円(=全体の経費が19百万円)、利益が1百万円の法人があったとします。そして、この会社の役員は社長一人だけと考えてください。この場合、社長がとれる「給与所得控除」と会社の経費の合計は13百万円となります。その結果、会社に残る利益と社長個人の所得の合計、すなわち、税金のかかる対象は7百万円となります。

これが個人事業主の場合ですと、売上高20百万円から経費11百万円を差し引いた9百万円が税金のかかる対象となりますので、法人にした方が有利ということになります。

以上のような文章の説明だけだと分かりづらいと思いますので、以下に図式化してみました。

こうして見てみると、給与所得控除の分だけ、課税対象額が減っているのが分かると思います。なお、会社にかかる税金は「法人税」であり個人にかかる税金は「所得税」ですので、税金計算の仕組みは異なっています。

また、会社の利益にかかる税金の税率と個人の所得にかかる税金の税率は異なっていますし、会社にした場合に利益に関係なくかかる「均等割」という税金などもありますので、常に法人にしたほうが得ということもありません。

法人が得か個人事業主が得かについての判断は後述する社会保険なども含めた様々な側面からのシミュレーションが必要になってきますので、年商が8百万円ぐらいになってきたら、一度専門家に相談してみても良いかと思います。

3.1法人と個人事業では社会保険への加入義務が異なります。

法人の場合には、社会保険への加入義務が生じます。これは社長一人の法人であっても原則として該当します。

ここでいう社会保険とは、具体的には健康保険と厚生年金保険のことです。広義の社会保険料には雇用保険も含まれますが、ここでは取り扱いません。社会保険の料率は都道府県や業種によって異なりますし、従業員が40歳以上の場合、さらに介護保険も掛かってきますので厳密な料率を示すことはここでは差し控えますが、ざっくりいうと給料の約3割です。

従業員の社会保険料は従業員と雇用主が折半して負担するということになっていますが、人材確保が難しい昨今において、採用に応募してくる従業員は常に手取りの条件で給料が多いかどうかを判断しますので、結局社会保険料は会社が全額負担することになります。

今の説明で分かりづらかったようでしたら、具体例を出して説明します。例えば年収500万円の条件で採用募集を出したとします。話を単純にするため、税金は一切かからないとすると、500万円の15%である75万円が給料から天引きされるとともに、会社は75万円の社会保険料を当局に納めることになります。この状況では採用応募者の手取りは425万円になります。一方で、同じ雇用条件で社会保険料の加入義務がないため500万円の手取りの会社があったとすれば、採用応募者はそちらに飛びつくでしょう。

従って、会社は500万円の会社に対抗できるような給与条件を設定しなければならない、すなわち社会保険料控除後でも500万円の手取りが従業員に残るような水準の給与を設定しなければならないので、結局全額を会社が負担しているのと同じことになるのです。

では、社会保険に加入しなくてもよい事業形態とはなんでしょうか。

答えは個人事業主で常時5人未満の従業員が働いているような状況です。

要するに、経費面において法人と個人事業主では社会保険料の負担が違うという点があげられるということです。なお、常時5人以上の従業員が働いていても、飲食業や美容業などのサービス業は社会保険に加入しなくてもよいことになっています。

理由は明らかにされていませんが、利益率が低く社会保険料の負担能力が低い業種ということなのかもしれません。

ちなみに、世の中には社会保険への加入義務があるにも関わらず、加入していない事業者が多数存在しているのが現実かと思います。特に中小企業ではその傾向が顕著かと思います。

しかし、加入義務を怠っていると年金事務所の調査によって未加入の状況が発覚した場合、最大2年間遡って社会保険料の支払いが生じる可能性があります。

たとえば、3年前に入社した社員の月々の社会保険料が10万円(従業員負担分を含む)とすると、最大10万円×24カ月=240万円の社会保険料を支払わなければいけないという事態が生じかねないということです。その場合、本来はそのうち120万円を従業員から徴収できるはずなのですが、実際従業員に一度払った給料を取り戻すなんてことは難しいですよね。

自分がされたら、途方に暮れ、生活が破たんします…。

このため結局、従業員負担分も法人が負担する…なんてこともあり得ますので、社会保険に加入できるだけの資金力がついてきたならば、法令に則り加入することを検討すべきかと思います。

以上法人と個人事業主の経費の取り扱いや範囲の違いについてでした。

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