中小企業は独自化で生き残ろう!CONKS GROUP 代表取締役社長 松島 亘さん

ポイント
  1. 日本一ハロウィンに力を入れてる美容院
  2. プライドを捨てて再出発
  3. 驚異的な再訪率を生み出すチームワーク

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中小企業が生き残っていくための一つの正解が「独自化」していくことなのではないだろうか。

そんな仮説からスタートした、経営者のインタビュー連載「中小企業は独自化で生き残ろう!」。

第7弾は、CONKS GROUP代表取締役社長 松島 亘さんです。

(聞き役:頼母木 俊輔 助っ人編集長)

美容院を3店舗経営する経営者

− 本日は宜しくおねがいします……あのー松島さん、髪型が…。

美容院を複数店舗経営するオーナーさんと、うかがっているんですが?


松島)はい、そうです。昨日はちょっとヒーローになっていた関係で。。。

− ヒーローですか?ドラゴンボールの敵役っぽいですが。

ハロウィンだったので、映画『ミスター・インクレディブル』のヒーロー一家の次男、ジャック役になりました。

ミスターインクレディブルならぬ、ミスターコンクレディブル

−おー大集合!!すごい気合入ってますね(笑)松島さんだけでなく、お店のスタッフさんたちも本気ですね。一体感がハンパじゃない。

はい、そう言ってくれて嬉しいです。今年は「 チーム力 」がテーマだったんで!スタッフのみんなが本気を出してきて、僕の存在感が薄くなっているのがマジで嬉しいです。

ちなみに去年はラーメンマンをやりました。2日後に身内の結婚式だったので親から怒られましたけど(笑)

経営者として特に変わったことをしているわけではないですが、唯一言えるのは僕ほどハロウィンに力を入れてる美容院の経営者はいないと思いますね。

これは自信をもって全国で一位だと言えます。むしろ、それでブランディングをしてきたって言ってもいい。

最初は5~6年前に流行った日本エレキテル連合をやったら大ウケして、なんかみんな喜んでくれて面白いなって思いました。

その次の年は落ち武者、ほんとに甲冑借りて、頭に矢刺して町を練り歩きました。

こうやって毎年恒例で続けてたら町が騒ぎ出すわけです。子供たちも喜んでくれてるんで気持ちいいというか。

SNSでもみんな楽しみにしてくれてるから、毎年すごいプレッシャーで押しつぶされそうですけど、今年も喜んでもらえました!

−いきなり面白すぎてお腹が痛いんですけど、このあとちゃんとしたお話、大丈夫ですかね。ちょっと出落ち感が(笑)

松島さんは美容院を経営されているのに美容師の免許を持っていないとお聞きしました。独立の経緯を簡単に教えていただけますでしょうか?

挫折からのスタート

高校を卒業して専門学校を出て、美容院で働き出したんですけど、シャンプーでひどく手が荒れてしまい、大学病院で精密検査を受けてドクターストップが出てしまいました。

その当時は美容師になりたいという夢が絶たれてめちゃくちゃ落ち込みましたね。

しばらくはバイトしながら遊んでたんですけど、その噂を聞いた、以前働かせてもらっていたお店のオーナーさんから、美容院にカラー剤とかシャンプー剤を販売するディーラーの仕事を紹介していただきました。

その仕事で調子よく順調に営業成績をあげることができて、美容院のお客さんの売上を上げるお手伝いができているんだから、美容師じゃなくてもお店をやることができるんじゃないのって思うようになりました。それが25歳ぐらいの時ですね。

それで、夢に日付決めようと思って、キリがいいから30歳の自分の誕生日にしました。実際に30歳の誕生日のときに、新松戸にお店をオープンさせることができました。

−開業資金はどうしたんですか。

貯めてましたよ。あとは銀行から1000万借りました。初期はほぼ1000万でしたね。運転資金500万円を持って、余裕だぜなんて思いながら、3人でスタートしました。

当時の会社に許可をもらって、ディーラーの仕事をやりながら二足のわらじでスタートしました。

勉強のつもりで、まずは自分の給料はとらずに、そこで学んだことをお客さんの提案にも生かしていこうと考えていました。実際にものすごく経営者の気持ちがわかるようになりましたね。

自信満々でオープンしたんですが、運転資金として用意していた500万円があっという間に半年ぐらいで100万円になって、ヤバイ、もう潰れる。と思いました。

もうダメだから、他に転職する準備をしとけとメンバーにも伝えて覚悟してたんですけど、ギリギリのところでお客さんが増えだして何とか切り抜けてました。

そこからなんか調子よくなっちゃって。2年目でいきなりこの場所にお店(我孫子店)を出したんですね。

人も集まってきて、やっぱ俺ってスゲーんだなって思って。ガンガン行こうぜってスタッフも一気に10人ぐらいになって。

なんですけど、まあ大体こういう奴って失敗するじゃないですか(笑)。

−はい、あるあるです。勘違いしがちですよね(笑)

まだ31、2歳で、オラオラな態度になっていました。任せてるって言いつつもいつも口を出すし、褒めることしない。

売上が悪かったらスタッフのせいにして、一言で言うとスタッフの心を掴めていないクソみたいな社長でした。

その理由の一つが、オラオラのくせして、実はスタッフに媚びていたことです。

自分で髪が切れないのでスタッフに辞められたら困るっていう恐怖心が常にあって、内心はいつもびくびくしながら強気な自分を見せていました。

メンバー間の雰囲気もよくなくて、予想通り人が辞めてくんですよ。

人を育てることができてなかったし、価値観の共有ができていなかったからみんなバラバラで、最終的に2店舗で5人しかいなくなっちゃったんですよ。

都内に比べればまだ安いとはいえ、家賃が高いですし、もう今度こそ終わったなと思いました。

そこで、一番最初からいるメンバーにも相談して、本店の新松戸のお店を潰したんですよ。

プライドを捨てて再出発

−縮小するというのは、なかなか苦しい決断ですよね。

はい、創業からのメンバーには、俺たちは絶対にやれるから、気持ちをひとつにしてもう一回ゼロから力をあわせてやりなおそう、僕もプライドを捨てて、謝罪して、説得して納得してもらって。

そしてここのお店(我孫子店)もいったん全部壊して、1200万円借りて、気持ちもお店もすべてリニューアルしてスタートし直したんです。


それで、このお店は、本当にお客さんに喜んでもらえるようなお店にしようと考えました。

例えば、以前アンケートをした時に、美容院に行くのに子どもを預けないと来れない、連れていくと嫌な顔をされる。

美容院できれいになるのが唯一の楽しみなのに癒やされないっていう意見があって、それがずっと引っかかっていました。

だから、子ども連れでも安心してこれるような個室をつくって、ホワイトボードを設置して落書きしたり、おもちゃで遊べるようにしました。

また、入り口にはバーカウンターを設置して、外から中が見えないようにしています。

通常の美容院は店内が賑わっている様子を見せたいので、外からよく見えるようにガラス張りになっている事が多いんです。

だけど、女性はカラーやラップを巻かれている姿を外から他人見られたくないですよね。

それをどうやって隠したら面白いかなってなって。じゃあ美容院だけどビールが飲めたり美味しいコーヒーが飲めたりしたら楽しいよねって。

流行るとか儲けるとか有名になることよりも、お客さんが楽しめたり喜んでもらえることを真剣に考えて、一気にそっち側に向かっていきました。

−たしかにラップされてるのを外から見られるのはいやです。なのにそんなお店が多いですよね。美容院って(1日で)何回転くらいするんですか?

ここは7席あるんですけど、3回転いけばいいですね、うちの場合だと。普通のサロンだと4とか5を目指すと思うんですけど、そうすると待たせちゃうんですよお客さんを。

うちは待合席になるべく座らせないっていうルールがあって、入ってきたらお待たせしました、こちらへどうぞってそのままスーッと入っていけるようにしています。

忙しすぎると注意するようにしていて、お待たせるんだったら予約を取るなと言っています。

−待たなくていい美容院は理想的ですね、でも、そのやり方で経営はうまくいってるんですかね?

はい、いま沖縄と1年ぐらい前にオープンした柏のお店の3店舗があって、シャンプーなどを取り扱う別会社もあるので、それを入れると売上が1億円ぐらいです。

FUNTAS(沖縄)

この業界はスタッフが社会保険に入っていないところが多いんです。でも、うちは全員入れて、それでもちゃんと利益が残る。

いまは担当の税理士さんにも驚かれるぐらい調子がいいです。

だけど昔の僕はそれで調子に乗ってダメだったじゃないですか。だからこのうまくいってるタイミングで3か月に1回の社員研修を始めました。

理念の共有っていうと簡単ですけど、価値観を社員全員で共有するのがいかに大事かっていうのを痛感したので。

3か月に1回店休んで、1年で4回、研修合宿、社員旅行みたいな感じで、より長い時間を一緒に共有することでお互いの理解を深めようと考えています。

仮想通貨「ワッタル」で感謝の気持ちを伝える

−1年で4回ですか!多いですね!!!そんなにお店休んで研修合宿やっている美容院は聞いたことないです。

はい、そうだと思います。年間に合宿費用だけで100万円をオーバーしてますけど、うまくいってるからこそできることでもあるし、今一番大事だなって思っています。

あと、最近は社内で使う「ワッタル」っていう仮想通貨をつくりました。

社内のコンテストの優勝賞金や社員同士が感謝の気持ちを伝えるために送りあったりしています。

−デザインが本格的ですね!ワッタルって、松島さんの事じゃないですか(笑)

はい、札束が社内でとびかっています(笑)これをみんな面白がってツイートするわけですよ。それを見たお客さんとかも興味をもってくれて。

最近流行っているのは、こっそり手紙付きで仲間のところ置いておくらしいんです。

今日も頑張ってるよねって。なんか感動するじゃないですか。なんかすげーいいと思って。

−いいですね。お店の雰囲気も以前とちがってよさそうです。

はい、いまはちゃんと任せられるようになりました。昔と違って社員にへんに媚びることもなく自然体で接することができています。

冗談で、辞めたきゃいつでも辞めていいよみたいな、言いづらいこともオープンに言ってますね。

これはある社長から学んだことで「楽しいからって会社が繁盛するかわからないけど、楽しくなければ繁盛しない、成長しない」ていう言葉がすごく自分に響いたんですね。

この考え方が社内にも浸透していて、みんな楽しいことを率先して考えるようになってきました。

−集客はどうやってやっているんですか?

うちはSNSが圧倒的にすごいです。ほとんどのスタッフが何らかのSNSで発信しています。

しかも自主的に。採用も同じことが言えるんですが、やっぱり楽しいところに人は集まるんですよね。

もちろん美容院なんで技術があってお店の雰囲気も重要。でも一番大事なのは人です。

そのバランスが整っていることがSNSを通じてうまく伝わっているんじゃないかなと思います。

そのためには、社長が一番発信してなかったら伝わらないと思いますし、極端に言うと社長の僕が象徴になるぐらいじゃないとダメ。

そうなればスタッフのツイートをリツイートしたり、ブログを紹介するなど、スタッフにフォーカスをあてることができますから。


−SNSで発信する上で心がけてることとや意識していることはありますか?

ほとんど一つだけです。集客するとかそういうことではなく、僕の場合だと笑ってもらうことだけですね。

嫁のお父さんとお母さんに見られながらも、40歳過ぎて腹を出して変なことをやっているのは、やっぱりみんなに笑ってもらいたいという気持ちしかないですね(笑)

あともう1つは、うちのお店はもちろん、社員を知ってもらう。っていうことぐらいで、この2つですね。

1つじゃないじゃん。2つあるじゃん(笑)

驚異の再訪率

−なるほど、とはいえ、これだけ美容院がある中でうまく言っているのはSNSの力だけじゃないと思うんですよ。

他の美容院と何が違うんですか?

美容院では「再訪率」っていうまた次にお客さんが来てくれる率が、重要な経営の指標になっています。

このパーセンテージを超えれば経営がうまくいくというのがあって、うちの場合はそれが業界の平均を圧倒的に上回っています。

この前、2回めの再訪率を測ってみたことがあって、あるスタッフは96%で、あるスタッフは100%だったんですよ!

100人きたら100人が再訪してくれると言う鳥肌モノの数字です。

本人は、僕ってこんなにすごかったんですか?って気づいてなかったんですけど(笑)

−なんでそんなに高い再訪率になるんですか?

もちろん技術は大事でスタッフはすごく努力をしていますが、ようは、合うか合わないかなんですよね。

お客さんに合うなって感じもらうために重要なのは、お客さんの話をよく聞くっていうことで、うちではそれをすごく大事にしています。

お客さんの要望に答えたいという気持ちが強いですね。

あとは、小さな配慮やチームでお客さんを楽しませる、総合力みたいなものが圧倒的なのかなって思います。

−小さな配慮や楽しませる精神ってそんなに簡単には身につかないと思うんですが、どうやったらできるようになるんですか?

みんなが空気が読めるようになるトレーニングっていうのが実は飲み会にあります。

入ってきたころはすごい怒られるんですけど、例えば瓶ビールの注ぎ方です。

昭和なんですけどラベルを上にするとか、ジョッキのグラスを置く時も、その人の利き腕を事前にみておいて、そっちに持ち手を向けるとかも注意されます。

使い終わったお皿を重ねて置いておくとかは、言わなくてもみんなやります。

癖になって無意識レベルでできるように最初はうるさく言いますね。

−すごい、それがカルチャーとして浸透してるんですね。それは細かい配慮ができるようになりそうです。楽しさと厳しさのバランスが絶妙ですね。

そういうところから、いちいちお店で指導しなくても、人の気持ちがわかっていくんじゃないのかなっていうのがあるんで、とにかく飲みニケーションが好きですし、多いですね。

大事な話があると呼び出しては、ただ飲みに連れていってます。

最近はすっかりスタッフにもバレてて、飲みたいだけですよね?って断られたり、社長さみしいんですよね?って言われたりしてますが(笑)

他愛ない話もたくさんしますし、スタッフの方からも積極的に仕事の話もしてきますね。

楽しそうに仕事について喋っているのを見ると、こいつらも遊びと仕事が一緒になってきたなっていう感じで嬉しくなります。うおおおおおおって。

CONKS野球チーム

−社員の方とコミュニケーションで、意識していることは?

相手が男ならリアルに裸の付き合いをすることで、一緒にお風呂に入ることです。

他の社長さんにもぜひやって欲しいんですけど、なんか心の壁が一枚なくなりますんで。

あとは、よく見ることですかね。言葉の隅々、強弱、顔の表情、しぐさ、すごく見ています。

いま悩んでるなとか、彼氏ができたらすぐわかりますからね。あとみんなSNSで発信してくれるんで、すぐ分かるんですよ。

とにかく社長との壁っていうのなるべくなくしたいなっていうのはありますけど、一方で、あんまりしゃしゃり出ないようにしなきゃいけないとは思っています。

任せてるやつらの立場っていうのがあるんで、本当はもっと行きたいんですけど、なるべく行かないようにガマンしてます。

最近では来なくていいです。って言われたりしますし。それって嬉しいことですよね。

常にチャレンジ

−経営で大事にしていることを3つ絞ってあげるとしたら?

世間にも社員にも裸になれ

社長が元気で明るく楽しんでいること

あと、常にチャレンジすること、ですかね。

−今後実現していきたいことは?

来年台湾に出店することが決まっています。

1年ぐらい前から動いていたのですが、台中にようやく物件が決まって本格的に動き出せるところまではきました。

あとはラーメンが死ぬほど大好きなので、ラーメン屋さんはやりたいですね。その前に年内にオリジナルラーメンも出しますし!

松島さんのInstagramはラーメンだらけ

会社を拡大してくのが目的じゃなくて、社員が楽しいことをやるために活躍する場をいっぱい作るっていうのが僕の使命っていうか、仕事だなって思っています。

だから将来的には社内にいろんな事業部を作れたらいいですね。

−企業が独自化していく時のポイントは?

えー?最後に難しいなーその質問…

でももうきっと全部喋ってる気がしますが、やっぱ人目を気にしないことじゃないですか。

人目を気にしてたらかっこつけちゃうし、自分らしくなくなっちゃうから、「独自」じゃないですよね、自分が昔そうだったからなおさらそう言えますね。

独自化しようと考えると「 変わったことしなきゃいけない 」って意識になると思うんですよね。

だからそんなことも考えず、自分らしく人目を気にしないでやってるほうが、アイデアも独自化されて、なんか美容院がラーメン屋やるとか、

メニューにイヤリング付けるとか、勝手に独自化していくんじゃないですかね。

ところで頼母木さん・・・

独自化って何ですか?

−知らないで話してたんですか!時間返してください(笑)

まぁ。それも松島さんらしいですね!今日はありがとうございました!

来年のハロウィンも、そしていつか出すラーメン屋さんも楽しみにしてます!

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