小規模企業共済制度を有効に利用する方法を解説!〜基本内容からメリット・デメリットまで〜

ポイント
  1. 小規模企業共済制度の基本内容
  2. 小規模企業共済の5つのメリット
  3. 小規模企業共済のデメリット

目次 [非表示]

3 小規模企業共済のデメリット

小規模企業共済の利用の内容・状況等によってはデメリットも生じる可能性があるので注意しましょう。

3-1 240カ月未満の納付月数の場合、任意解約では元本を下回る

任意解約で受け取れる解約手当金については以下のような規定が設けられています。

1 掛金納付月数に応じて、掛金合計額の80%から120%相当額が受けとれる
2 掛金納付月数が240カ月(20年)未満の場合、掛金合計額を下回る

つまり、納付月数が少ないと受け取る解約手当金は掛金合計額という元本を割ることになるのです。

また、240カ月以上の納付期間があっても、その間に掛金の増額・減額がある場合、変更前掛金や増加掛金等はそれぞれの納付月数により支給割合が決定されます。例えば、ある時期からの1万円を増額した期間が11カ月などの場合、その1万円の部分の支給割合は80%などで設定され掛金合計額を下回ることになるわけです。つまり、早めに変更しない場合は損することになります。

3-2 掛金納付月数が少ないと共済金等は受け取れない

掛金納付月数が6カ月未満の場合、共済金Aや共済金Bも受け取れません。また、12カ月未満の場合、「準共済金」「解約手当金」は受け取れないので注意が必要です。

3-3 任意解約は税負担が重くなりやすい

65歳未満での任意解約などは税法上「一時所得あつかい」となり、共済金の一括受取等の場合の退職所得扱いより税負担は重くなります。一時所得の課税対象額の計算式は次のとおりです。

〔総収入金額-収入を得るために支出した金額-特別控除額(最高50万円)〕×1/2

なお、小規模企業共済の場合、納付した掛金が所得控除されているため「収入を得るために支出した金額」の部分は「0円」になります。一方、退職所得扱いの課税対象額の計算は次のようになります。

〔収入金額(源泉徴収前の金額)-退職所得控除額*〕×1/2
*退職所得控除額は、勤続年数で以下のように計算されます。

1 勤続年数Aが20年以下の場合:40万円 × A (80万円に満たない場合には、80万円)
2 勤続年数Aが20年超の場合:800万円 + 70万円 × (A - 20年)

例えば、240カ月(20年)の納付月数で1250万円を納付した65歳未満の者が任意解約する場合、その解約手当金は一時所得となり課税対象額は次のようになります。

課税対象額=〔1250万円-支出額0円-特別控除額50万円(あった場合)〕×1/2=600万円

一方、240カ月の納付月数で1250万円を納付した65歳以上の個人事業者が廃業して共済金Aを一括受取する場合は退職所得あつかいです。その場合の課税対象額は次のようになります。

課税対象額=(1250万円-40万円 × 20年)× 1 / 2 =225万円

以上のように一時所得と退職所得とでは課税対象額に大きな違いが生じるので、解約・加入期間や受取方法などは十分に検討して利用しなくてはなりません。

3-4 赤字だと節税効果は消滅する

個人事業主で業況により基礎控除等を差し引いた後の課税所得が0円や極めて少ない場合、小規模企業共済制度の節税効果は得られません。そのような状況下で毎月高額の掛金を納付していても節税効果はなく、逆に資金繰りが一層厳しくなる可能性もあります。

4 小規模企業共済制度を上手く活用するためには

以上のとおり、小規模企業共済制度には経営者にとってさまざまな特典が用意されています。しかし、どのような制度にもメリットとデメリットはあります。メリットやデメリットは利用者の状況や利用方法によって異なるので、利用者によってはメリットを享受できずデメリットを受けるだけの利用になるかもしれません。

制度の運営者や関係機関などはメリットだけをアピールする傾向にありますが、利用する側がデメリットの部分もしっかり認識して利用しないと不利益を被ることもあります。とくに、「共済制度」「金融商品」「保険」などを利用する場合は、制度や商品等の基本内容とともにそのメリットとデメリットをしっかり把握したうえで契約・利用することが望まれます。

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