スムーズな事業承継を実現するためにやることは?5つの手順を覚えておこう!

目次 [非表示]

日本の労働市場では人手不足が深刻化していますが、その一因となっているのは高齢化による団塊の世代の退職です。しかし、高齢化で問題が起こっているのは、人手不足だけではありません。中小企業の経営者の多くは高齢化が進み、事業承継を余儀なくされている会社もたくさんあります。

そこで、この記事ではスムーズな事業承継を進めるための5つの手順を紹介していきます。

事業承継の手順その1:経営状況や問題点を明確にする

事業承継でまずやることは、自社の経営状況や資産状況をきちんと把握し、問題点を明確にすることです。事業承継は後継者や第三者に会社の運営を任せることになります。問題点を抱えたままの企業では後を継ぎたいと考える人材が出てこないかもしれません。また、第三者に経営を譲渡する場合にも、問題点を解決して自社の魅力を向上させておけば有利な条件で交渉が進む場合があります。後に残される従業員たちのためにも、自社のおかれている状況をしっかりと分析し、問題点を解決しておくことは重要です。

具体的にやることは、「経営者個人と会社間の賃借関係」「損益計算書や貸借対照表などの決算処理手続き」「自社株の数と評価額」などを確認することです。また、「自社商品の売上や主力商品」「自社が保有している知的資産」を分析しておくことで、問題点が浮かび上がってくることもあります。特に自社が保有しているノウハウは売上と違って、数字では表せない価値を有しているケースも多いです。整理したうえで客観的に説明できるようにしておきましょう。

事業承継の手順その2:問題点の対策を実施する

自社の状況を確認できたら、次は問題点の対策を実施します。たとえば、「主力商品の拡充、品質の向上に努める」「人材育成などの人的資源の強化」などが挙げられます。具体的な取り組みについては会社によっておかれている状況が異なるので一概にはいえませんが、大切なことは従業員も巻き込んで行うことです。なぜなら、事業承継完了後に経営者がいなくなっても、継続して仕事をこなしてくれる人材を作っておかなければならないからです。経営者のみで密室で問題点を解決することのないようにしましょう。

ただし、問題点を解決するためには、資金が必要なケースもあります。経営基盤の弱い中小企業では資金を新しく用意することが難しい場合があるのも事実です。そのようなときは国の補助金などを活用するとよいでしょう。なお、問題によっては解決までに長い時間のかかるものもあります。そのようなときは、焦らずに事業承継が完了するまでに解決できればよいと考えるとよいです。問題点の解決にある程度の目途がついたら、次以降の手順と並行して進めても大丈夫です。

事業承継の手順その3:事業承継方法を選定する

問題点をある程度解決できたら、いよいよ事業承継の方法を選定します。事業承継の方法は大きく分けて「親族内承継」「親族外承継」「M&Aなどで他の企業に事業を引き継いてもらう方法」の3つです。親族内承継のメリットは「オーナー家として存続していける」「基本的に社内外の関係者から受け入れられやすい」「後継者を早い段階で決められる」が挙げられます。周囲の関係者に比較的反対されにくい事業承継の方法で、後継者の人材育成に早い段階から取り組める点もメリットです。

ただし、デメリットとしては、「後継者として十分な素質を持っていない場合がある」「相続人が複数いる場合は、後継者のみに経営権を集めることが難しい」点が挙げられます。ポイントとしては、後継者となる人物を早くから見極めて育成しておくことです。また、並行して社内外の関係者に理解を得ておけばスムーズな承継が可能になるでしょう

親族外承継のメリットは、「社内外から広く後継者候補を募ることができ、優秀な人材に後を任せられる」「業務を分かっている人物を指名すれば人材育成の手間がかからない」です。一方で、デメリットとしては「後継者に株式を取得させるための資金が必要」「経営者の債務や担保を後継者に切り替えるのが難しい」ことが挙げられます。

成功させるためのポイントは金融機関などと交渉を行い、「担保設定や債務保証でできる限り後継者の負担を減らすこと」です。また、親族内承継と比べて社内外の関係者の理解を得にくい点にも注意しておかなければいけません。

M&Aなどで他の企業に事業を引き継いでもらう方法のメリットは、「後継者となる人物が見つからなくても事業を存続させ、従業員の雇用を守れる」ことです。また、後を引き継ぐ企業によっては、すでに経営ノウハウを豊富に持っている場合もあります。そのため、比較的短期間での事業承継が可能である点や、さらなる事業の拡大も期待できるでしょう。デメリットとしては、「買い手が見つからなければ事業承継できない」「事業承継終了後は、経営に口を出すことが難しくなる」ことです。

ポイントとしては「問題点を解決しておき、企業の魅力を高めておく」「必要に応じて税理士や弁護士といった仲介機関に相談すること」が挙げられます。一般的にM&Aというと悪いイメージを持っている人もいますが、実際には従業員の雇用を守るために有効な事業承継の方法です。後継者が見つからない場合には検討してみるとよいでしょう。

事業承継の手順その4:具体的な事業承継計画を策定し実行する

事業承継の方法を考えたら、具体的な事業承継計画の策定を始めます。事業承継計画では企業理念の明確化や中長期計画目標を決定し、後継者の承継時期や承継における基本方針などをまとめましょう。計画のスパンは業種や取り巻く環境によっても異なりますが、一般的には5年~10年程度です。

計画書に盛り込む具体的な項目としては、後継者の育成や経営の引継ぎ期間、従業員個々の役割や株式の譲渡方法などが挙げられます。また、必要に応じて資金借入のための金融機関対策や相続税や所得税といった税金対策などを検討しておくとよいです。

なお、親族内承継や親族外承継を選択した場合は、事業承継計画を策定した後で代表者の交代へ向けて具体的な行動に移ります。ただし、M&Aなどで他の企業に事業を引き継いてもらう方法を採用する場合は、事業承継計画を策定する必要はありません。その場合は、M&Aのマッチングをすることになります。

事業承継の手順その5:M&Aのマッチングと契約の締結

M&Aで事業承継する場合、事業承継計画は策定せずに具体的な譲渡先を探す手続きに入ります。M&Aで買い取ってくれる企業を探す方法にはさまざまなものがありますが、一番無難なのは仲介機関に依頼する方法です。たとえば、地域にある事業引継ぎ支援センターや取引先の金融機関などが挙げられます。

M&Aの実務に関しては仲介機関に委託できるので、経営者が特段行うことはありません。ただし、「社名は残して欲しい」「従業員の雇用を守って欲しい」など、M&Aにあたっての基本方針を説明する必要はあるので、よく考えておきましょう

M&Aのマッチングが終わって条件の良い交渉相手がいれば契約を締結し、実際の事業承継手続きへと移ります。M&Aは経営者本人が交渉することも不可能ではありませんが、法律の専門用語が飛び交うこともあり、実際には難しい場合が多いです。また、M&Aの買い手と売り手が直接交渉するよりも、仲介に入ってくれる人がいるほうが交渉はスムーズに進むケースもあります。難しいなと思ったら仲介機関へ依頼しましょう

おすすめの関連記事

後継者不足による事業承継問題の現状と解決策について

M&Aって一体なに?会社に係るM&Aを基礎知識から理解しよう!

資金調達の手段「ファクタリング」の活用方法とその仕組みを分かりやすく解説

2019年1月更新/10種類以上の資金調達の種類、方法、メリット、デメリットまとめ

法人の事業譲渡とは?~メリット・デメリットと手続き~まとめて解説

事業承継・会社/企業の承継って何?承継と継承の違いも合わせて解説

事業承継にかかる贈与税や相続税の負担が軽減される?後継者は知っておきたい特例事業承継税制

スムーズに事業承継を行うために考えておくべきことはどのようなことか?

株式移転は複数企業の事業承継を希望する経営者に最適な方法です!

事業承継は先代経営者と後継者の問題だけではない。家族ともめやすい遺留分問題とは?

 

関連記事