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フランチャイズに加盟するのであっても、個人事業主として独立するということには変わりがありません。会計や税務業務においても、基本的には個人事業主と同じような日々の仕訳処理と、年度末の確定申告を行うことになります。しかしその際、フランチャイズならではの処理が必要になることもあります。
ここでは、フランチャイズ加盟店ならではの税務処理についてまとめます。
フランチャイズならではの会計処理の複雑さとは?
最初に述べたように、フランチャイズに加盟するといっても、その事業体本部に雇用されるのとは違いますから、基本的には個人事業主として自ら税務関係の処理も行っていくことになります。
しかし、フランチャイズにおける会計処理は独特な点もあります。慣れないと、複雑さを感じるでしょう。なぜならばフランチャイズ経営では、事業体本部は決算時に、加盟店に書類を送り、加盟店側の損益なども合体させて決算書を作成するからです。
つまり加盟店は、自店の分の売り上げなどを日々処理していく際に、全く好き勝手に処理して良いというわけではなく、本部の会計処理にも沿うようにしていかなければならないということになります。
また、通常の個人事業主であれば発生しえない独自の処理が必要な費用も、フランチャイズに加盟することによって生じることがあります。
フランチャイズに加盟することで発生する費用とは?
では、フランチャイズに加盟することで発生しうる費用にはどのようなものがあるのでしょうか。
一番大きなものは、「加盟金」です。これは契約金や保証金などと言った名目で課されることもありますが、要は、加盟するために支払わなければならない一時金です。
また、「ロイヤリティ」も、支払わなければなりません。ロイヤリティは、加盟金と同じく事業体本部に支払うものではあるのですが、支払う時期が異なります。加盟金が加盟の前に一時的に払うものなのに対して、ロイヤリティは契約期間中はずっと、定期的に支払い続けることになるお金です。
大きなものはこの2つですが、そのほかにフランチャイズに加盟すると、研修費、開店準備金、指導料など、さまざまな名目で費用が発生することがあります。また、フランチャイズ加盟店ではアルバイトなどを雇用することが多く、シフトもまちまちですから、給料計算も大変です。それぞれについての処理の仕方を、しっかりと覚えておくことが大切になります。
では次項より、フランチャイズならではの費用のうち代表的な「加盟金」と「ロイヤリティ」について、処理の仕方を紹介していきましょう。
加盟金の処理の方法
加盟金は前述したように、加盟する前にだけ支払う必要があるものです。しかし、そこで支払った費用は、全額をその年に計上することはできません。
なぜならば加盟金には、本部が契約期間の全てにわたって、加盟店に対して経営を指導することや、加盟店に代わってお店の宣伝を行うことに対する対価という意味合いが含まれているからです。そして通常は、契約期間は1年以上になります。ですから加盟金は、その年の費用ではなく「繰延資産」として、会計上は資産に組み入れられます。
繰延資産に組み入れられた金額はその後は、契約年数などで按分された金額が、毎年の費用として償却されていくことになります。 この考え方の前提となるのは、「契約が1年以上にわたること」、「返還されないことが決まっているお金であること」です。
この2つを備え、かつ、その年に限らず契約期間にわたって役務の提供を受けられる性質を持った費用は全て、同じように繰延資産として扱われます。技術使用料や経営指導料なども、その一つです。
また、税務処理での重要ポイントは、償却期間と仕訳項目です。償却期間については「契約年数などで按分」と先述しましたが、これは契約期間が5年以内で、その後に再び加盟金を支払うことが分かっているケースです。それ以外は5年間で償却することが、原則となっています。
仕訳項目については、「繰延資産」という名目を使用しますが、組み入れるのは資産の部です。繰延資産の部には組み入れないようにしましょう。
また、実際に確定申告などの税務手続きを行う際には、契約期間や本部が行う指導の方法や内容が、明確に記された契約書なども必要となることがあります。
ロイヤリティの処理の方法
ロイヤリティは、その金額については事業体本部が毎月算定しますので、加盟店側ではその金額を、本部に対して定期的に支払っていきます。会計上は、「支払ロイヤリティ」という科目などを作り、それで処理していく形となるでしょう。本部側では、加盟店から得られたロイヤリティ収入は、営業収入区分に計上します。
ロイヤリティで大切なのは、事業体本部が、ロイヤリティをどのような計算方法で算出するか、です。その方法には主に、「一定金額方式」「売上分配方式」「粗利益分配方式」という3つの方法があります。
「一定金額方式」は、契約時に定められた一定額を、決められたサイクルで支払っていく方法です。加盟店の売上額などは関係しません。「売上分配方式」では、加盟店が上げた売上額に、契約時に定めた料率を掛けて、ロイヤリティを算出します。「粗利益方式」は、加盟店の粗利に対して契約で定めた料率を掛けて、ロイヤリティを計算します。
日々の経理業務で大切なこと
これまで紹介してきたように、フランチャイズ加盟店として経営を行うと、通常の個人事業主としての会計知識だけではなく、フランチャイズならではの会計や税務に関する知識も必要となってきます。日々滞りなく、何かの際にトラブルとならないように会計処理していくためには、次の2つの点への留意が重要です。
一つ目は、フランチャイズに際して交わした契約書などをよく読むことです。ロイヤリティの計算方法や、決算時の処理などは、契約書などの書類に記載してあることが一般的です。また、本部からの指導の中で教えてもらえることもあります。これらで説明されている内容は、しっかりと理解するようにしましょう。
二つ目は、本部への支払いなどが発生したときには、その名目を細かく分けて処理しておくことです。例えば加盟時に、加盟金とは別に、開業指導料なども支払ったとします。これらは支払うタイミングが同じであったとしても、一緒にまとめてはいけません。必ず別個の名目で、記録を残しておくようにしましょう。
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