返済不要の魅力的な資金調達方法。助成金と補助金まとめ

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企業の資金調達の方法は様々あります。自己資金をはじめとして、融資や他者からの出資、自らの儲けなど、いくつも挙げられますが、その中で助成金と補助金は、返済不要、出資のような配当も不要の経営者にとっては魅力的な資金調達方法です。

ここでは、どんな助成金や補助金あっても、必ず押さえておきたいポイントをまとめました。

第1章 返済不要の魅力的な資金調達方法 助成金と補助金とは

(1)補助金と助成金の違い

補助金と助成金の違いは何でしょうか。比較してみました。

補助金は主に経済産業省管轄で、公募して審査をされるコンペ方式で、審査の上採択されればもらえるお金です。その他、地方自治体や民間団体が公募している補助金もあります。

一方、助成金は主に厚生労働省管轄で、採用やキャリアアップなど人材に関して、要件を満たすことができればもらえるお金です。

補助金は申請期間が短めで、締切があります。審査を経て採択され、その後に補助金の目的の事業やプロジェクトを実施し、それにかかるお金の一部を受給される流れになります。

助成金は、申請できる期間が長めであり、締切で区切られることはありません。

(2)補助金や助成金の落とし穴

補助金や助成金ありきの施策はNG

ごく簡単にいうと、「補助金があるから、これをしよう」という意思決定は避けたいものです。

例えば、助成金には、「65歳超雇用推進助成金」といって、65歳以上への定年の引上げを行ったことに対して、支給される助成金があります。

自社の方向性として、高齢者の活用を目指しているのであれば、65歳以上への定年の引上げは意味のあることでしょう。

しかし、助成金をもらえるからといって、65歳以上への定年引上げをしたばかりに、必要がないのに長く働いてもらわなければならず、若い人が採用できず、人材の高齢化につながってしまう恐れもあるわけです。

このように、補助金や助成金が支給されるからといって、支給を受けるためだけに、会社のルールや体制を変更することは、のちのち自社の首を絞めてしまいますので、絶対に避けましょう。

一方で、(3)で解説するように、会社の課題が整理できていて、「これからやろうと思っていることと合致した補助金や助成金があるので、申請しよう」という申請のしかた、これはOKです。

まとめると、自社の課題やニーズがあって、それにあった補助金や助成金があれば申請する、という考え方でないと、自社の方向性が歪められてしまうことになりかねません。

普段から自社の方向性と課題を整理しておくことが必要です。

補助金や助成金は後払いであることに注意

補助金や助成金は、返済不要のお金ですが、基本的に「後払い」です。

補助金対象の事業やプロジェクトに対して支出をしたあと、または、助成金受給の要件である人を雇ったり、制度を変更したりしたあとに、支給されます。

補助金の場合について、もう少し詳しく解説します。

総費用200万円の事業に対して、補助金を100万円をもらう場合、実質的な自己負担は100万円ですが、先に200万円の全額を支払います。

プロジェクトが終了してから、支払い実績を含めた受給申請をして補助金100万円が入金されることになります。

つまり、先に200万円のお金の工面はしておかないといけないのです。

最近では金融機関でも、補助金が支給されるまでのつなぎ資金の融資をしてくれるところもあります。先払いが厳しい、と思われる方は、金融機関にも相談してみましょう。

(3)補助金や助成金を探す前にしておくべきこと

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先述したように、補助金や助成金を目的にして、実施することを決めるのではなく、自社の課題解決にあった補助金や助成金を選ぶことが大切です。

補助金が合ってもなくても、常に自社の経営計画を策定しておき、何が課題かを把握しておくと、いざ補助金が発表されたときにも、すぐに対応できるでしょう。

具体的には、次のようなステップになると思います。

事業計画の策定

可能なら3~5年の中期の経営計画を作るとよいでしょう。

そのなかで、取り組みたいこと、取り組むべきことが明らかになってきます。

課題を整理したいときは、ローカルベンチマークツールがお勧めです。このフォーマットに従って、自社の課題整理をしておき、これらを踏まえて事業計画をつくるとよいかと思います。

スケジュール策定

立案した事業計画を期間に区切り、スケジュールに落とし込みます。いつまでに何を行えばよいか、何が必要なのかが明確になります。

数値計画策定

ただ月次の損益計算書に落とし込むのではなく、事業推進において、必要となる数値を整理していきます。

例えば、上記のスケジュール策定で明確にした、ITツールによる営業マンの工数削減ができたとすると、1日に訪問できる顧客数が5件から7件に増加し、その結果、売上高がどう変わるのかを数値計画にしていきます。

大切なのは、どのようなプロセスを踏むため、数値がこうなる、という行動ベースでの根拠があることです。

売上前年比120%という数値目標を立てても、なぜそうなるのか、どうしたらそうなるのかというプロセスがなければ、絵に描いた餅となってしまい、意味がありません。

何をするのかという行動ベースで、数値計画を立てていきましょう。

補助金・助成金選択

これまでのステップから活用できる補助金や助成金などを明らかにして、資金調達の可能性を模索します。


このように、補助金や助成金の申請は、事業を推進する流れのごく一部です。

補助金や助成金ありきではなく、自社の事業計画があったうえで、その解決法として補助金や助成金を使うというのが、あるべき姿です。

第2章 どんなときに助成金をもらうことができるか

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(1)どんなときに助成金をもらうことができるか

助成金は、厚生労働省が管掌している雇用に関連した支援金のことです。 雇用保険に加入している事業所で、要件を満たしていればお金が支給されます。

どんな要件を満たしていれば、支給されるのでしょうか。

助成金は大きく分けて4種類あります。

  • 人を雇うことに対して助成されるもの
  • 人材を教育することに対して助成されるもの
  • 待遇をよくすることに対して助成されるもの
  • その他のことに対して助成されるもの

1つずつ見ていきましょう。

人を雇うことに対して助成されるもの

人を雇うときに、比較的就職に不利になりやすい人を雇用することに対して、助成金を出すものになります。

主なものは、

・特定求職者雇用開発助成金

下記の方を雇い入れたときに申請できます。

  • 高年齢者・障害者・母子家庭の母など
  • 65歳以上の高年齢者
  • 震災により離職した求職者
  • 発達障害者又は難治性疾患患者
  • 3年以内の既卒者や中退者
  • 初めて雇い入れる障害者
  • 長期にわたり不安定雇用を繰り返す方を正規雇用労働者として
  • 生活保護者

・トライアル雇用助成金

試験的に雇い入れるトライアル雇用をしたときに申請できます。

一般のトライアル雇用の他、障害者や建設業限定で若年者や女性を建設技能労働者としてトライアル雇用をする場合も申請できます。

・地域雇用開発助成金

雇用情勢が厳しい地域で、事業所を設置整備して雇い入れた場合や、沖縄で事業所を設置して、35歳未満の若年者を雇い入れた場合に申請できます。

・生涯現役企業支援助成金

起業して、中高年齢者(40歳以上)を雇い入れた場合に申請できます。

人を教育することに対して助成されるもの

人材の教育に対して、助成されるものになり、新たな雇い入れを必要としていないため、人気のある助成金です。人材開発支援助成金という助成金です。

下記の教育訓練に対して、助成されるものとなります。

  • OJTとOff-JTを組み合わせた訓練、若年者に対する訓練、労働生生産性の向上に資する訓練など、効果が高い10時間以上の訓練
  • 職務に関連した知識や技能を習得させる前の20時間以上の訓練
  • 有休を与えて自発的に教育訓練を受ける有給教育訓練休暇制度の導入
  • 有期契約労働者に対しての職業訓練
  • 建設業を営む事業者が建設労働者に受講させる認定訓練や技能実習
  • 障害者に対して受けさせる職業能力開発訓練

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待遇をよくすることに対して助成されるもの

雇用環境や待遇そのものをよくすることに対して助成されるものになります。

多数あるので主だったものをご紹介します。

  • 雇用環境整備等関連の助成金
  • 障害者を雇用したときに、職場に定着しやすいように働き方の工夫や設備投資をしたことに対しての助成
  • 人材確保を目的とした評価や処遇制度・研修制度を整備するなどの基盤の整備をしたことに対しての助成
  • 季節労働者を通年雇用することに対しての助成
  • 65歳以上への定年引上げ等、65歳を超えても働ける職場づくりに対しての助成
  • 有期契約の労働者を正社員化したり、賃金の増加をするなど、待遇をよくしたことに対しての助成
  • 健康診断制度の導入や、正規・非正規労働者共通の賃金規定や諸手当規定の導入に対しての助成
  • 育児や介護と仕事を両立できることを支援する制度導入に対しての助成(男性労働者の育児休業取得の促進など)

その他のことに対して助成されるもの

・雇用調整助成金

休業や教育訓練、出向を通じて労働者の雇用を維持するためのもの。景気の変動や災害などで休業せざるを得ないときに使われます。

・労働移動支援助成金

離職を余儀なくされる労働者の再就職支援を民間職業紹介事業者に委託して行う場合に助成されるものや、離職を余儀なくされた労働者を早期に雇い入れるケースに助成されます。

また、中途採用者の雇用管理制度を整備し、中途採用を積極的に行う場合も助成の対象となります。


このように、雇用関係の助成金は、非常に多岐にわたり、あれもこれも申請できるのでは?と思われる方も多いのではないでしょうか。

しかし、大事なのは自社の方向性や課題に合っているかどうかです。間違っても助成金に合わせた制度の改定や雇い入れをしないでください。

(2)不正受給が発覚すれば罰金がある

要件が合っていないのに、合ったようにして助成金を申請したことが発覚してしまうと、それ以後5年間はいかなる助成金も申請できないようになる罰則があります。

このような行政罰のみならず、助成金の不正受給が発覚すると、詐欺罪で起訴をされることとなり、ニュースになることもあり得ます。そうなると会社の信用も失墜し、信用回復には長い年月がかかるでしょう。

不正受給への締め付けは年々厳しくなっていますので、絶対にしないようにしましょう。

また、助成金の申請ができるのは社会保険労務士に限られており、一般の民間の事業者が代行することはできません。助成金を受けませんかと営業を受けられたことのある方もいらっしゃると思いますが、社会保険労務士がちゃんとかかわっているのかどうかの確認も必要です。

第3章 どのようなときに補助金をもらうことができるか?

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(1)補助金を受けるメリット

補助金には様々なものがありますが、国の政策目標を達成するために、それに沿った事業を行う事業者に対して、その支援として支給されるものになります。

補助金を受給するメリットは、単に返済不要の資金を得られることだけではありません。

国は毎年100兆円超もの国家予算を、国の現在・将来をよくするために使っています。補助金を受給できるということは、自社の方向性が、国の方向性と合致しているということです。それを確かめるために補助金活用を検討するといっても過言ではないでしょう。

現在公募中もしくはこれから公募予定の各補助金は、それぞれ目的があります。

・【2019年5月8日締切】平成30年度補正予算 ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金
世界から大きく後れを取りつつある日本の生産性を上げるべく、生産性向上に資する革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行うための設備投資等を支援すること

・【2019年5月31日締切】平成30年度第2次補正予算 事業承継補助金
経営革新の最大のチャンスである事業承継やM&Aなどをきっかけとした、中小企業の新しい取り組みを支援すること

IT導入補助金2019
国の大きな課題である生産性向上に資するIT導入を支援すること
※2019年5月27日から公募が開始されます。

・小規模事業者持続化補助金
中小企業のなかでも、小規模な事業者について、なかなか手が回らない販促や生産性向上に資する取り組みを支援すること
※まだ公募開始はされていませんが、4月~5月に開始見込です。

(2)補助金の探し方

「補助金はセルフサービス」とも言われます。自分で自分に必要な補助金情報は取りに行かなければなりません。

具体的に、どこで補助金情報を見つけたらよいかを下記にまとめました。

中小企業ビジネス支援サイト J-NET21
中小企業基盤整備機構が運営しており、補助金情報のみならず、中小企業への視線施策の情報発信を行っています。施策の自成功事例や申請書を記入する際に必要となる様々な業界の市場調査データも公開されています。
メルマガに登録しておくと、まもなく公募・今公募中の補助金・助成金情報が速やかに入手できます。スマホアプリもあります。検索もしやすくて便利です。

ミラサポ
中小企業とその支援機関のマッチングをコンセプトとしています。こちらにも公募情報が載っています。需要の高い補助金については、ポイント解説もあります。
一部の補助金の電子申請ができるので、ユーザー登録をしておくと便利です。
メルマガも登録しておくと情報が届きやすいです。

各分野の専門家である支援機関も多数登録されており、3回無料で支援を受けることができます。自社の課題を整理したのちには、必要に応じて、ミラサポ登録の専門家を活用してもよいでしょう。

・各省庁や都道府県、市町村のWEBサイト

・補助金を得意とする士業や士業事務所からの情報(SNSなど)

みんなの助成金
LINE@にも登録しておくと、情報が届きやすくなります。

(3)補助金は、あくまで自社の課題に合ったものを選択しましょう

補助金も助成金と同じで、特に春は補助金が多く公募されるので、あれこれと応募してみたくなるのも無理はありません。

しかし、自社の課題に合ったものでないと、非常に申請書が書きにくくなりますし、時間と手間のロスが大きくなるうえに、採択率も下がってしまいます。

回り道のようかもしれませんが、自社の事業計画と課題の整理をすることを前提として、これにあった補助金を選択してください。

どれが自社に合っているのかわからない場合は、経営革新等認定支援機関である税理士をはじめ専門家のアドバイスを受けることが効率的です。

まとめ

このように、国は企業に対する支援のひとつとして、助成金や補助金を準備しています。しかし、これらありきではなく、あくまで自社の方向性や課題が設定できてこそ、申請をするものであり、このようなプロセスを踏んでいないと、申請書が非常に書きづらくなります。

補助金や助成金を受ける・受けないに関わらず、事業計画は必要ですし、常に自社の課題は何かを整理しておく必要があります。これをしておくと、助成金や補助金に限らず、必要な情報がもたらされると思います。ご参考になれば嬉しいです。

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著者プロフィール

神佐 真由美

神佐 真由美

京都大学経済学部在学中から「プロフェッショナルになるために手に職を」と税理士を志す。卒業後は、税理士を顧客とする株式会社TKCに入社し、税理士事務所を顧客にシステムコンサルティング営業に4年間従事。本当に中小企業経営者にとって、役に立てるプロフェッショナルはどうあるべきかを問い続け、研究する。税理士試験5科目合格後、税理士業界へ転身。
自ら道を切り拓く経営者に尊敬の念を抱き、経営者にとって「一番身近なパートナー」になるべく、起業支援や資金調達支援、経営改善や組織再編、最近では事業承継支援など多くの経験を積む。経営計画を一緒につくり、業績管理のしくみづくりを通して、未来を見通せ、自ら課題を見つけ、安心して挑戦できる経営環境づくりが得意。大阪産業創造館のあきない・経営サポーターも務め、セミナー実績も多数。「経営者のための資金繰り基礎講座」「本当に自社にとって必要?事業承継税制セミナー」など。

<関連サイト>
角谷会計事務所
未来を魅せる税理士 神佐真由美のブログ