創業、設立、創立…意味の違いを正しく区別できますか?

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創業、設立、創立という言葉は誰でも聞いたことがあるでしょう。

日常生活でも「デパートの創業百周年祭」、「会社設立のための資金」、「学校創立八十年」等の言葉は時々耳にしますが、それぞれの言葉の区別は実は曖昧なままにしているものです。

しかし起業志望者であれば、会社登記、事業計画や定款作成などの手続きに備えて、これらの語の意味の違いを厳密に知っておく必要があります。

創業という言葉の定義とは何でしょう?

創業とは、事業を開始することを指します。個人であっても事業を始める行為さえあれば、創業と言えます。

起業家にとっての事業とは、営利目的の経済活動を指すことが多いです。つまり営利目的の経済活動を始めることを創業と言います。

会社など法人設立前の開業準備行為も、創業に当たります。

開業準備行為とは、事業主体が立ちあげられた後すぐに事業展開できるように、財産引き受けをしたり不動産を取得したり原材料の仕入れをしたり販売ルートを開拓しておく等の準備行為のことです。

財産引き受けとは会社設立時に会社が第三者から財産を譲り受けるという約束をする停止条件付き売買契約のことです。

法人として創業する場合も、まだ設立登記はなくても創業は可能なのです。

したがって、登記の必要ない個人事業主であっても、事業を開始したという事実さえあれば創業という言葉が当てはまります。

創業という言葉を使うときの注意点は、事業開始の実体が現実に存在しないうちは創業とはいえないということです。

つまりまだ会社が事業開始していないのに、これから創業する予定だという表現は使わない方が賢明です。

設立という言葉の定義とは?

設立とは、会社などの法人が、定款を作成し、(株式会社なら)株主を確定し、会社財産を形成し、取締役などの機関を決定した後、公証人の認証を受け、登記(会社法49条)を申請することです。

登記申請とは、法務局に資本金の額、取締役の氏名、代表取締役の氏名と住所、発行可能株式総数など記した書面を提出することです。

なお資本金は会社財産を確保するため基準となる一定の計算上の額なので、実際に現金を用意する必要はありません。

法人登記は準則主義といって、適正な手続きを踏めば誰でも登記できますのでほぼ届け出制度に近く、行政機関からの許可は不要です。

既に存在する組織が、新規事業を展開したり、子会社を作ったりする際も登記をすれば、設立と言えます。

設立の登記がされれば法人格が付与され、法人としての優遇措置を受けられます。

したがって個人事業主の場合には、確定申告のために開業届けという事業の登録申請を税務署に行ってから事業を開始しても設立とは言いません。

ただし公証人の認証が無いなど設立手続きに重大な瑕疵があれば、設立無効事由となり会社は成立しません。

無効主張は本来いつでも誰でもできるものですが、いったん有効に成立した会社には多数の法律関係が形成されてしまうため、設立無効に関しては安易に認めると取引の安全を害するので、設立無効の訴えによってのみ主張できることになっています。

創立という言葉の定義とは?

創立とは、初めて組織や機関を設けることにより事業を開始することです。登記や開業届けも必要ありません。

したがって会社だけでなく、学校や同好会などの任意団体にも当てはまりますが、個人で事業を始める行為は創立に当たりません。

創立は設立と異なり、既に成立した会社が子会社を作ったり新規事業を開始する場合には使いません。

子会社や新規事業部は、創立ではなく「創設」されると言います。

創立年と設立年に違いが生じるのはなぜでしょうか?

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新しいビジネスをスタートさせた年が創立年で、たとえば数年後に株式会社化して登記したらその年を設立年と言います。

上記のように登記しなくても初めて組織や機関を設けることにより事業を開始した年が創立年であるため、その後の手続きで設立登記をすれば設立年が遅れることになるわけです。

つまり創立年が設立年より先であることはあっても、設立年が創立年より先になることはありません。

登記と初めての事業開始が同時期であれば、当然創立年と設立年は同じ年になります。

類似語の起業、開業、独立の意味とは?

創業、設立、創立に類似した言葉には、起業、開業、独立という言葉もあります。

起業とは創業とほぼ同義で新しく事業を興すことですが、創業が従来から存在する種類の事業を開始する場合も使うのに対して、起業は誰も開拓したことのない未知の分野を切り拓く意味合いを持つと言われています。

先述したとおり創業が過去の事実に限定されるのに対して、起業は未来の予定にも使えます。「これから起業する」という使い方は問題ないのです。

開業は、会社の設立に対応する言葉で、新しく事業を始める個人事業主が主体となります。そして主に商売を始める場合に開業という言葉を使います。

個人事業主は設立登記申請ではなく、開業届けを提出することになっていることからも、開業は個人事業主特有の用語であると言えます。

独立とは、勤務先の会社を辞めて同種の業界で新しく事業主として、前の会社で培ったスキルを生かし事業を展開することを指します。

独立は前の勤め先が個人の力量の成熟を認めて同じ屋号で商売をさせることを意味するいわゆる「暖簾分け」のみならず、前の雇い主の許可を得ず全く違う屋号で事業を開始することも指します。

起業家を目指すなら経営のプロとして事業の基本用語をきちんと押さえましょう。

上記の見出しで取りあげた6つの言葉以外にも、事業用語には創設や興業、廃業、破産など経営者として正確な定義を知っておくべき基本的な言葉があります。

そのほかにも例えば営利目的という言葉もよく使われますが、世間で言われているような金儲け目的という意味ではなく、配当などで利益を株主に分配する目的を示します。

このような用語を日常的に見かけるからと言っていい加減な意味の捉え方をせず、きちんと定義を調べて適確な知識を身につけてください。

特に会社法で使われる法律用語は、日常的な意味と異なる場合も多いので注意が必要です。たとえば会社法における社員とは従業員ではなく、株主のことです。

会社を設立したい起業志望者であれば、まず持分会社と株式会社のどちらにするのか、よく考えなければなりません。

簡単に資金を集めたいからと、事業用語もよく知らないのに安易に株式会社を立ち上げて、株主や債権者に迷惑がかからないよう最大限の配慮をしましょう。

誰でも設立登記をすれば取締役になるのはさほど難しくありませんが、取締役は責任重大で対会社責任や対第三者責任を問われる規定が会社法に定められています。

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