決算って何? 決算書の読み方を詳細解説!

ポイント
  1. 決算書の基本的な読み方を解説!損益計算書、貸借対照表の基本が分かる。
  2. ビジネスパーソンが決算を意識することで、仕事への取り組み方が変わる
  3. 起業家にとって数字は生命線、絶対に読める必要あり

目次 [非表示]

3 決算書の読み方

ここでは財務諸表のB/S、P/LとCF計算書の3表の意味や読み方を解説します。

 3-1 貸借対照表の読み方

B/Sは一時点の企業の財政状態を示す情報の集合体であるため、その内容により財政状態の健全性を読み取ることができます。つまり、企業の安全性を計る重要な資料といえるでしょう。

 

資産の部

負債・資本の部

 

流動資産

流動負債(他人資本)

 

固定負債(他人資本)

 

固定資産 

 

資本(自己資本)

 

①短期の安全性

短期の安全性を見るには、流動資産と流動負債の関係を確認します。たとえば、流動資産の割合が高いほうが安全であり、下回る場合は好ましくない状態と判断されるのです。

流動資産は短期的な支払手段であり、流動負債は短期的な支払義務を示すものであるため、流動負債が流動資産よりも大きい場合は短期の支払いに問題が生じる可能性が高まると判断されます。

なお、経営分析では「流動資産÷流動負債×100%」のことを「流動比率」と呼んでおり、100%以上が適切であると評価されます。また、流動資産から現金化しにくい商品などを除いた「当座資産」を流動負債で割った「当座比率」もよく使用される指標です。

②長期の安全性

長期の安全性は、固定資産と自己資本または「自己資本+固定負債」の関係で確認されます。たとえば、固定資産の割合が少ない場合長期的な安全性は良好と判断されるのです。

固定資産は1年を超えて事業活動に運用するもので高額なものも多いため、支払い義務のない自己資本や長期に返済できる長期借入金などで資金調達することが望まれます。その観点から固定資産が自己資本等でどの程度賄われているかを見ることで長期的な安全性が計られるのです。

「固定資産÷自己資本×100%」は「固定比率」と呼ばれ、100%を下回ることが健全とみなされます。つまり、100%超の場合は自己資本では賄い切れておらず、負債に頼っていることになるためリスクが高くなると評価されるわけです。

なお、「固定資産÷(自己資本×+固定負債)×100%」は「固定長期適合率」と呼ばれ、これも100%を下回ることが健全とみなされます。高額な固定資産を自己資本だけで賄うのは容易ではないため長期借入金を含めて評価するのです。この場合に100%超となれば、短期借入金などの短期の支払い義務のある負債で運用していることになるためよりリスクが高いと評価されます。

③資本調達構造の安全性

企業の総資本は自己資本と他人資本(負債)に分けられますが、これらの資本調達構造の関係を確認し、安全性を計る場合もあります。

資産全体である総資本と自己資本の関係では、自己資本の割合が多いほど安全性は高いと評価され、その指標は自己資本比率(=自己資本÷総資本×100%)と呼ばれています。つまり、自己資本の割合が多いということは返済義務のある負債が少ないことであるため、安全性が高いとみられるわけです。

ただし、業種・業態により自己資本比率には差があることも珍しくなく、自社の値を評価する場合には業界平均値などと比較して判断しなければなりません。一般的に30%〜40%以上あることが望ましいと言われることもありますが、業界によっては平均値が20%を切るケースもみられます。

また、安全性の面では自己資本比率は高いほど健全ですが、利益率が高い企業の場合一定の負債は節税効果があり収益面で有利に働く(財務レバレッジ効果)こともあります。そのため安全性と収益性を考慮したバランスのよい資金調達を目指すことは誤った選択とはいえないでしょう。

 3-2 損益計算書の読み方

P/Lは収益、費用と利益に関する情報を集めた資料なので収益性や費用構造の善し悪しを読み取ることが可能です。

①収益性

企業の収益性を見る場合、利益と資本の関係、売上高と利益の関係、売上高と費用の関係を確認し評価する方法があります。

利益と資本の関係では、経常利益(事業利益)と総資本、当期純利益と自己資本で評価するケースが多いです。前者は総資本経常利益率(*総資本事業利益率)(ROA)、後者は自己資本利益率(ROE)という指標で利用されています。

これらの値は高いほど収益性は良好と判断されますが、業界平均値や自社の過去の値などとの比較で判断されるべきでしょう。

*事業利益は、「営業利益+受取利息・配当金+有価証券利息」の合計

売上高と利益の関係では、売上総利益と売上高、営業利益と売上高、経常利益と売上高などで評価されるケースが多いです。前から順番に売上高総利益率、売上高営業利益率、売上高経常利益率という指標で利用されています。

特に売上高営業利益率は通常の営業活動による収益性を見る指標として重要です。評価にあたっては、業界平均値や自社の過去の値などとの比較により判断されなければなりません。

②費用構造

売上高と費用の関係では、売上原価と売上高、販管費と売上高、人件費と売上高、などで評価するケースが多いです。前から順番に売上高売上原価率、売上高販管費比率、売上高人件費比率という指標で利用されています。

これらの指標では値が高いほうが費用の割合が高いことになり、良好とは言えなくなりますが、これも業界平均などとの比較が必要です。そして、これらの指標は収益性の悪さの原因を追究する際に利用されるケースが多く、つまりどの費用が収益性を悪化させているかを確認するために利用されています。

なお、これらの指標の値が業界平均より高い、自社の過去の趨勢をみて増加傾向である場合などは事業上の問題になっている可能性も高いため対策が打たれることも多いです。

 3-3 キャッシュフロー計算書の読み方

CF計算書は、キャッシュの流れを営業、投資と財務の面から捉えてその状況を端的に示すものです。そのため、企業全体でのキャッシュの過不足の状況が掴めるとともに、3つの面のどの要素が原因となっているかも把握できます。

3つの面の主な読み方は以下の通りですが、企業の成長ステージや業種・業態などにより異なるケースも少なくないため注意が必要です。

①営業CF

営業CFはその企業の主たる営業活動によるキャッシュの流入・流出を示すものであるため、値がプラスであることが望まれます。その値が大きいほど営業活動の力強さや債権回収力の高さが判断できるのです。

本業が好調な場合は営業収入が増加して結果的にキャッシュフローが多くなりやすいですが、債権回収能力が低いと、マイナスに陥ることもあり倒産リスクを高めます。なお、起業して間もない企業の場合、事業が軌道に乗るまでの間はマイナスとなることは珍しくありません。

②投資CF

投資CFは有価証券や固定資産等の取得・売却に伴うキャッシュの流れを示すものであるため、投資活動が活発である場合は通常マイナスとなりやすいです。

特に主たる営業活動を推進するための投資は当然必要であり、適宜投入されることになるため、投資CFは通常マイナス傾向になります。特に起業後間もない製造業や新規事業を開始する企業では大きなマイナスとなることは珍しくありません。

問題はその大きなマイナスを埋められるキャッシュが得られるか、用意できるかどうかにかかりますが、一般的には営業CFよりも株式の発行、社債の発行や借入金などの財務CFに頼るケースが少なくないです。

逆に不調な事業をリストラするためにその資産を売却することになれば、投資CFはプラスになることもあります。

③財務CF

財務CFは、株式発行による収入、社債発行による収入と償還での支出、借入に伴う収入と返済による支出、配当金の支払いによる支出などのキャッシュの流れを示すものです。

営業活動や投資活動が活発である場合、その資金を賄うため財務CFはプラスとなる傾向がみられます。事業を回していくという点では財務CFがプラスとなっても悪いとは言えませんが、借入などが増加すると支払利息の負担も大きくなり収益のみならずリスクの点でも良いとは言えません。

逆にそれらの活動が一段落して売上の回収が増加してくると、社債の償還や借入金の返済のために財務CFはマイナスとなりやすいです。

④フリーキャッシュフロー(フリーCF)

CF計算書におけるフリーCFとは、「営業CF+投資CF」の合計額を意味し、この金額がプラスであることが一般的には健全と評価されます。

「営業CF+投資CF>0」ということは、投資活動に投入するキャッシュは営業活動で得られるキャッシュで賄うことを意味するため、安全性の面で良好といえるのです。つまり、営業活動で稼いだキャッシュの範囲で投資を行うことになり、借入金等に頼る必要性もないため企業の持続性の観点から望ましい姿といってよいでしょう。

ただし、企業や事業の成長段階では十分な営業CFが得られないケースも多く、実際には財務CFに頼る、つまりフリーCFがマイナスとなるケースも珍しくありません。

問題はそのマイナス額が極めて大きい場合や何年も続く場合であり、放置すると倒産リスクに発展することもあるでしょう。

こちらもあわせてお読みください。
会社設立で気になる「設立日」「決算日」の決め方

4 決算書をビジネスに活用

決算書の意味や読み方がわかれば、以下のようなビジネスシーンで活用できます。

4-1 業務改善

決算書は企業活動の結果の集大成であり、いわば健康診断した場合の測定値を意味するものです。健康診断の場合、その測定値を分析することで体の状態を客観的な数値により正確に把握し病気やその兆候などを確認できますが、決算書を経営分析することで企業の経営上の問題点なども確認できます。

問題点が浮き彫りにされればその原因の追求が必要となりますが、その作業にも決算書のデータが活用できるのです。

たとえば、ここ3年間の売上高は微増であるものの営業利益が減少しているという問題が生じた場合、3年間の損益計算書を比較してみるとその原因が明らかになることがあります。

売上高の伸び率に対して販管費の伸び率が大幅に高くなっており、営業利益を圧迫しているというケースがあるのです。販管費の内訳を過去3年間で比較すると、人件費などが大幅に上昇していることなどが発見できるケースもあります。その点を現場で確認すると、安易に人員を増加したり繁忙期に残業が多くなったりしたことが要因だと判明することがあるのです。

決算書のデータを活用すれば業務上の問題点を掴み、その解決の糸口を見出すことも可能となります。

 4-2 決算セール

良い決算書にすることは経営上の重大な課題の一つであり、そのための手段として決算セールが活用されることも少なくありません。

決算セールの意味や目的は企業によって異なりますが、「顧客への利益の還元」や「節税目的等の在庫処分」とともに、最も多いのが「予算達成のための販売促進」でしょう。

決算日が近づき決算書の内容が確定していく中でこのままでは予算達成が難しいといったケースで決算セールが良く実施されます。特に売上高が前年度より下がりそうな場合などはより大掛かりな決算セールになることもあるのです。

決算セールでは利益を度外視して実施される部分もありますが、利益を含めた予算達成が重要となるため、計画的な決算セールの実施が欠かせません。超目玉商品、目玉商品、特売品、通常品などを含む決算セールでの目標売上高と利益を決め各々の販売数量を計画する必要があります。

決算セールを成功させるには店内でのPOP等による告知のほか、チラシ配布やインターネット広告、会員へのメールによる案内などが重要となります。

4-3 粉飾決算の可能性の判断

成長企業を買収する場合などでは対象企業の調査が重要となりますが、粉飾決算している企業などの不適切企業を見抜くために決算書が慎重に評価されます。

粉飾決算を見抜くには相当程度の決算書を読み解く能力が求められますが、そのポイントをいくつか挙げてみます。

 

在庫の水増し

 

粉飾決算で最も多く使われる方法の一つが在庫の水増しです。在庫として存在するものの実質的な商品価値がないものを在庫として維持したり、処分予定の商品を在庫として計上したりするケースが少なくありません。

この点のチェックには棚卸資産回転期間(棚卸資産が在庫として会社にとどまっている日数)の確認が有効です。棚卸資産回転期間の直近3年間などを比較し、その期間が大幅に長くなっている場合などでは粉飾の可能性が高いと考えられます。

売上の架空計上や不良債権

掛け取引などの場合、売上高の増加に伴い売上債権も増加しますが、顧客の支払条件が変更されない限り売上債権回転期間*は大きく変わりません。

しかし、過去3年間等で比較した場合に、売上債権回転期間(売上債権を回収するために必要な日数)が大きく伸びていれば架空計上や不良債権の可能性が疑われます。また、消費税の金額も合わせて確認すれば粉飾決算の可能性が掴みやすくなるでしょう。

受け入れ済み商品の未計上

当期の仕入分の一部を計上しないで当期の利益を多く見せるという方法もよく使われます。

このチェックには、買入債務の回転期間を確認すると粉飾の可能性が判断しやすくなるでしょう。仕入を掛け取引で行っている場合、仕入が増えれば買入債務も増加しますが、支払条件が変更されないのであれば買入債務回転期間(買入債務を実際に支払うまでの期間を示す指標)に大きな変化は起こらないはずです。

直近3年間などの買入債務回転期間と比較して大幅に期間が短くなっている場合は仕入の未計上や過少計上の可能性が高くなります。また、消費税の金額も合わせて確認すると判断しやすくなるでしょう。

おすすめの関連記事

簿記の知識を学びたい方はこちら!
複式簿記の知識がなくても理解できる簡単な貸借対照表(B/S)、損益計算書(P/L)の仕組み

貸借対照表、損益計算書について詳しく知りたい方はこちら!
簡単な貸借対照表(B/S)、損益計算書(P/L)の仕組み①

これから起業・副業を始める方へのおすすめ

経営者がもっと売上を上げるためのノウハウの宝庫
01アカデミア

副業を始めようと思うが、売上を出せるか不安。起業してみたものの、どうしたら売上が上がるのか分からない。
などにお悩みの方にオススメです。500時間以上の専門家コンテンツで、あなたの売上アップのノウハウを学んでください。

01アカデミア

圧倒的に販売しやすいストック商材
01パートナー

こちらは副業のネタを探している方にオススメです。
低コストから始められ、販売時のサポートも充実しています。
報酬体系も良いので、一度確認してみてはいかがでしょうか。

01クラウドパートナー

関連記事