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2015年に中小企業の事業承継に関する調査を日本政策金融公庫総合研究所が行ったところ、主に中小企業を中心とする経営者の年齢のピークは65歳から70歳となっていることが分かりました。2020年頃には、数十万近い団塊世代の経営者が引退すると予想されていますが、ほとんどの企業で事業承継が行われていない・考えられていない状態です。
事業承継問題が深刻化している
2016年に中小企業庁が、過去10年間の中小企業経営者の承継について調査を実施したところ、会社の従業員や社外から後継者を選ぶケースが60%以上になっており、親族内での承継が激減しているという結果が出ています。円滑に事業承継を進めることが企業を存続させるために不可欠なのは言うまでもなく、親族外も視野に入れた後継者選びを促進していくことが少子高齢化が進む現代において必要です。
企業経営者が高齢になれば、投資などをリスクを回避するために避ける傾向があります。一方、会社を若手の経営者に任せると、投資意欲が高まり売り上げが向上しているという調査結果も出ており、企業の成長という観点からも計画的に事業承継をすることはとても重要になっています。
中小企業で経営者が60歳を超えている場合50%以上が廃業を考えており、その中でも事業を自分の代で終わらせるつもりだと個人事業者の約70%が回答しています。
廃業の理由として、38.2%の人が初めから自分の代で終わろうと思っていたと回答し、27.9%の人が将来性がないことを挙げています。その他に、子どもがいない・子どもに継ぐ意志がない・適当な後継者がいないなどの理由で、28.6%の人が廃業を考えていることが分かりました。
廃業予定の企業の中には、他の会社よりも良い業績を上げていている・現状を維持できると考える経営者が4割もいますが、事業承継を経営者が行わなければ従業員だけでなく、会社が長年培ってきたノウハウや技術も失われてしまうことになります。
企業経営者が70代や80代の高齢になっても、50%以上の人が後継者選びや事業用資産・株などの整理が終わっていないと回答しています。後継者を選ぶ相談相手として、経営者の36.5%がいないと回答しています。
その理由として、80%近い人が相談しないと決めていた・自分で何とかできると思った・とても解決するとは思えなかったと答えており、抱えている問題を周囲になかなか打ち明けられない経営者の苦悩が浮き彫りになる結果となっています。
事業承継問題を相談したケースでは、90%近い経営者が顧問税理士や公認会計士・社内役員・親族など会社を一緒にもり立ててきた仲間に相談しており、外部の金融機関や経営者仲間・コンサルタント会社などに相談するケースは極端に少なくなっています。事業承継問題はデリケートな部分なので、情報が漏えいすることを心配する経営者が多いことがうかがえます。
その他にも、身近な支援機関は専門知識を持っていないことなどから苦手意識を持つ人が多い傾向にあり、相談する経営者はわずか0.4%にとどまっています。それぞれの支援機関が経営者の求めに応じて個別に対応はしていますが、支援機関同士の連携が図られていないことが事業承継問題を円滑にできない理由として挙げられます。
事業承継で後継者に身に付けてほしい能力とは?
事業承継はまさに企業の転換期であり、後継者が会社を切り盛りするには、学生時代に習った経営学や現場の実務だけではどのポイントを押さえて何をすれば良いのかが分かりません。後継者が事業を承継する場合、身に付けておく能力は大きく3つあります。経営と実務とリーダーシップです。
まず、経営能力ですが、瞬時に時代の流れを読み取り、新規事業を立ち上げる手腕が求められます。後継者を決める前にその能力を見極め、必要に応じて経営に関する知識を外部の教育機関などで学んでもらうことが大切になります。
次に必要なのは、実務能力です。会社の事業内容のノウハウを熟知していることはもちろんですが、提案・事務・営業力など内容は多岐にわたります。実務能力に優れた経験者から指導を受けたり、社内のいろいろな部署で業務経験を積むことも有効です。
最後に、経営者としてなくてはならない能力にリーダーシップがあります。会社は、経営者一人が頑張っても成長はできません。社員や取引先に信頼され、統率していくことが重要です。後継者を選ぶ際には人望が厚い人を選ぶことも重要です。
経営者の願望だけでは成功しないことも少なくない
経営者が高齢である場合、事業を長く続けているほど後継者を親族の中から選びたいと考えるケースが少なくありません。ただ、親族の中に後継者に相応しい人物がいない場合、あまりに固執しすぎて経営が傾いてしまっては元も子もありません。
経営者は常に、後継者に適した人物が見つからない場合、会社やそこで働く人たちはどうなるかを考えなければいけません。大切に育ててきた会社を親族に継がせたい気持ちは理解できますが、初めから選択肢を狭めるのではなく、後継者候補の意思や能力をしっかりと見定め、会社にとって一番メリットが大きい方法を選ぶことが重要です。
後継者として未熟と感じたら、事業計画書などを通して後継者を教育することが重要
後継者候補が決まっているのなら、事業を承継する前に厳しく教育することは必須のプロセスです。後継者も教育なしにいきなり会社を任されたら、何から始めて良いのか分からずにパニックになります。そんなことにならないために、しっかりとした事業計画を作らせ、経営者などが経営のシミュレーションを一緒に行い教育することが大切です。
計画書の中から問題点をピックアップしていくと、実際の実務でなにをするべきかを幅広く考えることができるようになります。
後継者選びが上手くいかない場合、事業承継支援サービスなど第三者機関へ早めに相談することが大切
後継者に悩む中小企業の経営者は、事業譲渡を円滑に進めるために早めに事業承継支援サービスなどの第三者機関へ相談することが大切です。
事業承継問題が深刻化する中、中小企業庁は事業承継支援センターの全国展開を始めています。2016年度の実績として、430件の事業承継が実現しています。
上述したように、第三者機関への相談を情報漏えいなどを懸念してためらう経営者は少なくありません。ただ、事業承継をM&Aなどの手法でするとなるとさまざまな準備が必要で、専門家の手を借りなければどうしてもスムーズに進めることは難しくなります。また、後継者を壌渡する会社を決めてから探すとなると、かなりの時間を必要とします。
好条件で会社の未来を託すためにも、事業承継問題で悩んだら経営者は早めに第三者機関へ相談するほうがメリットは大きいです。
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