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ビジネスに詳しくない人でも比較的トライしやすいのが、フランチャイズの事業です。フランチャイズの場合、本部の指導を受ければ、素人でも事業を軌道に乗せられる可能性があります。ただ、実際に事業を始めるとなると、事業者自身もいろいろな知識を得ておかなければなりません。
ここでは、フランチャイズを始めるときにぜひ知っておきたい源泉徴収票について解説していきます。
人を雇ったときに必要になるのが源泉徴収票
フランチャイズで事業を始めたときには、従業員を新たに雇い入れることもあるでしょう。このような場合、1年分の給与の支払額や源泉徴収税額、社会保険料の控除額などを記載した源泉徴収票を発行する必要があります。
フランチャイズの場合、「源泉徴収票は本部から発行されるのではないか」と思っている事業者もいるかもしれません。また、「アルバイトのスタッフには不要」と思い込んでいる人もいるでしょう。
フランチャイズの事業では、雇用した従業員の源泉徴収票は基本的に事業者側で発行します。 このような事業形態の場合、本部は事業者と一体ではありません。業務の点ではサポートを受けていても、事業者は本部とは独立した立場です。したがって、従業員の源泉徴収票の発行はすべて事業者が行うのが基本です。
源泉徴収票は、給与を支払った場合は雇用形態に関係なく発行しなければなりません。給与所得者の場合、38万円の基礎控除と65万円の給与所得控除があるため、年間103万円までは税金がかからないことが多いです。このような事情から、支払った給与が103万円以下のときには、つい源泉徴収票の交付をせずに済ませてしまうケースもあるかもしれません。
ただ、給与の額にかかわらず、源泉徴収票の交付は必要です。たとえアルバイトのスタッフであっても、給与を支払った事実があるときには、源泉徴収票を用意する必要があるでしょう。
源泉徴収は事業者が本人に代わって税金を納める制度
所得税は、給与の支払いを受けた本人が納付をするのが本来のルールです。源泉徴収は、事業者が本人の代わりに国に税金を納める制度。所定の計算方法にそって算出した税金を、事業者は毎月の本人の給与から天引きして税務署に支払います。
源泉徴収が発生する場合、事業者は徴収した金額を給与支払日の翌月の10日までに税務署に納める必要があります。フランチャイズの事業で従業員を雇うときには、このような源泉徴収の仕組みや必要な手続きについてもあらかじめ調べておかなければなりません。
手続きに手こずって、源泉徴収税の納付が遅れたり納付をしなかったりすると、不納付加算税がかかります。不納付加算税は、税務署から納付漏れを指摘される前に納めれば、納税額の5パーセントの金額で済みます。一方、税務署から指摘されてから納めると、税額の割合が10パーセントに上がるため注意が必要です。
源泉徴収票は複数用意しなければならない場合がある
事業者が用意しなければならない書類は、本人に交付する源泉徴収票だけではありません。条件に該当するときには、税務署にも源泉徴収票を提出する必要があります。例えば、年末調整を行った法人の場合、1年間の給与の額が150万円を超える役員については、本人だけでなく税務署にも源泉徴収票を提出するのがルールになっています。
年間に支払った額が250万円を超える弁護士や司法書士、税理士の源泉徴収票も、同様に税務署に提出をしなければなりません。税務署への源泉徴収票の提出は、翌年の1月31日が期限です。 このほかにも、事業者は市町村への給与支払報告書の提出が義務付けられています。
給与支払報告書は、給与を支払ったすべての人が対象です。給与支払報告書の提出期限は、翌年の1月31日。この報告書は市町村が住民税を計算するときに必要になるため、期限に間に合うように早めに用意するのがベストです。
源泉徴収票の交付をしなかったときのリスク
忙しさを理由に源泉徴収票を本人に交付しなかったり、源泉徴収票を軽く考えて交付を先延ばしにしていたりすると、いろいろなリスクが生じてきます。
年末調整を受けていない人は、事業者から交付される源泉徴収票を使って前年度の確定申告をします。
すでに本人が退職しているときには、確定申告で源泉徴収票を使う可能性が高いです。源泉徴収票がない場合、税務署でもすでに納付してある税金の金額が正確に確認できないため、申告の際に問題になるケースが少なくありません。トラブルを避けるためにも、「源泉徴収票を交付してほしい」と要望があった時点ですぐに発行をするのがベストでしょう。
源泉徴収票の交付を要求しても発行してもらえないときには、本人が税務署などで相談する可能性がでてきます。相談があった場合、税務署では本人に源泉徴収票不交付の届出手続きを案内することが多いです。源泉徴収票不交付の届出手続きは、本人が給与明細書の写しなどを添付して行うことが可能。
こういった書類を提出されてしまうと、税務署から連絡がくる可能性があるのはもちろん、不正経理などのあらぬ疑いを招く一因にもなりかねません。源泉徴収票の交付を怠ったために税務調査の対象になってしまうのは、事業者としても避けたいところです。
源泉徴収票は電子交付もできる
フランチャイズの事業者が従業員に発行する源泉徴収票は、電子交付もできるようになっています。電子交付で源泉徴収票を発行する場合には、本人の承諾が必要です。承諾した相手以外には源泉徴収票の電子交付はできないため、注意をしましょう。また、電子交付を行っていても、書面での交付を依頼されたときには速やかに紙の源泉徴収票を発行することが必要です。
源泉徴収票の電子交付には、電子メールの送付や、社内LANを使った閲覧、フロッピーディスクなどの磁気媒体に記録する方法などがあります。給与の支払明細書などを電子交付している事業者は、源泉徴収票についてもデータで発行がしやすいかもしれません。
電子交付のメリットは、源泉徴収票の作成にかかる労力を大幅に軽くできることです。用紙を用意したり、枠内に細かい文字を書き入れたりする必要がなくなるため、スピーディーに交付できる可能性があるでしょう。
電子交付の源泉徴収票は、税務署から用紙をもらって確定申告をするときには使えません。ただ、インターネットを通じて申告を行うe-taxを利用した場合は、電子交付された源泉徴収票も使用できるケースがあります。ちなみに、このような源泉徴収票を使うときは、電子証明書などが必要です。
従業員のさまざまなニーズにこたえるためにも、事業者は源泉徴収票の種類や交付方法についてもあらかじめ調べておきたいところです。
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