法人税の申告方法まとめ~必要書類から注意事項まで

ポイント
  1. 法人税確定申告の概要
  2. 法人税申告の流れ
  3. 法人税申告書の書き方と注意点
  4. 法人税申告書の提出

目次 [非表示]

3 法人税申告書の書き方と注意点

法人税申告書の別表は一~十九までの19種類ありますが、別表一だけをとっても(一)~(三)まであるように、細かく分けると19種類以上あります。

この章では、そのなかでも主要な別表9つについて解説します。

・別表一(一)

この別表は、会社の基本情報の記載や法人税額を計算するために作成します。

 別表一(一)の上3分の1には、納税地(本店所在地)や会社名などの会社の基本情報を記載します。代表者の自署押印欄には、原則として、代表者の自署と代表印が必要となりますので注意が必要です。

 別表一(一)の中段では、当期の法人税額や期末に納付すべき法人税額を計算します。別表四で計算された所得や別表六で計算された税額控除の金額等を記載し、そこから中間で納付した税額を差し引いて当期の納付すべき法人税額を計算します。なお、当期が赤字(欠損)の場合には、別表七で計算した翌期以降に繰り越す欠損金を記載します。中間で支払った法人税額が還付される場合には、申告書の右下に還付口座を忘れずに記載しましょう。

 別表一(一)の下3分の1では、当期の地方法人税や期末に納付すべき地方法人税額を計算します。地方法人税といっても国税ですが、法人税額とは記載する欄が異なりますので、忘れずに記載しましょう。

・別表二

この別表は、自社が同族会社等に該当するかどうか判断するために作成します。

期末時点の株主名簿に基づき、株主を転記し、第1順位の株主グループが50%超を保有している場合には「特定同族会社」に該当し、第13順位の株主グループを合計して50%超を保有している場合には「同族会社」に該当し、それ以外の場合には、「非同族会社」に該当します。ただし、被支配会社でない法人株主は判定から除かれます。

同族会社や特定同族会社に該当すると「みなし役員」や「留保金課税」など非同族会社と異なる取り扱いになるものがありますので注意が必要です。

・別表四

この別表は、会計上の利益からスタートし、様々な調整を行い、税務上の所得を計算するために作成します。

会計ルールと税務ルールは、その目的が異なるため、利益(または所得)の考え方に相違があります。例えば、交際費のように会計上は費用として計上するが、税務上は一定の限度額があり、その超える金額は税務上の費用(損金)として認められないため、限度額を超えた金額を会計上の利益に加算する必要があります。逆に、受取配当金のように会計上は収益として計上しますが、税務上は一定の金額が税務上の収益(益金)としなくても良いため、会計上の利益から減算する必要があります。

ちなみに、交際費の損金算入限度額や受取配等の益金不算入額の計算はほかの別表により計算した結果を転記する項目もありますし、専用の別表がなく直接記入するような項目もあります。

・別表五(一)

この別表は、会計上の純資産に一定の調整を加えることによって、税務上の純資産を計算するために作成します。

別表四と同様に、会計ルールと税務ルールの相違に伴い純資産の金額にもズレが生じます。例えば、賞与引当金のように会計上は費用(純資産のマイナス要因)となるが、税務上は損金と認められない(純資産のマイナスとならない)ものがあるため、会計上の純資産に加算する必要があります。

ただし、別表四のところで説明した「交際費の損金不算入額」や「受取配当等の益金不算入額」は社外流出項目といい、別表四では調整されますが、別表五(一)では調整されませんので注意が必要です。

・別表五(二)

この別表は、法人税等の納付状況を記載するために作成します。

税目や会計上の処理方法によって、別表四における処理も異なってきます。例えば、法人税や延滞税等は損金不算入となるため、会計上で費用処理した場合には、別表五(二)の「損金経理による納付」欄に記載し、別表四において加算する必要があります。

一方、事業税や固定資産税等は損金算入となるため、会計上で費用処理した場合には、別表五(二)の「損金経理による納付」欄に記載しますが、別表四において加算調整する必要はありません。

・別表六

この別表は、預金利子や配当金等を受け取るさいに源泉徴収された税金を法人税額から控除(税額控除)するために作成します。

当期に受け取った利子や配当金の金額を記載するとともに、そのさいに源泉徴収された税額を記載します。預金については、源泉徴収された全額を法人税額から控除することができますが、配当金については、所有期間によって全額控除できない可能性がありますので、期中で取得した株式に係る配当金を受け取った場合には注意が必要です。

・別表七

この別表は、発生した損失(欠損金)を翌期以降に繰り越す、または当期の所得から控除するために作成します。

平成3041日以後開始事業年度において発生した欠損金は10年間(それ以前に発生した欠損金は9年間)繰り越すことができ、その間に発生した所得と相殺することができます。ただし、大法人の場合には、発生した所得の50%までしか相殺できないため注意が必要となります。

・別表十五

この別表は、交際費の損金不算入額を計算するために作成します。

中小法人については、年間800万円までは損金として計上することができますが、それを超える金額が発生した場合や大法人については、損金不算入となります。なお、接待飲食費については、その50%が損金算入となりますが、中小法人の年間800万円の枠との併用ができないため、接待飲食費が1,600万円以下であることが明らかである場合には、あえて接待飲食費を集計する必要はありません。

・別表十六関係

この別表は、会計上の減価償却費と税務上の減価償却費を明らかにするために作成します。別表十六には(一)~(十一)まであり、おもに使用する別表とその内容は下記のとおりです。

・主な別表とその内容

別表の種類

内  容

別表十六(一)

定額法による償却額の計算

別表十六(二)

定率法による償却額の計算

別表十六(四)

リース期間定額法による償却額の計算

別表十六(六)

繰延資産の償却額の計算

別表十六(七)

少額減価償却資産の損金算入額の計算

別表十六(八)

一括償却資産の損金算入額の計算

基本的に会計上の減価償却費は税務上の減価償却費(償却限度額)に合わせるケースがほとんどです。ただし、税務上には法定の償却方法があり、それとは異なる償却方法を会計方針として採用している場合などには、減価償却超過額が発生し、別表四において加算する必要がありますので注意が必要です。

また、少額減価償却資産は年間で300万円までしか利用できないため、300万円を超える場合には一括償却資産に変更するなどの対応が必要となります。

4 法人税申告書の提出

法人税の申告書が作成できたら、添付書類とともに税務署へ提出する準備をしましょう。

4-1 提出準備

ここで注意が必要なのは、資本金等の会社規模によって提出部数が異なる点です。会社規模による提出部数は原則として下記のとおりです。

  • 会社規模と提出部数

 

会社規模

提出部数

資本金1億円以上

3部とOCR用紙

資本金9,000万円以上又は

法人税額5,500万円以上

2部とOCR用紙

上記以外

1部とOCR用紙

OCR用紙とは、税務署が機械で申告内容を読み取るための用紙です。

上記のほか、会社に保存する控えがほしい場合には、控え用をもう一部用意しましょう。

また、当期中に増資を行い、資本金が増加している場合や所得が増加し、法人税額が増加した場合には提出部数が異なってきますので注意が必要です。

4-2 税務署へ提出

2-4 法人税申告書の提出と納付」でも触れましたが、税務署への提出方法には、税務署に持参する方法、郵送や電子申告によって提出する方法があります。

電子申告の場合には、事前に利用開始の届出が必要となります。また、郵送の場合には、申告期限当日の消印があれば期限内申告となりますが、念のため簡易書留等により発送した記録が残る手段で提出することをオススメします。会社保管用の控えについては、持参した場合はその場で返却してくれますが、郵送の場合には、後日郵送されてきますので、忘れずに返信用封筒を同封しましょう。

ちなみに、レターパックでも受け付けてくれますが、宅配便等では受け付けてくれませんので注意が必要です。

こちらのもあわせてお読みください。
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