親子間の事業承継に注意!失敗しないために押さえておくべきポイント

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経営者の中には、「子どもが事業を継いで当然」と思いこんでいる人もいます。しかし、本人の意思を確認しておかないと、実際に事業承継を行う段階になって反抗されかねません。また、子どもに引き継ぐ意思があっても親子ならではの問題が障害となりえます。

この記事では、親子間の事業承継でありがちな失敗や注意点を紹介します。

事業承継の了解はとれている?子どもの本音に耳を傾けよう

親子間で事業承継を行うとき、まずは子どもを入社させることが先決です。修行のためにあえて他社へと就職させることもあるものの、まだ子どもが若いうちに自社へと招き入れるのが一般的です。そして、子どもに現場の雰囲気や実務を学ばせ、段階的に役職を引き上げていきます。やがて、幹部にして経営者の近くにおき、リーダーシップや人脈を引き継ぎます。

長いときは、入社してから10年以上の歳月をかけて事業承継を行うこともあり、子どもの成長は企業の将来と密接に関係しているのです。

ところが、親は事業承継を行っているつもりなのに、子どもがまるでその気がないケースも珍しくありません。その場合、息子は視野が狭く、目先の作業だけに集中しがちです。自分が経営者になるイメージを持っていないため、一従業員の立場でしか物事を考えられないからです。さらに、本人のやる気がない場合は成長も遅く、事業承継以前の問題だといえます。

このような問題が起こる原因として、「親子間のすれ違い」が挙げられるでしょう。はっきりと口に出して「会社を継いでほしい」と言っておかないと、子どもはその気にならないこともあります。「就職先が見つかってよかった」程度の考えしかなく、大きな目標を抱いてくれないのです。

親からすれば、「自分の会社に入れた時点で事業承継は始まっている」と言いたいところです。しかし、子どもの本心は話をしなければわかりません。その耳で「会社を継いでもいい」と聞いていない限り、思い込みは禁物です。事業承継を始める際には、親子でじっくり話し合う機会を設けましょう。そして、親の願望を一方的に押し付けるのではなく、子どもの本音を引き出すことが肝心です。

親子の事業承継はなぜ失敗する?よくある事例集

多くの会社が親子間の事業継承に成功しているのは事実です。しかし、失敗しているケースも決して無視できません。ありがちな事例を知っておくと、今後の事業承継に役立ちます。

まず、「兄弟がいる」場合には失敗が起こることもあります。事業承継とは、財産の贈与や相続も兼ねている作業です。そのため、兄弟間で相続権をめぐり、争いが生まれがちです。親から指名された後任に納得がいかないと、ほかの子どもが反抗することもあるでしょう。こうした家族間の問題は事業承継を遅らせ、効率的な引き継ぎを邪魔します。

次に、親子ゆえの「近すぎる距離感」も問題です。部下に対して事業承継を行う場合、経営者は客観的に必要事項を説明できるでしょう。しかし、親子間では気恥ずかしさが勝ってしまい、丁寧に説明できなくなることもあります。逆に、子どもを溺愛するがあまりきびしく振舞えない経営者もいるでしょう。

いずれにせよ、私情をはさんで行う事業承継は円滑に進みません。子どもに最低限のスキルが受け継がれないまま、代替わりの日を迎える可能性も出てきます。

そして、「従業員の反感」です。もしも子どもに十分な能力があり、やる気もともなっていたとしても反感を抱く従業員は出てきます。彼らからすれば、自分たちが叩き上げで積み重ねてきたキャリアの上に、あらかじめ決められていた後任者が座るのは気に入らないものです。

特に、幹部や管理職クラスの従業員から敵意を持たれてしまっては、事業承継は上手くいきません。最悪の場合、不満のある従業員が他社に引き抜かれて、企業力が落ちる危険すら生まれます。すべての従業員の理解を最初から得たうえで、親子間の事業承継を実現させるのは至難の業でしょう。

前向きに事業承継を行うには?親子間の会話が大切

親子間で前向きに事業承継をするなら、親子間での会話を大切にしましょう。子どもが大学を卒業するタイミングなど、早い段階で意思を確認します。もしも「継ぐ」といっていたとしても、親に気をつかっていた可能性は捨てられません。また、後々になって翻意することもありえます。何回も話し合いを行い、気持ちが変わらないと判断してから本格的な事業承継へと移ります。

なお、子どもが複数いるときは全員で会議を行うのもひとつの方法です。親の一存で後任を決めてしまうと、ほかの子どもの不満が爆発しかねません。親子関係にも亀裂が生じます。全員が納得する形で後任者を決められたら、後腐れなく事業承継に集中できます。

次に、子どもを自社へと招きいれてからは「ひいき」をしないようにしましょう。後任者であるからには、経営術を手とり足とり教えるのは当然です。しかし、時期が来るまでは子どもも一介の従業員に過ぎません。たとえ後任者であっても、あからさまな身内びいきは不満を生み出します。社内での距離感には気をつけ、現場で特別扱いをしないようにしましょう。適度な距離を保ったほうが、子どもは親と話しやすくなることもあります。

そして、「子どもに任せる勇気」を持つことが大切です。親子だとつい、子どもの言動が気になってしまうところです。ほかの従業員なら聞き流していた意見にも、思わず反対したくなるでしょう。また、子どもが心配でいつまでも口を出し続ける経営者もいます。ただ、そのような状態が続くと子どもは一向に経営術を覚えられません。役員や取引先に対する威厳も保たれず、求心力も失っていきます。

事業承継では時間が経つにつれて、徐々に子どもの判断を尊重するようにしましょう。いつかは、子どもも1人きりで会社を背負って立つことになります。親の影響力が強すぎると企業の未来を損なってしまうので、口出しは控えることが肝心です。そうすれば、子どもも前向きにリーダーシップを学び、自立していきます。

親子間の事業承継ではコミュニケーションを大切に!

会話がないまま子どもを後任者に指名してしまうと、事業承継は上手くいきません。子どもが心からやる気を出してくれるからこそ、後任者として育てられるのです。親子間の事業承継では子どもの意思確認をしっかり行いましょう。

そして、子どもの能力を信用し、徐々に親が身を引いていくことが重要です。

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