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経営には事業計画書が必須だと言われますが、ほとんどの場合、融資を受けるために、やや消極的に作成しているケースが多いように思います。
しかし、事業計画書を作ることのメリットは融資を受けられる以外にも、たくさんあります。事業計画を作ることで、自分がやりたかったことと向き合い、方向性を改めて確認でき、ブレない軸ができ、経営がしやすくなることを実際の支援を通して実感しています。
今回は、事業計画書を作成すべき理由と、必要となる場面、事業計画書の作成に役立つ選りすぐりのフォーマットをご紹介したいと思います。
事業計画書はなぜ必要なのか
事業計画書を作った方がいいとはよく言われますが、なぜでしょうか。融資や出資を受けるためだけではありません。多くの人の協力が必要な経営に必須だからです。
事業計画書を作成し、公表することで支援者や援助を集めることが可能です。
また、事業計画書で作成した行動計画に基づき実行に移すと、計画通りにいくことばかりでないことがわかると思いますが、ここに意味があります。
ビジネスは相手があることですから、「思っていたのと違った」ということは多くあります。自分が想定していた反応とのブレ、ここに課題が生まれ、「営業のプロセスを見直す」「商品の提供方法を工夫する」など、事業を改善に繋げることができるのです。事業計画書は、課題を見つけるための「モノサシ」に成ります。
事業計画書が必要となるケース
事業計画書が必要になるのは、具体的にどんなケースでしょうか。
融資や出資などの資金調達のケース
自分でどんなに良いビジネスプランだと思っていても、口頭だけでは伝わりにくいもの。お金を出してもらうには、事業計画書を作って事業の詳細について、情報を共有する必要があります。
お金を出す側に立ってみると、お金を出すということは、「もしかしたら返ってこないかもしれない」というリスクを伴います。
銀行や出資元は、事業計画を吟味して、果たして実現可能なのか、融資や出資に値するものなのかを客観的な目線で検討します。設備投資についての融資であれば、その投資を回収できるだけの収益を生むことができるのか、それが最善の投資なのかを検討します。
特に、金融機関の場合は、融資担当のみで融資が決定されることはまずありません。事業計画書をもとに、稟議書を書き、上層機関の決済を求めます。また、最近の金融機関では、1担当者の担当する企業数が増えており、1件1件に時間をかけることが難しいのです。
口頭での説明であっても、ほぼ事業計画書に盛り込んである、事業計画書を見れば稟議書が書けるくらいのレベルで作成できるとベストです。
経営幹部やビジネスパートナー、従業員と会社の方向性を共有するケース
会社は1人で運営できません。社内・社外を問わず、必ず協力者が必要になります。
自社を支えてくれている幹部やビジネスパートナーだけでなく、従業員も立派な協力者です。
自社は何を存在価値とし、どこを目指して、何をするのか。見る方向性を同じくし、それぞれの役割を明らかにしなければ、力を一つにすることは難しく、ややもすれば、損得でしかつながっていない関係性になってしまってはうまくいきません。
経営者の中には、「事業計画は頭に入っているから、作る必要はない」とおっしゃる方もいます。しかし、事業計画書という形に外に出すことで、経営者は自らの考え方を客観的に見つめ、考えを共有でき、協力者は自分の役割を考えることができ、結果として生産性が上がり、一体感が生まれるといった利点もあります。
新しい事業を思いついたら、必ず家族にプレゼンし、理解してもらえるまでブラッシュアップをし、何度もなぜやるのかを問い直すという起業家もいます。
このように、事業計画書は一種のコミュニケーションツールです。事業計画書を作る過程で、経営者は、顧客や社員とコミュニケーションをとることになります。
自分自身の目的や目標を確認するためにいつも持っておく
事業計画書は、自社の方向性を表すもの。経営者は毎日やることが多いため、目の前のことをひとつひとつ判断をしていかなければなりません。判断に迷うとき、判断の指針になるのが、経営理念や会社の方向性、すなわち事業計画書でまとめたことです。
事業計画書は作りっぱなしにするのではなく、いつでも確認ができるように、手元にいつも持っておくとよいでしょう。
また、時の流れとともに、自分が認識していた感覚と、マーケットの実態にズレが生じたと感じることもあります。事業計画書を作っておくと、そのギャップを明らかにすることができます。時代の流れの速さも実感できるはずです。
大切なのは、事業計画通りに進むことではなく、当初の考えとのギャップに気づき、環境や時代に合わせて、やり方を変化させていくことです。
事業計画書は羅針盤と言われるように、経営者にとっては迷いから自分を守り、軸をブレさせないためのものだと思います。
ダウンロードして活用できるおすすめフォーマット
決して融資や出資を受けることだけが目的ではなく、応援者を集め、経営に役立つ事業計画書という視点で選んだ事業計画書フォーマットを取得できるサイトや書籍をご紹介します。
中小企業基盤整備機構 経営計画つくるくん
中小企業基盤整備機構がリリースした経営計画策定ツールです。
アプリをダウンロードし、経営計画を作ることができます。完全に無料で使えるアプリです。
質問に答えていくと、事業計画書の中身が埋まっていきますので、初心者でもつくりやすいものになっています。内容は事業のコンセプトや市場分析、自社分析、商品・サービス分析、事業戦略、行動計画まで、漏れのない事業計画が作られることが特徴です。
エクセルのフォーマットとして出力することもできます。パソコンでの仕上げができますし、融資を申し込む際の事業計画書のベースにすることも可能です。助成金や補助金の申請書の下地としてもおすすめです。
また、経営計画を作成する上で必要な基礎知識を、クイズ形式で楽しみながら学習する機能もあります。
大阪産業創造館 経営お道具箱
長年に渡って大阪の中小企業の起業家・事業家を支援している大阪産業創造館のサイトにある「経営お道具箱」ページ。このなかの「ビジネスプランフォーマット」の中に、事業計画書に必要なフォーマットが一通りそろっています。
事業の概要を客観的な視点でまとめる「ビジネスプランサマリー」書式は、事業計画をまとめる前に必ず作成しておきたいです。
書籍「事業計画書」のつくり方
税理士の原直美さんによる著書。
この書籍を買うと、事業計画書フォーマットがダウンロードできるようになっています。この書籍の流れに従って51の質問に答えるだけで、一通りの事業計画ができます。
自社の強みの分析のみならず、マーケットに対する分析についてもしっかり盛り込まれています。バランスよく質問が用意されており、資金の裏付けについても資金繰り表で明確にできるため、説得力ある計画書を作成できると思います。
京都信用金庫 ここからはじまる
創業融資を受ける場合は、どの金融機関から受けるかに関わらず、京都信用金庫の「ここからはじまる」という融資制度紹介ページにある事業計画書フォーマットがおすすめです。
なぜ、この事業をやるのか、マーケット分析はできているのかなど、あらかじめ整理しておかなければならないことが質問形式でまとまっています。
金融機関がつくるフォーマットなので、すなわち融資を受けるときに金融機関が知りたいことがまとまっています。このまま金融機関に出しても遜色ない事業計画書が出来上がります。
J-Net21 中小企業ビジネス支援サイト 各種書式ダウンロード
こちらも中小企業基盤整備機構による中小企業の支援サイトからダウンロードできるフォーマットです。
この通り、「売上想定シート」や「費用計画シート」、「活動プランシート」、「商圏調査シート」など、かなり細かいフォーマットが揃っており、綿密な事業計画書が作成できそうです。
起業を支援してきた身としては、このサイトにあるフォーマットのほとんどをまとめることができ、専門家に相談することができれば、盲点を埋めることができ、事業の成功率はグンと上がることが容易に想像できます。
「このフォーマットは埋められないな」というものがあれば、それは今まで考えていなかったことがあるということです。それ自体は悪いことではなく、「考えていなかったこと」について認識できたのであれば、これから考えばよいことです。
例えば「市場調査シート」が埋められないのであれば、今、市場調査をするチャンスだということです。気づかなければ、行動のしようがありません。気づけたことにラッキーと思えることが大切です。
bizocean「事業計画」の書式テンプレート
あらゆる書式が集まっているbizoceanというサイトのなかの事業計画書フォーマット集です。各方面の専門家がそれぞれ作成したフォーマットを集めており、業種別の事業計画書があることと、フォーマットによっては、書き方について詳細な解説がされていることが特徴です。
なお、ダウンロードするには、会員登録(無料)をする必要があります。
まとめ
創業する方のみならず、事業を実際に行っている経営者の方にも、定期的な事業計画書の作成をお勧めしています。私どものお客様である経営者の皆さんは、決算月までに来期の事業計画書を作ることが毎年のサイクルになっているくらいです。
作成した事業計画と、毎月の実績を比較し、何ができたか、何が良かったか、改善点は何か、毎月半ばまでに振り返りをするとともに、定期的に金融機関に対して計画の進捗状況を共有しています。
そうすると、金融機関側でも、企業の課題がわかり、融資の具体的な提案をしてもらえたり、得意先や協力先の候補を紹介してもらえたりと、協力関係が築きやすくなっていると実感しています。
このように、事業計画書は、融資を受けるだけためのものではなく、経営の方向性を示すものであり、経営のモノサシとして日々の経営に活用できるものです。
決して、根拠のない数字を並べた絵に描いた餅にせず、行動までイメージできる事業計画書にしていただきたいです。そのために活用できるフォーマットをご紹介しました。ご参考になれば幸いです。
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