土木作業員が独立するために知っておきたいこと

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少子高齢化が進む日本では労働人口の縮小が懸念されており、特に土木業は身体への負担が大きい割に会社員として従事するには待遇がそれほど良くないことが多いため、作業員の減少傾向が顕著です。もっとも、会社から独立して自ら起業することによって、その待遇は大きく異なってきます。

そこで、以下では土木作業員が独立に関して知っておくべきことを中心に見ていくことにしましょう。

独立によってどういった変化があるのか?

まず最初にひとくちに土木といっても、その仕事の内容は実に様々です。

我々が普段目にすることが多い土木作業員の仕事とは、道路の舗装やビルの基礎工事、ガスや水道、電気などの配管や送電線などの地下への埋設などですが、それ以外にも土木の仕事には河川の整備事業やダム工事、橋梁や各種建築物の建設などがあります。また、あまり知られていませんが、宅地の造成や田んぼ、畑などの耕作地の整理なども土木の重要な仕事となっています。

このように、土木作業員が活躍できる現場は非常に多岐にわたって存在しているのですが、それぞれの現場で働く土木作業員の役割も一律ではありません。作業員という場合にイメージされやすいのは、現場で資材を運んだり、重機を操作するような人々ですが、工事全体の進捗管理を行う現場監督なども作業員の一人なのです。

土木作業員が独立することによって得られる恩恵には、自分のペースで仕事ができるようになることや、様々な支出を経費として計上することができるようになるなど職種を問わず共通のものもありますが、職種によって異なる点もいくつかあります。

例えば、もっぱら現場で肉体労働に従事していた作業員が独立して同様の仕事を手掛けたとしても、付加価値はそれほど高まらないため、会社員時代と比べて劇的に待遇が改善する可能性はそれほど高くないでしょう。しかしながら、現場監督や電気工事士のように特殊な技能や経験を必要とするような職種を経て独立に至った場合には、その専門性や稀少性が高く評価されて、独立後の待遇が飛躍的に向上することが考えられます。

なお、会社員の場合には、その会社が手掛ける土木工事の範疇でしか仕事をすることができませんが、独立することによって様々なクライアントを開拓できるようになるため、自分にとって関心の深い分野の仕事に従事することも可能となります。

独立はどのタイミングで行うべきか?

次に、独立は土木作業員のキャリアにおいて、どのようなタイミングで検討するのがよいのでしょうか。

この点については、前述のとおり、たいした技能や経験がないままに独立しても大幅な待遇改善は望めないことから、それなりにキャリアを積んだうえではじめて独立を考えるべきです。

具体的には、現場監督を任されるようになってから独立するというのがお勧めです。

土木作業員は世の中に数多く存在していますが、その中で現場監督を務めることができるだけのスペックを備えている人材というのは意外に多くはありません。現場監督には、単に工事に関する知識だけでなく、現場の作業員を管理・監督できるだけの広い視野や彼らを統率する人間性など多くのスキルが求められることになるため、自然とそれらすべての要素を満たす人というのは限られてくるわけです。

そのため、現場監督の経験があるというだけで、クライアントからは非常に高く評価されるようになるため、独立することによって待遇が劇的に向上する可能性が高いといえるでしょう。

もっとも、だからといって現場監督になってすぐに独立することには慎重であるべきです。というのも、独立後は自分で新規に顧客を開拓することが必要となるため、なるべくであれば現場監督として自身を信頼して指名してくれるようなコネクションを築いたうえで独立した方が得策だからです。

ある程度、しっかりとしたコネクションができて、取引先などから独立を勧められるようになったら、会社から離れても十分に生計を立てることができるはずですので、その時点で初めて独立を検討するとよいでしょう。

独立に向けて準備すべきこととは?

では、現場監督を任せられる程度にキャリアが形成できたうえで、いよいよ土木作業員として独立するためにはどういった準備をすればよいのでしょうか。

まず第一に行うべきこととしては、税務署に対して開業届を提出することです。開業届は、出さないと法に抵触するようなものではありませんが、提出した場合には青色申告制度を利用することができるようになります。

そのメリットは、65万円の控除が受けられること、赤字を3年の間繰り延べて収入と相殺できること、家族に支払った給与を経費算入できること、30万円未満の減価償却資産を一括で経費にできることなどです。これらはいずれも大きな節税効果が得られるものばかりですので、手取り収入を増やすためには、ぜひとも開業届は提出しておくべきです。

また、会社員ではなくなることから、健康保険や国民保健などの社会保険への加入手続きを行うことや、収入保障保険や賠償責任保険などの民間の保険への加入を検討することも必要となります。従業員であれば当たり前のように得られた福利厚生がなくなることから、必要な保険は自分で考えて入るようにしなければなりません。

さらに、独立した後に従事する土木作業の種類によっては、あらかじめ建設業の許可を受けていることが必須条件となることがあります。

許可を受けるためには、経営業務の管理責任者や専任の技術者が存在することに加えて、一定以上の金銭的信用があることや、所定の欠格事由に該当しないことといったいくつかの条件がありますので、これらをすべて満たしているかは慎重に検討する必要があります。場合によっては弁護士などの専門家に相談するのもよいでしょう。

以上に加えて、独立後に顧客となってもらえるような人脈を広げておくことはいうまでもありません。土木の世界は意外と狭く、独立したからといって以前付き合いのあった取引先との関係がまったくなくなるわけではありません。しっかりと人脈を築いておけば、たとえ独立したとしても信用して仕事を任せてくれる可能性があることから、将来の独立を想定しているのであれば、普段から人脈作りに注力することが求められます。

資金計画はどのようにして立てるのか?

独立して自ら土木業を営むためには、ある程度の資金が必要となります。

土木業の特徴として、比較的利益率が高く、また土木工事の請負契約の特徴として報酬は工事完了後に支払われることが多いことから、その前に発生した外注費や資材費などのコストを賄えるだけの金銭を最初に用意しておかなければなりません。

そのためには、余裕を持って資金計画を用意しておくべきであり、いざというときに資金の調達先などをあらかじめ想定しておくことが必要です。

労災に加入することの重要性

最後に、労災にはかならず加入しておくようにしましょう。

独立して一人で土木業を営んでいる人の中には労災未加入者が意外と多く存在しています。しかしながら、土木業には危険を伴う作業が多いことから、いつ何時仕事中に大けがをしないとも限りません。

そのような場合に、何らの保障も受けられないということでは生活を維持することができなくなりかねないため、いざという時のセーフハーバーは必ず用意しておくべきです。

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