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社長の経営手腕が会社存続の基盤となっている中小企業などでは、信頼できる後継者に経営を引き継ぐことはとても重要な作業だといえます。事業の承継を成功させるには、できるだけ早い時期から準備に取りかかることが大切です。
ここでは、事業承継を行うのための必要事項や、メリット・デメリットについてまとめてみました。
そもそも事業承継とは何か?
会社の経営を後継者に引き継ぐことを事業承継といい、社長の重要な役目となる仕事です。今後の経営者を誰にするか、資産(地位や株式・不動産など)をどう引き継いでいくのかを、社長と後継者が話し合って決めます。似た言葉に継承があります。
これは、経営者であった人の地位や仕事・財産などを受け継ぐ意味として使われますが、承継は資産だけでなく会社の経営理念や歴史など長年育まれてきた目に見えない精神的なものも引き継ぐときに使われます。
弁護士や会計士などの専門家に依頼をすれば、社長の地位や財産などは法に則って簡単に手続きはできます。ただ、会社の伝統や社風というものは、後継者が経営者の背中を見つつ学んでいかなければ、一朝一夕で身につくものではありません。これが事業承継に時間がかかるといわれる理由です。
事業承継はとても重要
年齢的にも団塊の世代の中小企業経営者は、そろそろ引退時期を迎えようとしています。ところが、引退を考えずに高齢の経営者が会社運営を続けているというケースは少なくありません。その結果、事業承継が行えずに後継者がいなくなったり、伝承されるべき技術が途絶えてしまったり、雇用が確保できないなどの深刻な状況を招いています。
また、会社の業績と経営者の年齢についての調査では、経営者の年齢が高くなるほど収益が下がるという結果が出ています。どのような理由があるにせよ、事業承継をしないままでいると、会社の業績が悪化するだけでなく、そのような中で経営者が亡くなってしまえば、最終的に廃業に追い込まれる可能性もあるのです。
このような事態にならないためにも、事業承継はとても重要な作業なのです。後継者が親族にいない場合でも適切な対策を考えることが、その後の従業員や取引先のためになります。まだ自分は元気だから先のことと考えていても、事業承継はスムーズにいかないことが多く、早め早めに手を打っていくことが重要です。
中小企業白書(経済産業省)のまとめによると、約3割以上の企業が後継者探しを始めてから引き継ぎが終わるまでに3年以上の月日を要したと回答しています。特に近年は家の仕事を継ぐという意識が薄くなっており、必ずしも実の子どもが後継者になるとは限りません。
事業承継が長いケースでは、10年ほどかかったという会社もあります。さらに、了承を得ても、後継者に経営のノウハウを教育するとなると、想像を超える時間がかかります。
事業承継の3つの手法とメリット・デメリット
事業承継には、経営者の親族(子どもや兄弟姉妹など)が後継者となる親族内承継・経営者の親族に事業を任せるのに相応しい人がいないときに自社内の親族以外の役員や従業員に事業を承継する親族外承継(従業員などに対するもの)・親族や自社内に事業を承継する人物がいない場合に会社そのものを売買する親族外承継(M&A)の3つがあり、それぞれにメリット・デメリットがあります。
まず、親族内承継は、オーナー家としての地位を継続できるので、有事の際は会長や顧問の立場から経営に関与することができます。また、社内(従業員)や社外(取引先)から後継者として受け入れられ易く業務を円滑に承継できます。ただ、個人保証を含めリスクを引き継ぐことになり、後継者が経営者としての能力があるかどうか不安が残ったり、後継者候補が複数いる場合は親族間で揉めたりすることがあるのがデメリットとして挙げられます。
次に、親族外承継は、長期間勤務している役員や従業員であれば引き継ぎがスムーズであり、経営の安定性も確保されるのがメリットです。一方、デメリットとしては、株式を買い取る資金を調達しなければいけないことや低廉譲渡の際の課税があります。また、他の役員や従業員が嫉妬するケースもあります。
そして、M&Aは、会社の売買により創業者の利潤が最大化し、より強い事業基盤での成長が期待できるので、従業員の安定した継続雇用が確保できることや経営責任から解放されるのがメリットです。片や、デメリットとして株主でなくなったり、承継相手を一から探したり、会社の経営理念や経営方針が変わったりたりする可能性があることなどがあります。
いずれにせよ、この3つの手法で事業承継に取り組む必要があります。
事業承継を実行する前にクリアしたい3つのステップ
事業継承を実行するには、3つのステップをクリアすることが重要です。
まず1つ目に取り組むことは、会社の現状を把握・分析することです。
会社の現在の状態を理解していなければ、何を、いつ誰に承継すべきかを判断することはできません。会社の経営状況や過去の実績を調査・分析して今後の見通しを立てるとともに、資産と負債の確認・顧客や付き合いのある金融機関の整理などを行い、将来に向けた改善点や方向性を検討します。また、経営者の資産も開示することで、相続対策も検討することができます。
2つ目は、どの手法で後継者を決定するかです。
事業承継の後継者は、上述したように親族か会社に勤める社員や役員・第三者(M&Aなど)のいずれかから選ぶことになります。事業承継の方法は後継者によって変わってくるので、後継者を選ぶのにどの方法が取れるのかをまず考え、具体的に候補者をピックアップしていきましょう。
ただ、経営者だけがその気になっていても、当の本人に継ぐ意志がなければ話は進みません。また、周囲が反対するようであれば、話がこじれて長期化する恐れがあります。経営者・候補者・家族や従業員の意思を考え合わせて進めていくのが、後継者を選ぶ際には重要になります。
3つ目は、事業承継計画書の作成です。相続対策や具体的な事業承継のスケジュールが盛り込まれているので、これを作成することで一目で会社の現在の状況や将来の見通し・事業承継をするために必要なことが分かります。会社の精神や経営理念など、後継者に伝えていきたい信念や価値観なども記入できるので、丁寧に作成しましょう。
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