有効に活用しよう!自治体による事業承継の支援制度とは

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事業承継はしっかりした手順を経て行わねばなりませんが、それには大きな労力がかかります。また、さまざまな費用が発生することもあり、経営者にとっては大仕事となるでしょう。そこで、便利なのが自治体の支援制度です。自治体の支援制度を活用すれば、よりスムーズに事業承継を行える場合があります。

この記事では、自治体による事業継承支援の制度例や支援内容などを紹介します。

経営承継円滑化法に係る制度の窓口業務

事業承継に関して、「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」があります。この法律により認定を受けると、事業承継に関するさまざまな支援を受けることができます。以前は経済産業省の管轄である各地の経営産業局が窓口となり、認定の申請や認定後の報告などの受付が行われていましたが、平成29年4月から各都道府県に窓口が変更されました。

都道府県が窓口となる制度の1つに、税制に関する優遇があります。これは、法人による事業承継の場合は非上場企業の株式など、一方個人の事業承継の場合は事業用資産などを、後継者に贈与・相続したときに発生する贈与税・相続税の納税の猶予、または免除を受けることができるという制度です。

事業に関連する資産は金額が大きいことから、引継ぎに際し発生する税金も高額になりがちです。税制の優遇が受けられれば、事業の経営者が変わる節目のタイミングに発生する費用負担を、大幅に抑えることができます。

さらに、もう1つの制度が、事業承継にかかる資金の融資です。この制度を利用することで、事業承継を行う代表者個人が、事業承継にかかる資金について、融資を受けることができます。事業承継を行う場合、さまざまな費用が発生する可能性があります。

例えば、前述した税金などの他、散らばった株式を買い集めるための費用が発生することもあるでしょう。あるいは、経営者の交代が事業の業績に影響し、取引先への支払いや従業員への賃金支払いが困難になることもあるかもしれません。

そこで、経営承継円滑化法の認定を受ければ、このような事業承継に必要な資金を、融資を受けることによってまかなうことができるのです。なお、これらの税制・融資に関する制度は、認定も都道府県において行われています。

事業承継の相談窓口の設置

事業承継を行おうと考えたとき、実際には何から始めれば良いのか、わからないことも多いのではないでしょうか。そんなときのサポートのため、自治体で事業承継の相談窓口を設けている場合があります。

事業承継と一口に言っても、その内容は多岐にわたります。事業の内容に関する引継ぎ、事業に関する資産の引継ぎ、後継の育成などがあり、中にはある程度の時間をかけて行わなければならないこともあります。 事業承継の相談窓口では、そんな経営者の事業承継に関する疑問や悩みに答え、スムーズに事業承継が行えるようサポートする役割を担っています。

また、事業承継に関して便利な制度や補助金などのアドバイスももらえます。事業承継で何から手を付ければ良いのかわからないという方は、まずは自治体の窓口に相談してみましょう。

事業承継を行う企業に対する融資制度

企業で事業を行うとき、資金が不足している場合は、他機関から融資を受け、資金調達をする方法があります。融資はどのような企業でも無条件で受けられるわけではなく、申し入れの条件を満たした上で、必要書類を揃え、審査を受けることが必要ですが、審査結果によっては、融資を受けられないことも少なくありません。

例えば、自治体が設けている融資制度では、事業承継を行っている企業を、特定の融資メニューの適用対象にしている場合があります。中小企業庁の経営承継円滑化法による認定を受けていることなど、条件もありますが、条件をクリアすれば申し入れできる融資メニューが増えることになります。

事業承継を行うことにより、後継で新しい事業を展開したり、事業の拡張を図ったりすることは十分にあり得ます。その際、融資を受けられれば、新たな事業をスムーズに進めやすくなります。したがって、承継後の事業に関する資金調達を考えている場合は、事業承継が対象となる融資制度を利用してみるといいでしょう。

事業承継のための補助金

自治体によっては、事業承継に係るさまざまな経費の一部を助成する、補助金制度を設けている場合もあります。

例えば、事業承継にあたり、税理士・行政書士・経営コンサルティングなど専門家の派遣を行う場合の経費や、事務所の増改築などを行う場合の経費が対象になります。 また、事業承継により新しい設備の購入や既存設備のメンテナンスが必要となった際の費用、広告やHPの制作を行う費用、後継者が法人を設立する際に発生する費用、そして従業員を雇用するための人件費などを助成対象とする場合もあります。

経費のどのような範囲まで助成の対象になるかは、補助金制度を採用している自治体によって異なります。詳細はそれぞれの自治体に確認しましょう。

中小企業と起業家のマッチング

事業承継をしたいとは考えているものの、後継に関する問題を抱えているため、なかなか準備や実際の行動に移すことができない方も少なくないでしょう。事業を後継に引き継ぎたいと思っていても、後継がいなくては承継ができません。少子化や人手不足など、人口に関する問題を抱える地域では、後継不足に悩み、事業承継を実現できない経営者もいます。

一方、起業家の中には、自分で1から事業を起ち上げたいと考える方の他、既存の事業を受け継ぎたいと考える方もいます。 そこで、自治体において、後継不足に悩む経営者と起業家をマッチングする取組も行われています。

このような取り組みにより、経営者は事業を廃業することなく継続でき、起業家はすぐに事業に携わることが可能です。一方、自治体は地域の経済の活性化につなげることができます。そのため、経営者・起業家・自治体の3者間でWin-Winが成り立つというわけです。後継者がおらず、事業承継ができない経営者やこれから新たに起業を考えている方は一つの方法として検討してみるのも良いでしょう。

このような事業承継に関する支援制度は、全ての都道府県で行われているものや、自治体独自で行っているものなどがあり、内容もさまざまです。支援制度をうまく活用すれば、より少ない負担でスムーズに事業承継を行うことも可能です。事業承継の準備として、まずは事業を営む地域の自治体がどのような支援制度を設けているか、調べることから始めてみましょう。

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