運送会社の事業承継を成功させよう!運送業界の現状と事業継承の問題解決について

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近年後継者不足により、廃業を考える企業や経営者が増えてきています。運送業界も例外ではありません。経営者の高齢化や後継者がいないことにより、会社の事業承継をどうするかということが話題となっています。

今回は運送業界の現状と抱える問題、そして事業承継を成功させるためのポイントなどについて紹介していきます。

運送業界の現状と抱える問題

運送業界というのは簡単にいうと物を国内外へ運ぶ業界のことをいい、その手段はトラック、鉄道、航空機、船などがあります。運送業界の中でもトラックの割合が多く、昨今のインターネットの普及によりオンラインでの売買が急増したことから需要が拡大しています。

しかし法改正の影響や競争過多により、需要が拡大しても稼ぐことができない過酷な状況となっているのが現状です。十分な利益を上げられず資金繰りに苦しむ運送会社が増え、運送業界の営業利益率も赤字傾向が続いています。 そのため運送業に関わる人の多くが低賃金・長時間労働という環境で働き、若年層の新規雇用も少なく人手不足が問題となっています。

運送業界は前述したインターネットによるオンライン売買の急増に伴う仕事量の増加も人手不足に拍車をかけているのです。増えすぎた仕事量に対応しきれない要因として、人手不足の他にトラックの積載効率の悪さがあげられます。

積載効率とはトラックの最大積載量から実際の輸送量を割った数値です。現在のトラック1台あたりの積載効率は約41%で人手不足に加え、トラック自体は荷室の半分以上が空の状態で走っているのです。

また運送業界では荷物を受け取ったり納品したりするための待ち時間が長時間化している問題や、再配達問題が悪循環に拍車をかけているのです。

運送業界を営む企業はほとんどが中小企業です。これらの問題に加えて中高年層の労働者が多く、経営者やドライバーの高齢化も進んでいます。

運送会社と事業承継の種類

昨今運送業界全体の高齢化に伴い、事業承継へのニーズが高まってきています。

事業承継には主に経営者の子どもや孫、甥姪といった親族に事業を承継させる「親族内承継」と、従業員や役員に事業を承継させる「親族外承継」、そして他社に株式を譲渡したり事業そのものを譲渡したりする「M&A事業承継」があります。

運送業を営む企業は多くが中小企業のため、子どもや周囲の親戚に事業承継する場合がほとんどです。親族内承継には会社の理念がしっかりと引き継がれ従業員からも受け入れられやすいことや、取引先や融資先との信頼関係も継続されやすいというメリットがあります。 しかし少子高齢化が進んでいる現在、親族内に後継者となる人間がいないというケースが多くなってきているのも事実です。

その場合は会社の役員や従業員に事業を承継する親族外承継が考えられます。親族外承継は後継者となる役員や従業員が会社の強みや弱点を理解しているため、これから先会社が成長するためには何をするべきかを的確に判断できるというメリットがあります。しかし後継者となる人物に、株式取得に必要な資金力がなければ会社を引き継がせることができないというデメリットがあるのです。

昨今の運送会社の現状などを含めると親族や従業員に後継者がいない場合は、残りのM&Aによる事業承継を選択するしかなくなります。

M&A事業承継について

自社の株式を他社へ売却する「M&A事業承継」には3つのメリットがあります。

まず後継者候補となる企業を全国にある企業から幅広く探せるというメリットです。自力で相手企業を探すのは困難かもしれませんが、仲介会社が存在しその会社に探してもらうのが一般的です。また仲介会社は相手探しから契約締結までの流れをサポートしてくれるので安心できます。

2つ目のメリットは会社売却による創業者利潤を獲得できるという点にあります。親戚にも従業員にも後継者がいない場合は廃業という選択肢もあり、廃業すると税務処理の依頼費用や様々な物の処分費用が必要です。 しかしM&Aを用いて事業承継すると、これらの費用や手間が不要となるのです。また会社を売却した資金で新規事業を立ち上げたり、老後の生活資金に充てたりすることができます。

3つ目のメリットは事業の継続と、更なる発展を期待できるという点です。廃業すると費用や手間の面だけでなく、長年培ってきた会社としてのノウハウが無駄になってしまいます。また付き合いの長い顧客や取引先との契約が打ち切りとなり、さらには従業員が職を失うことにもなって内外共に多大な迷惑をかけることになります。それらをM&A事業承継によって守ることができるのです。

一方M&A事業承継によるデメリットもあります。それは時間とコストがかかってしまうことです。M&Aは最低でも半年、長ければ1年半以上かかってしまう場合があります。また手続きを行う際に発生する費用や仲介業者への報酬など、ある程度のコストがかかってしまう事も念頭に置いておくできでしょう。

事業承継成功のポイントは?

事業承継を成功させるポイントですが、まず大切なのが事業承継について早めに考え行動を起こすことです。事業承継には後継者選びや様々な手続きに時間がかかります。健康な経営者でも70歳までには完了することが大切です。

次に後継者を選出する上で大切なのが経営方針と相性です。事業承継すると会社の経営権が移動します。会社の大小にかかわらず経営方針を変更するのは困難で無理に変更すると内部分裂などが起こり、経営が破たんしてしまう可能性もあるのです。

また相性というのは、主に後継者が会社の経営理念を続行できるかどうかです。経営理念に賛同できない相手が後継者になってしまうと、これも会社経営に支障をきたす可能性があるのです。

次にM&Aによる事業承継を成功させる最大のポイントは、なるべく希望条件が合う会社を選ぶということです。なかなかすべての条件が一致することはありませんが、例えば自分の会社にいる従業員のその後の雇用などは最低限必要なものとなります。初めにこれだけは譲れないという条件と提示すると良いでしょう。

それぞれの会社に合った事業継承をしよう!

一言で運送会社といっても、それぞれの会社によって状況や環境が異なります。事業承継も、その会社に合った方法ですると良いでしょう。

会社の将来や従業員のためにも後回しにせずになるべく早い時期から事業承継について考え、行動することが大切です。

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