個人事業主とは?個人事業主が開業届を出すメリットとデメリットを解説

ポイント
  1. 個人事業主とは、個人で事業を経営している人
  2. 開業届を出しても、会社に副業がバレることとは直接関係ない
  3. 「本業が事業主」と「副業が事業主」の場合、事業所得で申告の通りやすさに違いが出る

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個人事業主という言葉についてどのくらい理解していますか?

最近では副業を始める人が増えていますが、実は会社員であっても自営の副業を行うとその時点で、個人事業主になるため開業届を出す義務が発生します。

ただし、副業で開業届を出すことが義務だと知っている人は、少なく提出している人はさらに少ないでしょう。また、開業届を出すことで副業が会社にバレないかなど色々と気になることもあると思います。

本記事では、そもそも個人事業主とはどういった人を指すのか、その言葉の意味から法人との違い、そして開業届を出すことのメリットやデメリットについて解説していきます。

個人事業主とは?

個人事業主とは、個人で事業を経営している人です。「事業」とは反復的かつ継続的に行う仕事を意味します。つまり個人事業主は、長期にわたって同じ仕事を行うことで生計を立てている人を意味します。たとえば街中にある飲食店や八百屋さんなどは、個人事業主の形態で営まれている場合が多くなります。

もう少し厳密な意味でいうと、個人事業主は税務署に開業届を提出した上で、会社に属さず個人で事業を行う人を指します。個人事業主と似た用語に「フリーランス」がありますが、フリーランスと個人事業主は若干異なる意味合いを持っています。一般的にフリーランスとは、会社に属さずに単発の仕事を請け負って働く人を意味する場合が多いようです。税務署に届出を出していなくても、単発の仕事を個人で請け負っていればフリーランスと言えます。

個人事業主は街の八百屋さんや個人経営の飲食店、フリーランスは個人で仕事を請け負うエンジニアやデザイナーというイメージを持っていれば使い分けできると思います。

個人事業主のメリット・デメリット

働き方の多様化による影響や将来への不安が増している昨今、個人事業主へのチャレンジを検討する人は増えています。

たしかに個人事業主には魅力的なメリットがいくつか存在しますが、一方でデメリットも存在します。個人事業主にチャレンジしたい方には、後々後悔しないように前もってメリットとデメリットの両方を知った上で、最終的な判断をするのをオススメします。ここでは公平な観点から、個人事業主になるメリットとデメリットをそれぞれお伝えします。

個人事業主になるメリット

サラリーマンよりも自由に働きやすい

サラリーマンの場合、働く場所も仕事の内容も働く時間帯も全て決まっていることがほとんどです。一方で個人事業主の場合、働き方次第ですが基本的には働く時間帯も場所も仕事内容も、全て自分で決定できます。

節税の効果を期待できる

個人事業主になると、経費を計上することによる節税効果を期待できます。仕事用に購入したパソコンや文房具はもちろん、オフィスと兼用している家の家賃や光熱費の一部を経費として落とすことも可能です。また家族に給与を支払えば、それも経費にできるのでより節税の効果を高めることができます。

自分の頑張り次第で会社員よりも稼げる

会社員は給料が固定されているので、頑張っても頑張らなくてももらえる額がさほど変わりません(長期的には変わるかもしれませんが)。一方で個人事業主は、頑張って結果を出した分だけ収入が増えます。頑張り次第で会社員よりも稼げる点は、個人事業主になる上で魅力的なメリットです。

個人事業主になるデメリット

税務署への開業手続きが面倒

個人事業主としてビジネスを行うには、税務署への開業手続きを行う必要があります(何もしなくても事業は行えますが、税金面での優遇措置を受けられません)。必要な書類を揃えた上で税務署に届け出るのは、普段忙しいサラリーマンの方にとっては大きなデメリットでしょう。

日々の会計処理や確定申告の手間が生じる

税制面でのメリットを得られる青色申告を行う個人事業主は、複式簿記という形式で日々の取引を記録する必要があります。

ある程度の知識が必要な上に、小さな取引も一つずつ記録する必要があるので、普段時間がない会社員の方にとっては重い負担となります。

また毎年2〜3月頃には、一年間の経営成績をまとめた財務諸表を作成し、それを税務署に届け出る手続き(確定申告)も行わなくてはいけません。

ただし最近は、比較的簡単に会計処理や申告書の作成を行える会計ソフトも出ているので、昔と比べると負担は軽くなりました。

信用力が低い傾向がある

会社員や法人の経営者と比べると、個人事業主は信用力が低い傾向があります。個人事業主は収入が不安定と見られるので、会社員と比べるとクレジットカードの作成やローンなどの審査に通りにくくなります。またビジネスの場面でも、法人と比べると個人事業主は信用しにくいと考える人は少なくありません。そのため、個人事業主であることを理由に、法人であれば成約できる取引が成約しない可能性もあります。

個人事業主と法人の違い

個人事業主と法人にはいくつかの違いがあります。ここでは、3つの観点から個人事業主と法人の違いをお伝えします。

開業の仕組み

個人事業主の場合は、開業届を提出すれば誰でも無料でビジネスを始めることができます。

一方で法人の場合は、定款の作成や登記手続きが必要となり、会社の形態にもよりますが合計で10〜30万円ほどの設立費用がかかります。

開業のしやすさでいうと、個人事業主の方がはるかに優れています。

資金調達

個人事業主の資金調達方法には、金融機関からの融資やクラウドファンディング、公的機関の助成金・補助金があります。ただし前述通り信用力はあまり高くないので、資金調達の難易度は比較的高いです。

一方で法人の場合は、個人事業主が使える資金調達の手段は全て活用できる上に、信用力が高いので個人事業主よりは簡単に資金調達できます。加えて株式会社であれば、株式発行による資金調達が可能になります。

資金調達の難易度や手段の豊富さでいうと、法人の方が有利であると言えます。

会計や税務の仕組み

青色申告を行う個人事業主は最大で3年間しか赤字を繰り越せませんが、法人の場合は最大で10年(平成30年度4月1日以降に発生する分)も赤字を繰り越すことができます。

また経費として認められる幅に関しても、法人の方が広いです。

会計や税務の観点から見ると、法人の方が有利であると言えます。

個人事業主が開業届を出すメリット

事業所得で申告できる可能性がある

開業届を出していて税務署に認められたなら、事業の所得を事業所得として申告できるようになります。事業所得として認められるためには一定の規模である他、様々な条件がありますがその所得がなくなると生活に影響が出ることも条件の1つです。その事業だけで生活している場合など本業として行なっている場合は、比較的簡単に事業所得と認められるようです。

副業の場合は事業所得として申告するための基準はかなり厳しくなります。本業の収入だけで生活費が賄われている場合は、副業の収入が本業を超えていても事業所得と認められないこともあるようです。損益通算が行えるほか青色申告ができるなど様々なメリットがありますが、デメリットもあるため事業所得で申告できる場合であっても、選択するかどうかをよく検討するべきでしょう。

損益通算を行える

事業所得として申告している場合は損益通算が可能になります。これは他の事業や会社の給料がある場合は損益の合算ができるということです。副業で赤字が出た場合に、赤字の分を申告して本業の所得から引くことができるというわけです。

既に支払われた所得税が減額になるため、その分が還付されることになります。これはかなり大きなメリットですが、そのせいで副業では損益通算が難しくなってきていることについて後ほど説明します。

青色申告ができる

事業所得で申告できるようになっていなければいけませんが、開業届とは別に確定申告の対象となる年の3月15日までに「所得税の青色申告承認申請書」を提出することで青色申告ができるようになります。本格的な青色申告は複式簿記の知識が必要なため、白色申告と比べるとかなり複雑になりますが様々なメリットがあります。

以前は知識がないと税理士に頼む人が多かったでしょうが、最近では計算ソフトがあるため知識がない個人事業主でも青色申告を簡単に行うことができるようになりました。青色申告では「賃貸対照表と損益計算書」を提出して期限内に申告することができれば所得から65万円の控除を受けることができます。複式簿記で記帳しない場合でも青色申告を行えば10万円の控除が受けられます。
 

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ポイント
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あわせてこちらもお読みください。
確定申告って何?個人事業主で経理がわからない方必見!

家族に払った給料を経費にすることができる

事業を手伝っている家族に対して給料を支払っている場合、その給料分を経費にすることができますが白色申告だと一部しか経費にすることはできません。青色申告を行うと制限がないため給料全額を経費として計上することができます。

赤字を三年間繰り越すことが可能

赤字が出た場合、翌年の利益から赤字分を引いて申告することができます。個人事業主は最大で三年間の赤字を利益から差し引くことができるため、かなりの節税効果が見込めます。他にも経費として認められるものが増えるなど青色申告の節税効果はかなり大きいです。

屋号で銀行口座を開設できる

開業届を出していれば屋号で銀行口座を作ることができます。個人の銀行口座しかないと事業とプライベートでお金の流れを分けることができないため、計算がややこしくなってしまい申告時などにとても面倒です。事業用の口座を作っておけば申告時の計算などがかなり楽になります。

確定申告の書類が毎年送られてくる

開業届を出すと毎年確定申告をすることが求められます。毎年、時期になると確定申告の書類が送られてくるようになります。それだけですが、確定申告の時期を知らせてくれるのは便利です。

税理士に無料で相談できる機会が増える

開業届を出すと税理士が講師をしている無料相談会などの案内が届くようになるほか、無料で記帳指導をしてくれるサービスを受けることができるようになるようです。税理士に相談するのは基本有料ですし、自分で勉強しても正しいかどうか不安な部分が残ると思います。無料で専門家に相談できる機会があるのは大きなメリットでしょう。

個人事業主が開業届を出すデメリット

失業保険を受けられない可能性が高い

会社が倒産したりリストラにあった場合、手続きをすれば雇用保険の基本手当、いわゆる失業保険を受け取ることができます。

ただし開業届を出している個人事業主は、この失業保険を受け取ることができない可能性が高くなります。失業保険を受け取る条件の1つとして、本人に再就職する意思と能力があることが求められます。開業届を出しているなら既に事業を行っていると判断されるため、再就職する意思がないと判断されるケースが多いようです。開業届を出しているだけで全面的に失業保険を受け取れないわけではないようですが、基本的に受け取ることができないと考えておいた方が良いでしょう。

事業所得で申告した場合、会社にばれる可能性が高い

すべての自治体に当てはまるわけではありませんが、事業所得として申告してしまうと会社に副業をしていることがバレやすくなる恐れがあります。納税すべき金額が記載されている特別徴収税額通知書が会社に送られてきます。そして、この通知書の中にはどの所得で申告が行われたかが、分かるようになっている場合があるのです。

副業の収入を事業所得で申告した場合は事業所得の欄に、雑所得で申告した場合は雑所得の欄にチェックが入ることになります。これを見れば会社はその社員に、どんな所得があるのかが一発でわかるわけです。雑所得の場合は何の収入か分からないため、副業をしていることが分かるわけではありません。不用品等を売って高額になった場合でも雑所得になります。

しかし事業所得にチェックが入っていたら、事業をしていることが確実になるため副業をしていることがバレてしまうということです。特別徴収税額通知書を見て、所得があることが分かるかどうかは自治体によって違います。

会社に副業を隠しておきたい場合は、確認してから事業所得で申告するようにしましょう。


あわせてこちらもお読みください。
「確定申告」って何?副業している人のやり方、バレるバレない、ポイント徹底解説

開業届の職業欄に注意

開業届を提出する際、業種について記載する必要があります。事業所得が290万を超える場合個人事業税がかかってきますが、業種によって税率が変化してくるのです。開業届は安易に提出してしまうことが多いですが、業種によって支払う税金が変わってくるため慎重に考えて自分がどの業種に該当するかを決めましょう。

個人事業主の開業届に関する疑問と誤解

開業届を出す事は義務ではあっても罰則は無い

副業であっても自分で事業をする場合はその時点で個人事業主になるため、1ヵ月以内に開業届を提出しなければなりません。個人事業主の開業届を出すことが義務付けられている以上、罰則がないか気になる人は多いでしょう。

しかし、提出しなかったからといって何か罰則があるわけではありません。

開業届は事業の実態がなかったとしても誰でも出せば受理されるものです。開業届を出して何もしていない人や、申告するほど利益がない人や赤字の人も数多いと考えられます。収入が少ないのに開業届けを税務署に出そうとして、断られたという話もあります。

確定申告をする人間が増えると税務署の仕事が増えることになりますから、規模が小さい場合は開業届を出して欲しくないという考えもあるのかもしれません。

とにかく、開業届を出さないからといって何か問題があるわけではありません。メリットとデメリットを考えた上で出すかどうかを決めた方が良いでしょう。

個人事業主の開業届を出しても事業所得で申告できるわけでは無い

これも誤解している人が多い話ですが、開業届を出したからといって事業所得で申告することが認められるわけではありません。開業届は開業して一ヶ月以内に提出することが原則ですし、売上がなくても提出できます。

しかし、事業所得で申告できる条件にはある程度の規模であること、長期間継続していることと安定して売上があることなどが求められます。

本来、開業届を提出してすぐに事業所得として認められるはずはないのです。開業届を出すのは実質いつでも良いとはいえ、安定して売上がない事業では事業所得と認められません。事業所得で申告する場合は勝手に判断しないで、税務署に相談して事業所得で申告できるかを確認してからにしましょう。

事業所得で申告することになると会社に副業をしていることがかなりバレやすくなりますが、開業届を出すことと事業所得での申告が許されることはイコールではありません。特に副業の場合は開業届を出しても雑所得で申告することになる可能性が高いです。開業届を出したからといって、会社に副業がバレることとは直接関係ありません。

副業だと事業所得で申告するのは難しい

本業で事業を行っている個人事業主の場合は、事業所得で申告することは比較的簡単に認められるようです。

しかし、副業で個人事業主を行なっている場合はかなり厳しくなってきています。これは事業所得だと損益通算ができることが影響してきているようです。

副業で赤字を出した場合、損益通算を行えば所得を減らせるため所得税の還付を受けられます。しかし、この制度を悪用して副業で赤字を出して還付を受ける脱税が増えているのです。

その影響で副業の所得を事業所得として申告することに、税務署はかなり厳しくなっています。勝手な判断で事業所得として申告すると、修正申告になる可能性があります。税務署に相談してから申告することが大切でしょう。

まとめ

個人事業主の開業届を出すことは基本的には義務ですが、罰則はありません。

それに、一度開業届を出してしまうと失業保険を受けられない可能性が高いです。副業の収入によって開業届を出すべきかどうか判断しましょう。

また、開業届を出しただけで事業所得で申告できるわけではありませんし、勝手に事業所得で申告して損益通算を行うと修正申告になる可能性があるため十分に注意しましょう。

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