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もしもフランチャイズで店舗を持った場合、年度末に本部から要求されるのが「財務諸表」です。財務諸表は企業に経営状況を報告するために必要な資料です。それでも、いきなり正確な内容の財務諸表を作成するのは難しいので、あらかじめ詳細を調べておきましょう。
この記事では、財務諸表の果たす役割や作成する際の注意点を解説していきます。
財務諸表とは決算で作成する書類のこと
1年の売上や利益率をまとめ、資料にする作業を「決算」といいます。そして、決算に向けて1年間の財政状況を反映させた書類を「財務諸表」といいます。
フランチャイズで開店した場合、店長は本部に決算報告をしなければいけません。つまり、財務諸表も自力で用意する義務があるので、正しい作り方を知っておきましょう。
財務諸表はさまざまなジャンルに分かれています。その中でも、「貸借対照表」「損益計算書」「キャッシュフロー」の3つは重要性が高く、欠かせない資料です。これら3つは「財務三表」と呼ばれ、決算では必ず本部から要求されるでしょう。
そのほか、営業の現状や今後の展開を報告する「営業報告書」や、財務三表の明細を記載した「附属明細書」などを補足的に用意することもあります。財務三表は必須として、ほかの資料をどの程度準備しなければいけないのかは、本部の方針によって異なります。
財務諸表は決算が迫ってすぐに作成できるものではなく日々の心がけが大切です。フランチャイズ開店する際には、早い段階で財務諸表の提出方法を本部に確認し、意識しながら経営を続けるようにしましょう。
貸借対照表は資金の流れを反映している
財務諸表の中でも、経営状況がもっともわかりやすく確認できる資料が「貸借対照表」でしょう。貸借対照表にはどこから資金を調達し、何に使ったのかが記されています。資産、負債、純資産を併せて載せることで、資産がプラスかマイナスかが見てとれます。
たとえば、負債に対して純資産が少ないと、「負債を返済する目処が立っていない」ということです。本部は経営状況が悪化していると判断し、店長の評価は下がりかねません。逆に、負債が純資産よりも少ないと「経営状況は良好である」といえます。
貸借対照表が重要なのは、今後の融資に関わってくる問題だからです。多額の負債を抱え込んでいる企業に、金融機関やスポンサーは融資してくれません。正確には、総資産のうち、企業の自己資産の割合が高ければ高いほど社会的信用は増します。そのため、本部はフランチャイズチェーンに少しでも負債を減らすよう求めてきます。
フランチャイズ経営者は資産を少しでも多く報告できるよう、売掛金や取引先の未払い金なども漏れなく記載しなくてはいけません。そのほか、店舗が保有している土地や備品、設備なども固定資産として計上可能です。
損益計算書は収益から費用を差し引いた利益を表す
財務三表のうち、「損益計算書」は収益と費用の関係を反映しています。主に5つの項目から成り立っている資料なので、すべてを押さえて本部に提出しましょう。
まず、もっとも計算方法が単純な項目が「粗利」です。粗利は売上から原価を差し引いた数字であり、プラスになっていれば「黒字が出ている」ことを意味します。
次に、「営業の利益・損失」です。ここでは、総利益から宣伝費、管理費を差し引いた数字を掲載します。粗利が出ている店舗でも、営業損失が表れていては効率的な経営ができていないといえるでしょう。
続いて、「経常利益」です。営業利益から雑費などの「営業以外の費用」を差し引いた数字です。もしも経常利益が出ていないなら、支出が何なのかを確認しなければいけません。
そして、「税引前当期純利益」も載せます。これは経常利益から特別な支出を差し引いた数字です。予想外の災害、事故による損害はここに反映されます。
最後に、「当期純利益」を算出します。当期利益から税金を差し引いた数字であり、店舗の総利益です。当期純利益を出すためには、細かい支出も見逃さずに控えておくようにしましょう。
キャッシュフローはお金の流れを報告する資料
財務三表において、お金の流れを報告するのが「キャッシュフロー」です。キャッシュフローにはさまざまな種類があるものの、フランチャイズチェーンの経営者にとって重要なのは「営業活動キャッシュフロー」と「財務活動キャッシュフロー」だといえるでしょう。
営業活動キャッシュフローでは、店舗経営によって生まれた売上や支出を記載していきます。つまり、店舗にお金が入っていくるケースが多いのか、出ていくケースが多いのかが一目瞭然です。支出が多い店舗は「マイナスを出している」ということになり、本部からの評価が下がってしまうでしょう。
一方、財務活動キャッシュフローとは、資金調達の履歴を記した資料です。フランチャイズ経営者自ら資金調達を行っている場合、どこからいくらの資金を融資してもらったのかを記録しなければいけません。融資額が正確に残っていないと、店舗が黒字なのか赤字なのかさえわからなくなってしまうからです。さらに、財務活動キャッシュフローを追えば、余った資金の使い道も見てとれます。
資金の不正利用を防ぐためにも、提出が必須な資料といえるでしょう。
財務諸表を作るうえでの注意点
慣れないうちは財務諸表を作るのは至難の業です。そこで、何度もチェックを重ねて計算間違いのないようにしましょう。もしも財務諸表にミスがあれば本部からの評価が下がるだけでなく、本部が行う納税や負債の返済などにも影響が出ます。多大な迷惑をかけてしまうので、正確性を第一に考えましょう。
そして、「隠し事をしない」のも大原則です。経営状況が悪い年度では、つい財務諸表を誤魔化して作成したい誘惑にかられがちです。しかし、偽りのデータは高確率で発覚しますし、問題を先送りにしても損失を大きくするだけです。財務諸表は実際の数字に基づいて構成しましょう。
そのほか、経営者のビジョンが見えることも重要です。財務諸表は単なる報告ではなく、経営者が店舗をどうしていきたいのかを伝えるための手段でもあります。仮に収支がマイナスだとして、プラスに変えていくための具体的な方法まで用意して資料を提出しましょう。本部からどんな点を追及されるのか、シミュレーションしておくとより精度の高い財務諸表が完成します。
また、財務諸表は経営者自身も参考にして、今後の展開に活かす指標になりえます。店舗の未来のためにも、財務諸表は手を抜かずに作りましょう。
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