部下を叱責する前に上司が考えるべき伝え方の話

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小さな会社でも、従業員を採用することで「上司と部下」の関係が生じます。目標に向かって頑張るからこそ、一緒に人間関係はうまく育んでいきたいもの。しかし、リーダーシップを強気、強引さなどと勘違いしていては、部下はついてこないものです。部下の指導法が一味違う「考える上司」とは? 


「創業当初は何でも報連相(報告・連絡・相談)をしてきた部下が、いつしか事後報告ばかりしてくるようになった」

報連相は当然だと以前は思っていたが、ある時から何でも報告してくることに、うっとうしさを感じていた。「少しは⾃分で考えてから報告してこい!」と叱責する日々。すると今度は事後報告ばかりになり、さらに叱責を繰り返してしまう。だがある日、部下が事後報告しかしてこなくなった原因は⾃分にあるのではと、気づいた。「自分が意図して伝えた内容と、それを受け取る部下の考え方・捉え方にはギャップがある」のだと--。

叱責ひとつにしても、正しい言葉を付け加えるだけで部下への伝わり方が格段に変わります。そんな「部下への伝え方」 について、きょうは考えてみましょう。 

上司の伝え方によって部下の動き方は180度変わる

 部下が数⼈のうちは、上司の目に触れる機会が多く部下の考えや⾏動もよく⾒えます。上司と部下の距離感も近く、何でも相談でき、何でも報告しやすい環境でしょう。しかし、10人を超える規模になると、部下一⼈ひとりの細かな状況までは把握できない環境に変化していきます。

 「何でも報告する」から、「自発的に考えて動ける」ようになってほしいと思う上司と、⾃分で解決できることは解決しないといけないと思う部下。すると、いつしかこの報連相が「⾃分で考え、責任を取り、⾃分で完結する」という考えに変わっていくことがあります。このコミュニケ―ションが無くなってしまった原因はどこにあるのか。ひもといていくと、ある言葉にたどり着きました。

 何でも報告してくることに鬱陶しさを感じてしまった上司が「少しは⾃分で考えてから報告してこい︕」と叱り飛ばした言葉。これこそが、部下とのコミュニケーションを遮り、部下に思い違いをさせてしまった伝え方なのです。

上司の叱責の意味が分からない部下

 創業して2年ほどになる広告代理店の営業Aさん。素直で⼈懐っこい性格で、仕事では少しおっちょこちょいな面もあるものの、「よく怒られてはいるが上司には気に入られている」と、Aさん⾃身も思っています。

 そんなAさんが、得意先に届けたチラシの印刷物に誤字を⾒つけました。いつもは上司にすぐに報告していましたが、その時は「少しは⾃分で考えてから報告してこい」という上司のいつもの叱責が頭をよぎり、Aさんは自分なりに考えて行動し、事後報告ですませました。 

 「印刷物に誤植がありました。すぐにクライアントへ謝罪し、何千円の印刷代がかかりますが、納品し直すという形でお話しがまとまりました。すぐに謝罪して対応したことで、クライアントも納得してくれたようです」

 自己完結できたと思ったAさんですが、上司はこの事後報告に怒り出しました。Aさん本⼈は、⾃分で考えて、⾃発的にこのミスに対して誠意を持って対応できたと自負していたので、「何で怒られるのだろう?」と、叱責されながら心の中は疑問符ばかりです。そんな気持ちを抱えたままでは、上司が叱責する真の意図も伝わっていません。

自己責任、自己完結は「どんぶり勘定」な行動

 Aさんは、小さなミスであれば⾃己完結して事後報告でいい、それが⾃分で考えて行動する「自律」だと勘違いしているのです。創業当初は上司と部下の距離感が近いこともあり、よく上司とご飯や飲みを付き合う仲であればあるほど、何千円程度のミスを「ご飯代1回分のミス程度」と大目に見て許してもらえるだろうと思うこともあります。

 しかし、上司からすると、勝⼿に⾦庫からお⾦を引き出しているようなもの。その⾦額に大⼩は関係ありません。叱責するのは当然です。でも上司と部下の距離感が近いほど、部下は小さなミスなら許してくれると勘違いしている可能性もあるのです。そもそも、いくらまでが小さなミスとして事後報告で、いくら以上なら大きなミスで報連相するのでしょうか。

上司と部下のギャップを埋める伝え方とは

 「少しは自分で考えてから報告してこい」というだけの伝え方では、報連相は「自己完結すること」だと誤解を与えてしまいます。この言葉にプラスして本来の報連相の意味を加えてみるとより部下に伝わりやすくなります。

「自分なりにまず考えて、その解決方法が正しいかどうかを報告してこい」

 これが上司と部下の間にギャップを感じさせない伝え方になります。動く前に報連相を行うことで、事後報告もなくなりますし、部下⾃身も⾃分なりの解決方法が、報告し承認されることで、⾃分の考えは正しかったという⾃信にもつながります。その⾃信が、上司に報告する重要さを認識させ、上司との信頼関係を高めていきます。

 あなたの部下は⾃発的な⾏動をすることが、⾃己完結することだと勘違いしていませんか? その原因は何でも報告することに憂鬱さを感じ、「少しは⾃分で考えてから報告してこい!」と叱責した、上司の伝え方が不十分だったのかもしれませんね。

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著者プロフィール

岡本 陽子

岡本 陽子

SOARist(ソアリスト)代表 キャリアコンサルタント。1999年、大学卒業後、総合広告代理店に入社。主に求人広告営業をメインに携わり、200社以上3000名のキャリアビジョン・ヒアリングをした経験を生かし、スタッフが健やかに働くためのキャリア支援を行う。「ココロもカラダも健やかに翔(か)けていけるキャリア支援」がモットー。2016年10月に独立し、ソアリスト設立。愛知県出身。