会社設立で気になる「設立日」「決算日」の決め方

更新日:2018.03.13

起業を目指している方の中には、設立日はいつにしたらいいか、決算日はいつにするべきか、などと気になっている方もいるのではないでしょうか。会社の設立日や決算日は法律面での制約を受けるほか、経営面等を考慮して設定する必要があります。ここでは起業者が最も気になる会社の設立日と決算日の決め方について、重要なポイントや法律上の制約などを紹介しましょう。

1 会社の設立日とは

ここでは設立日について説明します。

 1-1 会社設立日の法律上の扱い

会社法によれば株式会社を設立する場合、会社の設立日は法務局に設立登記を申請した日が「会社の設立日」になります。つまり、設立者(起業家)の希望で設立日を決めることが可能というわけです。そのため、会社設立日を自分に関係する記念日や縁起の良い日などが選択されるケースも少なくありません。申請日が会社設立日となりますが、法務局で申請が受理されなければならないので法務局が休日の土日祝日などは当然、設立日になり得ません。なお、「登記完了日」が設立日ではありません。勘違いされやすいので注意しましょう。

また、法務局へ申請する方法によって受理される日が異なることがあります。申請する方法には、「窓口での申請」「郵送による申請」「オンラインでの申請」の3つがありますが、受理される日は以下のようになります。



なかでも郵送による申請は郵送方法や郵送日数により到着日時が影響されるので、希望の日に受理されない可能性もあるので注意が必要です。
なお、登記の完了には申請してから数日から2週間程度かかるケースが多いですが、実際の必要日数は各法務局やそのときの混み具合により異なります。ほかにも申請内容に不備が認められる場合は修正が求められます。修正箇所が多すぎるとその申請を取り下げて再度申請し直すということもあります。

 1-2 会社設立日を決める2つのポイント

会社の設立日は、何かの記念日や縁起がいい日にすることも可能です。しかし、企業経営者なら知っておきたい2つのポイントがあります。

①開始したい業務の都合に合わせて決める
業務を開始したい日時にあわせて会社設立日を決めていくという方法もあります。例えば、「この日から業務を始めなければビジネスチャンスを逃す」といった経営上の都合です。また、業務の開始にあたり特定の許認可を取得しなければならない場合、その許認可が必要な時期までに設立登記を完了する必要があります。そのため設立申請はその設立登記の完了予定日から逆算して決めることになるわけです。

②均等割による節税を考慮して決める
法人住民税のひとつに、都道府県・市町村に事務所や事業を設置することで徴収される均等割があります。均等割には都道府県民税の均等割と市区町村民税の均等割の2つがあります。

・ 均等割の種類
1.都道府県民税の均等割
2.市区町村民税の均等割
ここでは会社の設立日に関係する市区町村民税の均等割について紹介しましょう。

・東京都特別区で会社を設立する場合
例えば、東京都内特別区で会社を設立して事務所を設置した場合、その均等割は(特別区内に事務所または寮等を有していた月数/12)×税率(年額)で計算されます。
市区町村民税の均等割=(事務所を持っていた月数÷12)×税率
なお、月数は暦に基づき計算され、事務所等を設置していた期間のうち1月未満の端数は切り捨てです。ただし、事務所等が設置されていた期間がその事業年度を通じて(つまり、全期間で)1月未満の場合は1月になります。

・会社設立日=4月2日、決算日=3月31日とすると5900円の節税
税率は法人の資本金や従業員数などにより異なりますが、例えば、一般の法人で資本金1,000万円以下、従業員数が50人以下の場合、その均等割の税率(年額)は70,000円です。しかし、上記の会社が2016年4月2日に設立し事務所を構えた場合、均等割額は11月/12月×70,000円=64,100円になります(※100円未満切り捨て)。2日での設立・事務所の設置となった4月は1月未満の端数扱いで切り捨てになるのです。そのため年間では11月分の均等割となり70,000円-64,100円=5,900円の節税となります。

2 会社の決算日とは

ここでは決算日の設定や変更など法律上のルールについて説明していきましょう。

 2-1 決算日の法律上の扱い

会社の決算日は自由に決められます。ただし、会社設立日から1年を超えて設定することはできません。会社を設立するさいに定款で会計年度を定めることになり、それに伴い決算日の設定が必要になります。会社計算規則では、会社の会計年度は1年を超えられないとされているので通常1年で設定され、会社設立日から1年以内に決算日を設定するわけです。

日本の上場企業の場合、3月を決算月にする会社が多いですが、これは行政の会計年度に合わせるなどの経営上の都合により設定された結果で、法的な理由からではありません。自社の経営上最も有利で都合の良い月に決算日を設ければよいのです。

 2-2 決算日の変更

事業を開始してからでも決算日や会計年度を変更することは可能です。簡単ではないですが、以下の3点の手続きが求められます。

①定款を変更するための株主総会による特別決議
定款には事業年度が決められているため、それを変更しなければなりません。定款を変更するには株主総会を開き特別決議を得る必要があります。定款の変更については決算月を変更するだけなので、大した手間はかからないでしょう。また、小規模な会社、特に同族会社などは株主総会の開催の手間も費用も多くはかからないので、変更の負担は比較的小さいといえます。

②税務署への「異動届出書」の提出
株主総会の決議後は、所轄の税務署等へ異動届出書を提出します。その際に変更した定款の写しが求められる場合もあります。

③取引先への連絡
これは法的な手続ではないですが、経営の観点から銀行などの取引関係のある金融機関や主要な取引先へは変更の件を連絡しておくべきでしょう。特に金融機関には変更の理由などを簡単に説明しておいたほうが余計な疑念を持たれずに済むかもしれません。

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従業員を雇ったら作成を考える!就業規則について

3 決算日を決める重要な6つのポイント

決算日は会社設立日から1年以内なら自由に設定できるため、自社に最も有利になる・都合の良い月に設定するのがベストでしょう。ここでは決めるうえで重要な6つのポイントをご紹介しましょう。

3-1 「資金繰り」で判断

「決算後の税金等の支払いのある時期」と「事業運営上の資金が不足しがちな時期」とが重なると、資金繰りがさらに厳しくなるためその点を考慮して決算日を設定するべきです。資金繰りが厳しいのは会社を起業してから直後だけではありません。事業の特性から資金繰りが厳しくなってしまう時期が生じるのは珍しくないのです。売上金の回収が少ない月、多額の費用を支払う月などはキャッシュ(現金)がどうしても不足しがちになります。そうした時期に税金等の支払いが重なればキャッシュがショートし、早急に資金手当てしなければなりません。

倒産リスクを抑えるためにも年間を通じた資金繰り状況を把握しておき、そのうえで決算日を決定することが望ましいでしょう。なお、多額の費用が発生しそうな以下の時期などは考慮しておくべきでしょう。

・ 多額の費用が発生しやすい時期

3-2 「業務量・繁忙期」で判断

何月に忙しいかは事業の種類で異なります。そこで会社の決算月の決め方には、「繁忙期を避けて設定する」「あえて繁忙期に合わせて設定する」の2つの方法があります。

①繁忙期を決算時期にしない
業種・業態により年間を通じた繁忙期は異なりますが。忙しい時期と決算時期が重なるとどちらかあるいは両方の業務に支障をきたす可能性があります。そのため時期をずらすのが賢明です。繁忙期のあとに繁閑期が来るような業種では繁忙期直後の月を決算月にするとよいでしょう。

決算業務には多くのやるべき仕事があり、かつ手間のかかる作業が少なくありません。例えば、商品等の棚卸もその一つです。在庫している商品等の種類や量が少ない場合はよいですが、何千、何万という種類やアイテムがあり、かつ大量に在庫している場合の棚卸は相当手間がかかります。そのため在庫量が少なくなる時期を決算月に選ぶという考え方も悪くないはずです。

また、決算業務では節税対策を検討して実行したり、決算書や申告書を作成したりするなど多くの時間を要する作業があるので、その点を十分に考慮しておきましょう。なお、業界特有の繁忙期は事前に把握しておくべきです。一般的に不動産関係なら12月~3月、運送業なら3月~4月、自動車販売なら1月~3月、保険業なら3月、ブライダル業界なら5月前後や10月前後、ダイエット関連なら6月~7月、飲料水・ビール等の販売業なら7~9月などが繁忙期になります。

加えて主要顧客の繁忙期により自社の業務量が大きく左右されることもあるので、その点も踏まえて検討する必要があります。

②あえて繁忙期を決算時期にする
業務の忙しさに比例して収益も拡大することが多いため、その時期を決算時期にすれば業績を良くした形で1年が締められます。つまり、少しでも業績のよい決算書の作成ができるようになるわけです。
決算書の内容を見て投資家は今後の投資を見極め、金融機関は今後の融資の可能性、融資額や貸付金利の検討を行います。投資家などの自社に対する評価を上げるにはできるだけ内容が良い決算書を作成する必要があり、繁忙期を利用した業績の向上も有効な手段になり得るわけです。

また、繁忙期で収益が他の時期よりも増加すれば、キャッシュにも余裕が生まれ、決算後の税金等の支払いも対応しやすくなるでしょう。

3-3 「節税」で判断

決算により1年間の会社の事業収支が明らかになった結果、利益が多くなればその分だけ税金の支払いも増えて資金繰りにも影響します。不要な税金支出を抑えるためには節税対策が重要になるわけです。

①期末在庫高を適切に管理する
決算期日と節税に直接かかわるものとして期末在庫高が挙げられます。利益は「売上高-売上原価」で求められるので、売上原価が多くなれば利益額は少なくなり税金(法人税)も少なくなります。そして、売上原価は「期首在庫+当期仕入高-期末在庫」の式で計算されることから期末在庫が少なくなれば売上原価は多くなるわけです。

つまり、期末在庫高を少なくすると「売上原価の増加→利益額の減少→税金額の減少」となり節税につながります。そのため期末に必要最小限の在庫を維持して期末を迎えるような的確な在庫管理が求められます。来期の分を今期中に発注する場合でも仕入先には当期中に発送しないように明確な指示を出しておかねばなりません。発注した商品が輸送途上にあり期末までに届かない場合でも当期の仕入高に計上する必要があるので、期末ぎりぎりでの発注には特に気をつけておきましょう。

②会社設立後から決算日までの期間が短いと節税対策しにくい
上記の期末在庫高の調整を含め期末になって節税対策をすると失敗する可能性を高めます。そのため起業のさいには設立日から決算日までの期間を適当に確保することも重要です。なお、決算を迎えるにあたり会社にとって節税対策となる項目には次の7つの方法が考えられます。

3-4 「消費税の免税期間」で判断

消費税の納税義務の免除期間を最大限長くなるように決算日を決めるという方法もあります。資本金が1,000万円未満の新規設立法人の場合、設立1期目および2期目は原則として免税事業者となり消費税を納める必要がありません。
つまり、この設立1期目の期間を最長にすることが免除期間の最長になるわけです。例えば、会社設立日が10月1日で決算日が3月31日の場合、設立1期目の期間は6カ月です。

もし会社設立日が4月1日で決算日が3月31日なら、設立1期目の期間は12カ月となり、上記の例よりも6カ月も長くなります。従って設立1期目の期間をできるだけ12カ月間に近づける決算日の設定が有利になるのです。ただし、課税期間の基準期間における課税売上高が1,000万円超になれば納税義務が生じます。また、その法人の事業年度の前事業年度開始の日以後6カ月の期間の課税売上高が1,000万円を超えた場合も、当課税期間から課税事業者となります。詳しくは税理士等にご相談ください。

3-5 「3月を決算月」にする

上場企業を中心に3月を決算月とする会社は少なくありません。理由はさまざまですが、以下のような事情をもとに3月に決めるのもよいでしょう。

・主要取引先や関連会社の会計年度が4月1日~3月31日であるケースが多いから
・ 国や都道府県などの公的機関の会計年度が4月1日~3月31日であるから。また、それらの予算の消化が2月~3月になり、その時期に売上高が多くなるから
・ 3月決算の会社が多いため、6月の株主総会では総会屋の出席が回避しやすくなるから

3-6 「IFRSに対応した決算日」にする

IFRS(国際財務報告基準)では、連結財務諸表の作成に使用する親会社およびその子会社の財務諸表について、同一の決算日が求められています。米国などの海外の企業では12月決算が多いため、IFRS対応のために12月に変更する日本企業もみられます。このほか中国では12月が法定の決算月となっているため、将来中国に子会社の設立を考えているなら12月決算を検討しておいたほうが良いかもしれません。

このように会社の設立日と決算日のベストな決め方は、その会社の業種や事情、目的によって異なります。自分の会社に最もあった方法で設定してみましょう。

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