会社の資本金を増資する場合

ポイント
  1. 資本金の増資と減資について
  2. 株主割当増資と第三者割当増資について
  3. 実際の増資手続きについて

目次 [非表示]

会社の資本金って皆さんの中でも一度は聞いた事があると言う方が多いのではないでしょうか?現在では、法律の改正により、資本金が1円だけであっても、会社を設立する事が可能となっている時代です。正直なところ、資本金1円での会社設立は、設立後の様々な事を考えると、あまりオススメはできませんが、今回はすでに会社を設立されている方が、増資をする場合には、どのような手続き等が必要であるか?や、そもそも資本金とは何なのか?についても、基礎的な知識から解説をさせて頂きたいと思います。

1 そもそも資本金って何?

まずは、資本金の増資のお話しに入る前に、そもそも資本金とは何なのか?について解説をさせて頂きたいと思います。資本金と言うのは、例えば個人事業主の場合ですと、会社を設立する為に準備した資金の事を言い、株式会社では、株を発行しますので、その株式を株主に購入してもらい、そこで得た資金の中で設立の資金として当てたものを意味しています。ちなみに、株式を購入した方の事を出資者と言います。この出資者側は、株式を購入する代わりに会社を立ち上げる為の費用として使ってもらう目的と、会社が、実際に儲けが出た時には、その配当金を貰う事が目的となっています。

また、前説でも少し触れていますが、一昔前の法律改正が行われる前だと、資本金と言うのは株式会社の場合で
1000万円が必要とされており、今では廃止されている有限会社の場合でも300万円と言う資本金を用意しなければなりませんでした。しかしながら、2006年の法律の改正によって、現在では1円で会社を設立する事ができるようになっているのです。更に、ここで注意が必要なのが、いくら1円で会社を設立する事ができると言っても、それは資本金として用意する資金の事であり、実際には、会社設立時に登記を行う事になります。この登記には、別途、定款認証や、登録免許税等の費用がかかりますので、手元に1円玉一つあれば会社設立できるのだと言う、勘違いが起きないようにしましょう。

では少し話を戻しますが、この資本金と言うのは、わかりやすく言うと、会社設立が行われ、事業を実際に開始する時に、会社として保有している運転資金の事を意味しています。会社の運営には、様々な資金が必要であり、例えば従業員を雇った場合にもお金がかかりますし、会社で何かを製造する場合には、その元となる資材や、材料等を購入しなければなりません。資本金と言うのは、このように、会社の運転資金として必要なものに使われるお金なのだと言う事を、まずは頭に入れておきましょう。

こちらも合わせてお読みください。

起業に必要な費用を時間軸とともにまとめてみました

2 資本金の増資と減資について

資本金には、増資と言って増やす事と、減資と言って逆に減らす事があります。資本金の増資は聞いた事があると言う方も多いと思いますが、減資についてはあまり聞きなれていない方も結構いらっしゃるのではないでしょうか?株式会社の例で見てみましょう。

 2-1 増資について

まずは、増資に関してですが、株式会社が新しい株式を発行し、その募集をかけて出資者を受ける事になります。株式会社の増資は、このように新しい株を購入して貰って、会社の資本金を増やすと言う方法になるのです。基本的に、会社の資金を増やす方法としては、上記の新株を出資者に購入して貰うと言う方法の他に、融資を受けると言う方法もあります。しかしながら、融資を受けた場合には、お金を借りているわけですから、勿論の事ながら利息をつけて、いずれは返済しなければならないものです。

その一方で、既存の株主や、その他の第三者から新しく出資を受けた場合の増資については、返済の義務は発生しないのです。それは、株式を購入する出資者は、株式を購入しているのであって、株式を購入してお金を貸しているわけではないからです。では、その出資者となる株主は、どのように見返りを受けるのか?と言う疑問がわいてくると思うのですが、出資者に見返りをする方法は、儲けが出た時の配当となります。つまり、株式会社の増資と言うのは、借入を行うか、もしくは出資者を募って出資して貰うか?の2つの方法となっています。まとめてみましょう。

  • 借入をして増資をする(資本金を増やす)
  • 新株を発行して出資者からお金を出資して貰い、増資をする(資本金を増やす)

 2-2 減資について

減資とは、名前の通り、資本金を減らすと言う事であり、増資とは逆の事を言います。資本金の額と言うのは、貸借対照表の1つの項目にて、会社が株主に配当として分配できる金額の計数であって、株主から出された金額の全てと言う事ではありません。ちなみに、この分配できる金額の事で、「分配可能額」と言います。この事から分かる事は、資本金を減らす事で、分配可能額は増加すると言う事になります。ですから、分配可能額が増加すると言う事は、株主や債権者にとって、大きな注目点となったり、影響等が発生するとされているのです。また、この減資の場合は、資本の流出が伴う場合と、伴わないものがあります。

◆資本流出を伴うもの
この方法は、上記でも解説のあった分配可能額を増資させる減資の方法です。この方法を行う為には、株式会社の場合、株主総会の特別決議が必要とされており、登記をすると言う流れとなっております。

◆資本流出を伴わないもの
資本流出を伴わない減資の方法としては、上記でもあった貸借対照表の総資産より、総負債を引いた純資産の額に変動を起こさせないものとなります。これを登記するには、株主総会の普通決議の場合だけとなっております。

3 株主割当増資と第三者割当増資について

では次に、増資の中でも大きく分けて2つの方法がありますので、そちらを見ておきたいと思います。1つ目は「株式割当増資」と言います。この方法は、元からいる既存の株主に、株式保有の割合に合わせて均等に引き受けてもらうと言う方法となっており、基本的に株主の構成には大きく変動する事はありません。一方、2つ目の「第三者割当増資」についてですが、これは株主となっている方以外の第三者に、株式を引き受けてもらい、その権利を与える事を言います。この方法の場合は、1つ目の「株式割当増資」とは違い、株主の構成にも変化が生じる為、会社の経営にも影響が起きるとされております。

4 お金をかけずに増資をする

資本金を増やすと言う増資には、原則的にキャッシュが必要となっています。しかし、お金を用意できないと言う場合もあると思われますから、お金をかけない2つの増資方法を解説しておきます。

 4-1 現物出資をする

まずは、現物出資です。名前からしても、少し想像しやすいのではないでしょうか?現物出資と言うのは、キャッシュ以外の現物としてある資産を、資本金にしてしまう方法の事を言います。現物と言うのは、土地や建物でも良いですし、会社で保有している車や、OA機器等でも大丈夫です。

 4-2 利益の資本を組み入れする

次に、利益の資本を組み入れして増資をする方法です。この方法は、利益を出している会社で、決算書に計上された剰余金を資本金に振り返る事で増資を行う事を言います。通常ですと、資本金が増えれば、それに合わせて税金の負担も増える事になります。しかし、利益の資本を組み入れする増資の場合、増資した額は源泉の利益ですから、この方法で増資したとしても、税務上では資本金がそのままと言う考え方になりますので、その点においても、この方法はメリットがあると言えるのではないでしょうか。

こちらも合わせてお読みください。

複式簿記の知識がなくても理解できる簡単な貸借対照表(B/S)、損益計算書(P/L)の仕組み

5 実際の増資手続きについて

では、実際に増資を行う場合の手続きについてご説明させて頂きます。ここでは上記でも解説のあった「株主割当増資」と、「第三者割当増資」の2つの手続き方法をご紹介します。

 5-1 株主割合増資の手続き

まずは、株主割当増資の手続きですが、この方法によって募集株式を発行した場合、登記事項を変更しなければなりません。登記は、本店所在地にて、その効力が発生した振込期日より2週間以内となっています。また、振込の期限を定めている場合には、その期限の末日より2週間以内に変更登記をする事が求められております。

◆必要書類
・変更登記申請書
・現物出資に関する書類
・資本金の金額計上についての証明書
・株式総会議事録
・取締役会議事録、若しくは取締役の内、過半数一意した事を証明する書類
・出資目的とする払い込みがあった事を証明する書類
・募集の株式の引き受け申し込み、若しくは総数引き受けの契約を証明する書類
・株主全員の期間短縮同意書
OCR申請用紙

また、その他にも、検査役報告によって裁判があった場合には、謄本が求められます。更に、現物出資に関する書類と、検査役の報告によっての謄本については、該当する場合のみ、提出する必要があります。

 5-2 第三者割当増資の手続き

第三者の割当する方法にて募集株式を発行した場合、変更が発生しますので、こちらも本店所在地におき、効力が発生した払い込み期日から2週間以内となっています。また、払い込み期限を定めている場合には、こちらも、その期間の末日より2週間以内に変更する旨の登記をしなければなりません。

◆必要書類
・変更登記申請書
・現物出資に関する書類
・資本金の金額計上についての証明書
・株式総会議事録
・取締役会議事録、若しくは取締役の内、過半数一意した事を証明する書類
・出資目的とする払い込みがあった事を証明する書類
・募集の株式の引き受け申し込み、若しくは総数引き受けの契約を証明する書類
・株主全員の期間短縮同意書
OCR申請用紙

また、上記と同じく、検査役の報告に関して裁判がある場合にはその謄本が求められる事になります。更に、こちらも同様、現物出資に関する書類と、検査役の報告によっての謄本については、該当する場合のみ、提出する必要があります。

6 登録免許税について

増資の手続きをする際には、登録免許税と言う税金を支払わなければなりません。この金額の計算方法は以下の通りです。

「登録免許税 = 増加した資本金額 × 1000分の7

この計算式によって、登録免許税にかかる費用が分かります。ただし、この出した金額が3万円に満たない場合は、登録免許税は一律3万円となります。

7 まとめ

いかがでしたか。普段、資本金や増資、減資等に仕事上関わっていない方にとっては、少し難しいお話しだったかもしれませんが、まずは、会社には資本金と言うものがあり、その資本金を増やしたり減らしたりする方法があると言う事。そして、それには変更が生じますから、登録免許税を支払って、変更登記を行わなければならないのだと言う基礎的な部分から、まずは理解されると良いでしょう。もし実際に増資や減資を行いたい場合には、ご自身でされるのが不安だと言う方もいらっしゃると思いますので、その場合には専門家に相談したり、依頼をかける等して対応するようにしましょう。

おすすめの関連記事

ー株式評価の仕組みを知っておこうー
上場目指す起業家が知っておくべき株式評価について

ー決算のポイントー
知らないと損!?銀行が行う財務分析とは・・・

 

関連記事