事業承継との向き合い方⑨~第二創業・新たな起爆剤はあるか~

ポイント
  1. 事業承継は何のためにするのか
  2. 第二創業のもたらす意味
  3. 第二創業の支援制度

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第二創業・新たな起爆剤はあるか

事業承継は何のためにするのか?

事業承継は、言うまでもなく「事業活動を将来にわたって継続出来るための経営者の引継ぎ」のことである。その目的は、その事業の「ミッション(事業目的)」を達成し続けることである。では何故「ミッション」が達成し続けなければならないのか?それは、「ミッション」が社会的課題の解決に必要なものだからである。他には替え難い、その時々に暮らす人々に「幸福」をもたらす最適のツール(商品、サービス)を提供することを「ミッション」としているからだ。

1.「幸福」をもたらすもの
それでは、時代が移り変わっても人々の「幸福」は変わらないだろうか?

今日、めまぐるしいテクノロジーの進歩で、市場に投入される商品・サービスには刻々と新たな付加価値が付与されている。そこには社会ニーズが必要とした付加価値もあるだろうし、また新たなニーズを見込んで付与された付加価値もあるだろう。そのような溢れ出る付加価値の中で人々は生活している。日々変わる生活環境の中で、いくら“不便”“不満”を解消する商品・サービスが表れても、一時的には「幸福」を感じるが、人々の心の中には新たな“不便”“不満”が発生する。決して解決し尽されるものはない。このように「幸福」は常に変化しているのだ。

2.「幸福」を生み出すもの
事業の目的は、「人々に最適な「幸福」を提供する商品・サービスを創造する」ことであるならば、事業承継がその事業にとって、この目的達成に大きなインパクトを与えられるものでなければならない。つまり経営者が替わることで、新たな意思決定メカニズムが生まれることになる。経営者はもとより、役員や管理職など主要スタッフも、同時並行ではないとしても刷新される。これまで馴染んできた事業の発想の視点が変わる機会となる。本来、人が変われば考え方、発想、意思決定プロセスは変わるものだ。これが事業にとって新たなビジネスチャンスを掴む絶好の機会となる。これが硬直した組織だとそうはいかない。

事業承継は、特に中小企業の事業承継は、こうしたビジネスチャンスを最大限活用しなければならない。そのために後継者は、新たなビジネスを作り出すことが求められる。いわゆる「第二創業」である。

第二創業のもたらす意味

第二創業は、新経営者による新たな経営ビジョンの表明であり、明確であればあるほど企業内に鮮明なダイナミズムが生まれてくる。社内に期待・不安・称賛・懐疑など色々な感情が芽生え、動揺する。ネガティブな感情が大きいほど、あるいは実現可能性のハードルが高いほど、新規プロジェクトメンバーは結束する。新たなムーブメントを社内全体にまで高められるのは、後継者の覚悟であり、彼をサポートするスタッフの役割だ。こうして社内に第二創業に大きなベクトルにまで育て上げる。

第二創業の効果は、新たなビジネスチャンスの創出だけではなく、社内における新経営者のプレゼンス、活性化なども挙げられる。一方で、これが失敗すれば経済的損失の他、新経営者への求心力低下などが出てこよう。

しかし、仮に失敗しても、その失敗の原因究明を突き詰めて、新たな挑戦に活かせれば失敗にも意義がある。必要なのは新経営者が諦めない、新規事業に対する軸足は揺るぎない覚悟を持つことだ。求心力はこの覚悟からついてくる。

第二創業の支援制度

第二創業を検討するにあたっては、既存事業を分析して、既存の市場に新たな商品・サービスを創出するのか、それとも既存商品・サービスを新たな市場に展開させるのか、もしくはまったく新しい商品・サービスを新たな市場に打ち出すのか、といったマーケティング戦略を詳細に検討して、方針を決める必要がある。

しかしどの方法を選択するにしても、コストは必要で、仮に失敗すればコストの回収は見込めない。資金力に制約が多い中小企業等には負担が大きい。第二創業による組織内の活性化によるメリットも一義的には経済効果は測れない。失敗を想定した事業計画は、事業のダイナミズムを削いでしまう。こうした経済的要因で第二創業に踏み切れない後継者は非常に多いのが現状であり、事業承継を遅らせている要因の一つと言われている。

そこで、国は事業承継に伴う新たなビジネス創出を経済的にバックアップする目的から補助金を設け、事業承継を経済面から支援する制度を立ち上げている。それが「事業承継補助金(後継者承継支援型)」である。

制度概要は、事業を引継いだ者が申請者となって、新たなビジネスを行う際に最大200万円(廃業費用を最大300万円)を上限として補助するという内容である。詳細は公募要項等を参照いただきたい。(事業承継補助金の概要はこちらから

金額的に少額かもしれないが、申請にあたって事業計画を作成し、専門家からの助言を得るスキームとなっており、活用する価値は大きい。また今後、こうした補助金制度は拡充が予定されており、注目していく必要がある。

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