税務調査の遡及年数は何年?

ポイント
  1. 税務調査は、税務署が法人や個人が正しく税務申告を行っているかを確認するための調査です。税務調査には、「任意調査」と「強制調査」の2種類があります。
  2. 無制限にさかのぼって調査されるわけではありません。
  3. 実務ではじめから5年分遡及されることはあまり無く、目安となるのは「3年」だとされています。

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法人や個人による過去の税務申告が正しかったかを確認する調査が税務調査です。しかし何十年も前の税務申告となると、遡られてもそもそも領収証が残っていない場合も多いため、遡及年数の限界が度々問題になります。
そこで本記事では「税務調査は何年までさかのぼって調べられるのか」についてご紹介します。

1 税務調査とは?

税務調査は、税務署が法人や個人が正しく税務申告を行っているかを確認するための調査です。税務調査には、「任意調査」と「強制調査」の2種類があります。

任意調査とは税務署が対象者の同意を得て行う調査です。「任意」と言っても、調査官は質問できる権限を持っており、納税者もこれに応える義務があるため簡単に断ることはできません。なお調査の日程は柔軟に対応してもらうことは可能です。

一方、強制調査とは脱税の疑いのある納税者に対して裁判所の令状を根拠に、強制的に行う税務調査のことを指します。テレビや新聞などの大手メディアで大々的に報じられる脱税事件などは、強制調査であるケースが多いです。

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2 税務調査の遡及年数

調査では、税務申告書に関連する帳簿や経営資料が細かくチェックされますが、無制限にさかのぼって調査されるわけではありません。数十何年もたてば税務申告に関する書類が無くなっていることも多く、会社設立時から申告書類や帳票などすべてを納税者に保管させておくのも負担になります。

では、税務調査はどの位までさかのぼって行うことができるのでしょうか。税務調査の遡及年数については「国税通則法」という法律によって定められています

 2-1 国税通則法に定められた期限

国税通則法の第70条によると、すべての税金について税務調査で遡及できる年数は5と定められています。税務調査が入った場合、法律上、5年間分の帳簿書類は調べられる可能性があると考えておく必要があります。

 2-2 国税通則法が改正される前の期限

なお、国税通則法は平成23年12月に改正されていて、以前は、法人のみ5年、個人事業主の所得税、消費税、相続税などは3年が遡及期限として定められていました。

  • 改正前
    法人:5年
    所得税、消費税、相続税:3年
     
  • 改正後
    一律:5年

現在は一律5年となります。今後法律の改正によってはこの期限が伸縮する可能性があるため、法律改正の動向については随時チェックしておいたほうが良いでしょう。

 2-3 実際は3年になることが多い

税務署は法律上、5年分の過去の申告を訴求することが可能ですが、実務ではじめから5年分遡及されることはあまり無く、目安となるのは「3」だとされています。3年分の帳簿や証憑などを確認して問題がなければ3年分だけ調べて調査終了というケースが一般的です。

しかし、法律上は5年前まで遡及することが可能であるため、例えば、3年分の調査を行った結果、帳簿に誤りや漏れが発見されて、4年目以前に対しても同様のミスがありそうな場合は5年目まで遡って調査が行われます。

また、任意調査の場合、「何年分の調査を行うか」の事前通知が行われます。事前通知で3年と説明しても、その場で税務署職員が「調査期間を5年まで伸ばす必要がある」と判断することもあります。

ただし、当初告知した調査期間から税務署職員の裁量で調査期間を延長する場合は、4年目以前の帳簿に間違いや誤りがある可能性が高そうな場合に限られます。

過去3年分の調査を行うと事前告知があって、3年分調べて何も疑わしいことがなければそれ以上遡って調べられることはありません。調査官が根拠も無く無理に遡って調べようとする場合は、調査に立ち合いをしている税理士から反論を述べることもできます。

 2-4 悪質な場合は最大7年間遡及可能

前述した通り、税務調査の遡及年数は5年と定められていますが、高額や悪質な脱税が見込まれる場合、国税通則法に従って最大7年分さかのぼって調査することが可能です。

国税通則法第70条4より一部抜粋

偽りその他不正の行為によりその全部もしくは一部の税額を免れ、もしくはその全部もしくは一部の税額の還付を受けた国税についての更正決定等または偽りその他不正の行為により当該課税期間において生じた純損失等の金額が過大にあるものとする納税申告書を提出していた場合における当該申告書に記載された当該純損失等の金額についての更正は、当該各号に定める期限または日から7年を経過する日まで、することができる

ただし、7年分の遡及はよほど悪質なケースでないと行われることがありませんし、その決定の過程に不備がある場合は、税理士を通じて反論することも可能です。

 2-5遡及年数のまとめ

ケースごとに整理すると遡及年数は次のようになります。
 

実際多い税務調査の遡及年数

3

調査の結果、何らかのミスが4年目以前にもありそうな場合

5

強制調査などで悪質な脱税などが疑われている場合

7

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3 税務調査と帳簿、領収証など

遡及年数の範囲で税務調査が行われるため、帳簿書類などはきちんと保存しておく必要があります。帳簿や領収証の保存期間は法律で定められています。

 3-1 帳簿・領収証はきちんと保管する

基本的に帳簿や領収証などは処分せず、保存しておく必要があります。税務調査が入ったときに税務申告が適正に行われていたことを証明する書類になるため、税務調査に入られたときに経費を証明する領収証などが無いと、本当に発生した経費でも認められずに修正申告しければならなくなります。

帳簿や証憑類は一箇所にまとめて保管するよう心がけましょう。

 3-2 法人の領収証や帳簿などの保存期間

法人の場合、先ほど説明した通り、最高で7年間税務調査で遡及される可能性があるため、7年間は領収証や請求書、税務申告書などは保存しておく必要があります。

ただし、会社の損金繰越の期間が9年となるため、損金繰越をしている企業は赤字期間の領収証や請求書などは9年間保存しておいたほうが良いでしょう。

なお、会社法では貸借対照表や損益計算書などの決算書、総勘定元帳や仕訳帳などの会計帳簿は10保存することが義務付けられています。

税務調査とは直接関係ありませんが、この期間は保存するようにしてください。

 3-3 個人の領収証や帳簿などの保存期間

個人事業主の場合であっても、帳簿や領収証は保存が義務付けられています。青色申告者、白色申告者問わず、収入金額や必要経費を記載した法定帳簿の保存期限は7年、それ以外の証憑類は5年間です。

ちなみに、法人と違って個人事業で赤字を繰り越せるのは、青色申告で3年、白色申告は繰越期間なしです。また、会社法の適用範囲外でもあるため、法人のように10年間、帳簿や領収証を保存しておく必要はありません。

 3-4 保存の仕方について

帳簿や証憑類の保存と言えば、特に会社経費の領収証は膨大な数になりがちで保管が面倒でしたが、平成27年度、28年度の税法改正によって領収証などの保管要件が緩和されて、一定の要件を満たせば、デジカメやスマホで撮影した領収証のデータも保存方法として認められるようになりました。

「領収証の保管スペースに困っている」「無くさないか不安だ」と言う場合は電子保存を行っても良いでしょう。

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4 まとめ

いかがでしたでしょうか。

税務調査の遡及年数について見てきましたが、基本的には3年、ミスが見つかれば5年、悪質な脱税などを行っていると疑われている場合は7年間遡及されてチェックが行われるため、最大7年間は税務調査のために法人も個人も帳簿書類を残しておく必要があるといえます。

法人の場合はさらに損金の繰越をする場合は9年間、帳簿や証憑類を保存しておく必要がありますし、会社法では10年間の保存が義務付けられていることも意識しておきましょう。

いずれにしても、税務調査でどれだけ会計年度を遡られても困らないように、日頃からミスの無い経理業務を心がけて帳簿や証憑類を整理して保管しておくことが大切です。

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