法人が納める消費税について詳しく解説! 〜税額計算方法や免税、簡易課税制度など〜

ポイント
  1. 消費税の仕組み
  2. 消費税額計算の基本
  3. 中小事業者向けの消費税に関する特例

目次 [非表示]

 2-4 原則課税方式による消費税額の算定

原則、課税方式は消費税額の算定において例外がない場合の消費税額の算定方法です。中小事業者および設立直後の法人にとって重要となる例外については、次章で紹介します。

まずは、原則的な消費税額の計算方法を確認しましょう。売上等に係る消費税は、課税取引で発生した売上の合計額である課税売上高をもとに算定することは、すでに説明しました。

仕入等に係る消費税も売上と同じように課税仕入れで発生した消費税を集計すればいいのですが、場合によっては支払った消費税を全額控除できないことがあります。

その判定に用いるのが、先ほど出てきた課税売上割合です。課税売上割合が95%以上であり、かつ、課税売上高が5億円以下の場合には、支払った消費税を全額控除できます。

反対に、課税売上割合が95%未満、または課税売上高が5億円超の場合には、支払った消費税を全額控除できず、調整計算をする必要があります。

なぜ、支払った消費税を控除できないかというと、仕入のなかには「課税売上をあげるために行われたもの」と、「非課税売上をあげるために行われたもの」があるからです。

わかりやすい例として、教科書を出版する出版社をあげます。出版社は本を作るために、原稿料や製本代などの原価がかかりますが、原稿の執筆者や製本業者に対して支払う対価には消費税が含まれます。

出来上がった本を売る時に、普通の本であれば消費税を消費者から預かるので、最初に説明した小売業者の例と同じですが、教科書を販売するときに違いが出てきます。

それは、教科書の販売は消費税の取引分類上、非課税取引にあたるからです。よって、教科書を販売した時に消費者から消費税を預かることはしません。

ということは、教科書を作るときの一連の取引のなかで、モノやサービスを消費する最終消費者は出版社になります。つまり、出版社は原稿の執筆者や製本業者に消費税を支払いますが、それで消費税については完結しているのです。

このように、非課税売上をあげるための仕入は対応する預かり消費税が発生しないため、本来であれば消費税額計算上、仕入等に係る消費税額として売上等に係る消費税から控除できません。

原則課税方式はこの点について、課税売上割合が95%以上の場合には、非課税売上をあげるための仕入は少ししかないので、仕入の分類をせずに全部まとめて控除することができます。

しかし、課税売上割合が95%未満の場合は、非課税売上をあげるための仕入が無視できない金額あるとして、仕入の金額を分類して控除額を調整する必要があるのです。

調整方法は、個別対応方式と一括比例配分方式の2パターンあります。個別対応方式は、仕入を課税売上のためのものか、非課税売上のためのものか分類して控除額を計算する方法です。

一方、一括比例配分方式は、仕入にかかった消費税額を一括して課税売上割合を乗じて調整します。

この2つの方法は、税額計算が有利となるように事業者が選択できますが、一括比例配分方式を選択した場合は最低2年間、一括比例配分方式を継続して採用しなければなりません。

 2-5 課税仕入れに関する補足

最後に、課税仕入れについて補足をしておきます。課税仕入れという言葉からは、損益計算上の売上原価が想像されますが、売上高と同様に必ずしも一致するわけではありません。

原材料や在庫の仕入などは、もちろん消費税がかかりますので、課税仕入れ=売上原価という図式は成り立ちますが、人件費は消費税が発生しませんので、当然課税仕入れには含まれません。

販管費(販売費および一般管理費)については、事務用品を購入したときには当然消費税を支払いますので、課税仕入れに該当します。

一番わかりやすいイメージとしては、「売上原価と販管費から人件費を除いたもの」が課税仕入れになると抑えておけばいいでしょう。ただし、人件費でも派遣会社を通じて採用した派遣社員の給与に関しては、派遣会社からのサービスの提供にあたるので消費税がかかる課税仕入れに該当します。

細かい事例での例外はあるので、気になる点は都度確認したほうがよいでしょう。

納付する消費税額=課税売上高に係る消費税額-課税仕入れに係る消費税額(課税売上割合に応じて調整された)

最後に手間のかかる消費税額計算を省略、または簡便化できる方法を紹介します。

3 中小事業者向けの消費税に関する特例

前項目では、原則的な消費税額の計算方法について解説しました。消費税額の計算は、取引分類や課税売上割合に応じた課税仕入れの取り扱いなど、複雑で手間のかかる内容が多くあります。

中小事業者や法人設立初期においては、非常に事務負担が大きいものです。そこで、消費税には中小事業者向けのさまざまな特例があります。

これを有効活用することで、負担が減るだけでなく節税になる場合もあるので、中小事業者や設立直後の法人にオススメです。

 3-1 消費税の免税

まずは、消費税を納税する必要がない免税事業者についてです。該当する事業者は大きな特典を受けられることになります。免税事業者となるための要件は、2年前(法人の場合は前々期)の課税売上が1,000万以下であることです。

起業直後は2年前(前々期)がないので、当然課税売上もないため免税となります。3期目以降も課税売上が1,000万以下のままなら、引き続き免税事業者となります。

ただし、創業1、2年目でも事業年度開始日の資本金が1,000万以上の場合や、前上半期の売上が1,000万円超、かつ、給与の支払いが1,000万超の場合は免税事業者となりません。

また、起業直後であっても、免税事業者でなく課税事業者を選択し税務署に届け出たほうが有利な場合もあります。それは、輸出取引をおもに行う法人や、起業直後に多額の設備投資をおこない、課税仕入れが課税売上より多くなることが見込まれる場合です。

いずれのケースも、預かる消費税より支払う消費税が大きくなるので、消費税の還付を受けることができますが、免税事業者だと還付を受けることができません。

このように絶対に免税事業者のほうが有利とはいえないので、起業時に免税事業者と課税事業者、どちらのほうが好ましいかをしっかりと検討しましょう。

 3-2 簡易課税制度

もう一つの中小事業者向けが簡易課税制度です。

前述した原則課税方式のような煩雑な処理をしなくても消費税額をカンタンに算定することができますまずは、簡易課税制度を適用できる条件ですが、以下の2つが必要となります。

・2年前(前々期)の課税売上高が5,000万円以下
・簡易課税制度の適用を受ける旨の届出書(消費税簡易課税制度選択届出書)を事前に提出すること

簡易課税制度では、事業の種類に応じてみなし仕入率が定められており、受け取った消費税にみなし仕入率を掛けるだけで、簡単に控除すべき消費税額を計算することができます。

簡易課税方式における納付する消費税額の計算式は以下の通りです。

納付する消費税額=課税売上に係る消費税額-(課税売上に係る消費税額×みなし仕入率)

みなし仕入率は業種によって以下のように決められています。

・簡易課税制度のメリット
みなし仕入率は原則課税方式で計算するよりも有利な割合に設定されていることが多いので、有効活用すれば節税になります。また、仕入に関する消費税額を把握する必要がないので、帳簿をつけるさいの負担も軽減されます。

・簡易課税制度のデメリット
ただし、簡易課税制度にもデメリットがあります。先ほどの免税事業者でも例にあげましたが、課税仕入れが課税売上よりも多い場合、本来ならば消費税の還付を受けられるのですが、簡易課税制度を採用すると、計算式をわかるように必ず消費税を納めるように算定されてしまいます。

簡易課税制度は届け出を事前に行う必要がありますが、一度簡易課税制度を選択してしまうと最低でも2年間は簡易課税制度を継続しなければなりません。

進行期の途中で課税仕入れが大きくなりそうだと気づいたので、原則課税方式で税額計算をさせてください、と申し出ても変更することはできません。

簡易課税制度が適用できるのは、前々期の課税売上高が5,000万以下と成長を続けている最中の法人であるため、大規模な設備投資を行いたいという機会があるかもしれません。

その際に消費税額をどの方法で計算しているかによって、節税額が大きく変わります。設備投資計画を行う場合には、消費税額計算の方法も一緒に検討してみましょう。

あわせてこちらの記事もお読みください。
社長が知っておきたい消費税の仕組み①

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