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せっかく大きくなった会社でも、後継者がいなければ終わるしかありません。また、後継者が見つかった場合でも、引き継ぎ作業をしっかり行わないと企業力が落ちてしまうでしょう。つまり、事業承継は会社の存続を左右する重大な転機だといえます。
この記事では、事業承継の意味や具体的に発生する作業について解説していきます。
事業承継とは後継者に代表権を譲り渡すこと
一般的に、事業承継とは後継者に会社の代表権を譲り渡すことを意味します。特に、会社の理念や経営者としての資質など、精神的な部分を指して使われる場合が多い言葉です。法的な引き継ぎの手続きに関しては「事業継承」と呼ぶことが多いものの、両者は作業が重なる部分も多いので、ほとんど同じ意味で使われています。
事業承継は前任者が積み重ねてきたキャリアを後継者に引き継がせる作業なので、即座にできるものではありません。そのため、5年から10年ほどの歳月をかけて行うのが理想です。前任者は早い段階で後継者を指名し、幹部に引き入れて自分の近くに置きます。そして、自らが指導をしながら経営者としてのノウハウやリーダーシップを伝授していきます。
事業承継を成功させるには、前任者が健在であるうちに全盛期の姿を見せる必要があるといえるでしょう。つまり、前任者の年齢や健康状態にかかわらず、早い段階から始めるべき作業です。
事業承継ではトラブルもつきものです。たとえば、後継者をすべての人間が認めてくれるとは限りません。血縁者を後継者に指名するなら、親族間の諍いを招く可能性もあります。従業員から指名するケースでも、選ばれなかったベテラン社員が不満分子になることもありえるのです。
また、事業を引き継ぐ際には「相続税」「贈与税」といった税金対策も大切です。無策のまま事業承継を進めると、多額の税金が発生して会社に損害を与えかねません。そのほか、前任者がワンマン経営者だったときは、そのカリスマ性や社会的信用まで引き継ぐのは至難の業です。これらの問題をひとつずつ解決し、企業力を維持したまま代替わりを果たせるかが事業承継の大きなテーマです。
どうして後継者に会社を引き継ぐ必要があるのか
結論から述べると、「会社を長く続けるため」です。どんなに優れた経営者でも、その座を退く日はやって来ます。そのとき、後継者が育っていなかったり、必要な手続きを用意できていなかったりしたら会社経営を続けられません。そして、多くの社員たちが路頭に迷うでしょう。
また、会社が社会の中で担っていた役割を投げ出すことにもつながります。会社が社員や取引先に対して背負っている責任を果たし、さらに成長していくためには事業承継は避けられないポイントなのです。
中には、「自分がいるのに後継者を育てたくない」という経営者もいるでしょう。しかし、事業承継とは「経営者が健在なら必要がない」作業ではありません。事故や病気で、急に経営者が今までどおりに働けなくなる可能性もあります。
それに、後継者が育っていないと代替わりをしたときに、社会的信用が急落します。これまでのように融資を受けたり、仕事を受注できなくなる恐れが出てきます。むしろ、経営者が元気だからこそ、後継者の教育も積極的に行うべきだといえるでしょう。
また、事業承継でありがちなトラブルとして、「前任者が後継者に信頼を置けない」というパターンが挙げられます。事業承継では、前任者が代表権を譲った後でも「会長」名義で経営陣に留まることが一般的です。そして、後継者をフォローしながら、しばらく会社を支え続けます。
ところが、会長になっても経営についてあれこれ口出しをする人は少なくありません。こうした状況が長引くと、真の意味での代替わりを果たしたことにはならないでしょう。事業承継を実現させるには、どこかで前任者が完全に表舞台から身を引く覚悟を決めなければいけません。そして、後継者が自力で会社を率いていく姿を温かく見守りましょう。
事業承継の問題点は?主な課題は3つ
本格的に事業承継を進めるにあたり、主な課題となるポイントは3つです。
まず、「経営承継」です。経営承継とは、会社の方針を決定できる「経営権」を後継者へと引き継ぐ作業です。事業承継では、代表の名目だけ変えても、後任者が会長として経営権を保持していることが少なくありません。会社の将来を思うなら、現代表に経営権を帰属させることが重要です。
経営権は「周囲の承認」と「株券の譲渡」を経て引き継がれます。まずは、株主や幹部に対し、後継者を紹介して認めてもらいましょう。そして、株式会社の場合は前任者が保有していた株券を後継者に譲ります。株式会社では、株の保有率はそのまま発言力に直結するので、代表の保有率を高める必要があるためです。
次に、「所有承継」を行います。所有承継とは、会社の所有者を変更する手続きです。基本的に会社は前任者の財産なので、事業承継とは相続や贈与であるといえます。法律上の所有者が前任者から後継者に入れ替わってこそ、事業承継は完了します。
ただし、ここでのしかかってくるのが相続税や贈与税といった負担です。さらに、前任者が亡くなった場合は遺族から遺留分を請求されることもありえます。遺族からすれば会社は遺産にあたるため、相続する権利があるからです。
遺留分は会社の資産の5割にもなることがあり、普通に支払うと大打撃になりかねません。対策として、「事業承継税制」に申し込んで納税を猶予してもらったり、遺族と話し合って遺留分の支払いを安くしたりするのが得策です。
そして、「後継者教育」です。多くの会社が適任の後継者を見つけられず、事業承継に苦労しています。経営者の子どもに会社を継がせようとするケースでも、上手くいくとは限りません。子どもに親ほどのやる気や資質がともなわないこともあるからです。また、社内にも適任者がいないとなれば、事業承継による企業力低下は免れないでしょう。
そこで、M&Aによる事業承継を考える会社も増えてきています。大企業に買収されることで、優秀な人材を経営者に迎えようとする考え方です。もしも買収された後も社員の生活が保障されて、経営理念を尊重してもらえるなら悪い選択肢ではありません。後継者選びにはさまざまな方法があるので、視野を広げて探しましょう。
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