事業承継と事業継承の違いは?正しく覚えて事業を後進に引き継ごう

長く会社経営を続けていると、事業の引き継ぎという課題に直面します。ちなみに、引き継ぎは「事業承継」や「事業継承」と呼ばれます。両者の響きはよく似ているものの、微妙な違いがあるので混同しないようにしましょう。

この記事では事業承継と事業継承の違いや、失敗しないために意識するべきタイミングについて解説します。

似ているようで別!事業承継と事業継承の違いとは?

事業承継と事業継承はいずれも「企業が経営体制を後任者に引き継いでいく」作業を意味します。そのため、両者を同じ意味として使っている人も少なくありません。しかし、実際には細かな定義が異なるので、混同していると引き継ぎの意味がぶれてしまいます。また、対外的な発表でも恥をかきかねないので、正しく使うようにしましょう。

まず、「事業承継」とは前任者から「地位」「業務」「心構え」などを引き継ぐことです。承継の対象になるのは、実体のある物というよりも精神性だといえるでしょう。前任者の理念を引き継ぎ、社風を維持することは長く愛される企業に不可欠です。事業承継は段階的に後任者を教育し、経営者に相応しい器にするための過程でもあります。

一方、「事業継承」は「役職」「経営権」「資産」などを引き継ぐことです。事業承継と比べると、対象になる物は具体的です。法的な手続きや幹部会などを通して、後任者に代表権を移行させていきます。書類上の経営者を書き換えたり、株式を譲り渡したりするのは継承に含まれる作業といえるでしょう。

事業承継も事業継承も、経営者を代替わりさせるときには欠かせません。精神性と役職、いずれもそろって引き継ぐことにより、正しく企業の実態が存続します。なお、事業承継と事業継承には重なる部分も多く、計画的に進めていく必要があるでしょう。

事業承継と事業継承はタイミングが異なる!適した時期を見極めよう

多くの会社が、準備不足のまま事業承継を行ってしまいがちです。なぜなら、事業承継のタイミングを誤っているからです。

経営者が健在で実権を振るっている間は、多くの幹部が「会社が安泰だ」と思ってしまいます。また、経営者自身も後任に道を譲りたがらないため、どうしても事業承継は後手を踏んでいきます。ただし、そうなると経営者が年を取ったり、健康状態を悪化させたりしたときに後任者が育っていない事態を招くのです。事業承継は、必要に迫られてからだと遅い作業です。前任者が健在であるうちから少しずつ準備を進めていきましょう。

事業承継では余裕を持って、5~10年ほどかけて後任者を育てるのが理想です。これほどまでに時間がかかるのは、事業承継が「実態のないもの」を引き継ぐ作業だからです。代替わりしても企業力を落とさないためには、前任者の社会的信用や人脈も後任者に引き継がなければいけません。

また、経営者に必要な判断力やリーダーシップも後任者に承継していきます。これらの要素は短期間で引き継げるものではなく、時間をかけて前任者自ら教え込まなくてはならないのです。

一方、事業継承は事業承継よりもタイミングが遅くてかまわない作業です。事業継承では、ほとんどが事務的な手続きとなります。名目さえ前任者から後任者に書き換えれば完了するものも少なくありません。

ただし、作業内容は多いので慌てて継承を行っても漏れが出るリスクが大きいでしょう。資産や株券など、引き継ぐものリストを常に管理して、落ち着いて作業にあたることが重要です。

事業承継と事業継承のどちらで事業を引き継ぐべきか

結論を述べれば、事業承継と事業継承はどちらも疎かにしていい作業ではありません。理想としては、両者を大切にして事業を受け継いでいきたいところです。なぜなら、事業承継と事業継承はいずれも異なる特徴を備えているからです。それぞれにメリットとデメリットがあるので、あわせて行なうことで作業は補完されます。企業力を損なわず、後任者と世代交代ができるでしょう。

まず、事業承継の良さは「一貫性のある企業になる」ことです。経営者が変わったとたん、社風や方針が変わる企業では従業員が不安になってしまいます。また、取引先や出資者からの信用も下がっていくでしょう。事業承継を徹底することで、代々受け継がれてきた企業理念は残ります。経営に迷いがなくなり、過去の事業と矛盾しない未来へと突き進んでいけるでしょう。

ただし、事業承継だけに力を入れていると事務作業が疎かになります。精神性を重視するがあまり、代替わりの手続きを先延ばしにしないことが大切です。

次に、事業継承の良さは「代表権が正式に移行する」点です。事業継承を経て、後任者は経営者を名乗れるようになるので社内での発言力が増します。株券などの贈与、買い取りが完了するのも事業継承の後です。ただし、事業継承だけを行っても、後任者にリーダーとしての資質が宿るとは限りません。事業承継の中で後任者を鍛え、事業継承によって正式に経営者を替えるのが目指すべき流れです。

事業を受け継ぐタイミングは重要!失敗しないための注意点

いざ事業承継を行うなら、前任者が存在感を示しているうちから始めましょう。特に、前任者が高齢の場合は万が一の事態も考えて急いだほうが賢明です。急いで代替わりをする必要こそないものの、後任者の教育は時間をかけて行うことが重要です。前任者が精力的に活動している時代なら、理想的な経営者像を後任者に間近で見せられます。

また、前任者から後任者を各所に紹介することにより、「次期経営者」として認知してもらえます。急に知らない人間が経営者になるよりも、名前が知られている人間が後を継いだほうが社会的な影響は少ないでしょう。 ただし、後任者選びは事業承継における注意点です。血縁者を後任者に指名する場合、急に幹部職を与えては従業員の反感を招きます。しっかりと現場を経験させて、時期を見てから幹部に引き上げるのがコツです。

次に、事業継承の注意点は「シミュレーションを怠らないこと」です。事業継承は事務作業が多いので、実際に代替わりが行われる段階になってから準備することもあります。しかし、そこでトラブルに遭遇して上手く対処できないと、会社に損害が出てしまいます。代替わりによる「相続税」や「贈与税」に関しては、事業承継税制などを駆使して猶予の道を調べておきましょう。

また、前任者が亡くなった場合、遺族が遺留分を請求してくる可能性も考えて事前に話をつけておくのが得策です。

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