『九州パンケーキ』の生みの親・村岡浩司に学ぶ起業とまちづくり
- 最初の起業、そして失敗
- 新たなビジネス!タリーズFC店出店までの道
- 宮崎で会社経営をしながらシンガポールへ~38歳で迎えた変化
- ひとりで商品開発~九州パンケーキミックスができるまで
この5年の間には銀座の真ん中に九州パンケーキのアンテナショップを出店したこともある。しかし、その挑戦は3か月で撤退。しかし、失敗から学んだことを次に生かせることを自分は知っている。
前のめりな挑戦の結果としての失敗は何度も繰り返せばいいと思う。失敗を繰り返しながら学んで、そして最後まで諦めずに「変化」しながら目標に向かって進んでいく。以前オイシックスの執行役員である奥谷孝司氏に『村岡さんは反復連打が持ち味だね』と言われたことがある。失敗はそれを経験として積み重ねる。成功を信じて何度でも挑んでいく、つまり“反復連打”していくことが大事である。
九州パンケーキが生まれて今年で5年。パンケーキミックスは全国3000店舗で取り扱われており、日本だけではなく中国や韓国など、これからさらなる展開を予定している。パンケーキカフェは宮崎に本店を構え、武雄市に1店、台湾に2店、シンガポールに1店と計5店舗を運営している。
この店舗数は多いか少ないかは判断が分かれるところだが、自分としては5年で5店舗はとても少ない数だと感じている。この先5年、10年同じことをしていても店舗数は到底100店舗には届かない。
僕らの目的は、九州パンケーキの事業拡大とともに、九州の産地を作っていくこと。農業の活性化に寄与できる規模にまで成長すること。そのためには、九州パンケーキだけには囚われずに、これからはこの『九州パンケーキミックス』を使っての横展開が重要になると考えている。思考をひろげ他の商品の開発にも取り組んだ。そして、『九パン』や『九州ソフトクリーム』など、九州の素材を生かした商品開発を成功させた。これは5年間の蓄積がなくてはできなかったことである。
パンはともかく、なぜパンケーキの会社がソフトクリーム?と思われるかもしれない。もちろんソフトクリームも九州産の食材からこだわって作っているのだが、粉ものメーカーであるからこそ、『コーン』に力を入れた。パンケーキミックスから生まれたコーンは全て店内で手焼きをしている。
大手メーカーのソフトクリームやコーンを使う必要は全くない。よりおいしい、地域(九州)だからこそ生み出せた価値を提供する。少しばかり料金は高くなるかもしれないが、その価値を認めてもらえるか認めてもられないかの戦いである。
長年の地域課題や街の衰退は、簡単には解決しないことばかりである。それは一時のイベントやアイデアだけでは簡単には好転はしない。僕自身のとって、地域活動への関わりは、仕事ではなく一生かかって研究し関わっていきたい趣味でもある。
30代の頃から熱心に関わってきたけれど、一向にまちの活気は戻ってこない。自分の無力感も感じるし、敗北感がある。だからこそ、今一度自分の本分を見つめ直し、起業家としてできることを考えていきたい。自分のルールでのまちづくりをやっていきたいという思いがある。
僕は、九州にしか興味がない。正直、九州だけ生き残ればいいと思っている。
そして、他の地域に生きるローカルプレイヤー達も、きっとそうあるべきなのだ。自分の持ち場を強く意識すること。全国各地に地元を愛する者達が存在して、その想いが重なっていくからこそ、日本は豊かになっていける。人口減少に伴う縮小経済の中では、限定された場所の中だけで商売を考えると大きく成長することは難しくなっていく。ビジネスは広域な地域(リージョナル)へと、どんどん抽象度を上げていく必要がある。
僕自身は、九州全体の地域(農業)資源を一つにくくりながら、新しい商品やサービスを生み出していく。「九州ブランド」が確立して外へ外へとグローバルに販路を拡大し、会社が成長して大きな利益を上げることができたら、いつかもう一度中心市街地に戻って「まちづくり」に関わっていきたい。自社の経済成長をしっかりと社会へと循環していく。そういうマインドを持った起業家が増えていけば地方の活性化は難しくなくなるのだ。
まちづくりに必要なのは圧倒的に30代の力だと思う。行政とのつなぎ役として組合に年配者がいるのは決して悪いことではない。しかし、まちづくりの主役とも言えるプレイヤーのクリンナップは30代であるべきだと考える。かつての自分がそうだったように、30代の人たちが現在48歳である自分に対してある種ライバル心を燃やし、「もうお前のやり方は古い」と思っていなければいけないのだと思う。宮崎は現在そうなりつつある。これからのまちづくりが実に楽しみである。
人から村岡さんはプロデューサーですねと言われることがある。確かにそうだが、同時に自分はブランドのファウンダー(創業者)でもある。誰からも尊敬される存在である成功したブランドのファンダーへのあこがれは尽きない。いつか自分の店が世界中に広がり、世界中の街角で店舗のオープンを祝うテープカットをして旅をしたい。ビジネスが旅と同義であるような、そんな人生を生きていけたら最高だと思うのだ。
「九州」を冠とする看板が世界中に広がっていくのが今後の楽しみである。
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