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春は補助金のシーズンです。すでに公募が始まっている補助金もありますが、これから多くの補助金の公募が始まります。せっかくのチャンスなので、自社の発展のために補助金を利用してみませんか?
補助金申請の注意点とおさえておきたいポイントについて解説します。
第1章 そもそも補助金とは?申請の注意点は?
(1)補助金とは何か?どんなメリットがあるのか?
まず、補助金がなぜ作られるかという目的ですが、それは、国の政策に直結しています。現在日本全体の課題として、他の先進諸国と比較して、労働生産性が低すぎることが挙げられます。
特に、中小企業での労働生産性は、大企業の半分です。人口減少の局面に入り、労働者人口は減少の一途を辿ります。そのなかで、国力を維持し、豊かな国づくりをしていくには、生産性を劇的に向上させていかなければいけないのです。
よって、国はその政策目的を遂行させるために、その政策にあった行動を取る企業に対して、補助金を支給するという方法で支援をします。ものづくり・商業・サービス生産性向上補助金や、小規模事業者持続化補助金やIT導入補助金などはまさにその目的で作られています。
補助金をもらうということは、国の政策に沿った事業やプロジェクトを行い、政策目的の達成に向けてかかるお金について、補助をしてもらうということになります。
補助金のメリットは、
・返済不要の資金が手に入る
だけでなく、国の政策に沿った事業やプロジェクトを行うことを前提としているため、
・補助金をもらうための申請書をつくることをきっかけに、自社のことを見つめ直して整理することで、ビジネスの本質を追求し、経営管理レベルを上げることにつながる
ことだと思います。
(2)助成金との違いは?
補助金は公募して審査をされるコンペ方式で、採択されればもらえるお金です。
一方、助成金は主に厚生労働省管轄で、採用やキャリアアップなど人材に関してもらえるお金で、要件を満たすことができればもらえるお金です。
補助金は申請期間が短めで、締切があり、審査を経て採択され、その後に補助金の目的の事業やプロジェクトを実施し、それにかかるお金の一部の受給を受けるものになります。
助成金は、申請できる期間が長めであり、締切で区切られることはありません。
(3)補助金申請の落とし穴!決して補助金を目的にしてはいけない
ごく簡単にいうと、「補助金があるから、これをしよう」はNGです。「やろうと思っていることが、補助金の目的と合致したので、申請しよう」、これはOKです。補助金申請を行う上で、やってはいけないことは、「補助金が出るから、これをやろう」という考え方です。
まず、自社の課題やニーズがあって、それにあった補助金があれば申請する、という考え方でないと、補助金の目的によって、自社の方向性が歪められてしまうことになりかねません。
極端な例かもしれませんが、以前、創業補助金が公募されていたときに、「補助金が出るなら、起業したいです」という相談者がいらっしゃいました。創業補助金が支援してくれるのは、スタートにかかるお金の一部でしかありません。
起業するときの一時的な後押しになるものであって、起業したのちは自分で収入を作っていかなければなりません。
補助金は、起業後に売上が作れるようなビジネスモデルを後押しするもの。起業するというコミットが先にあって、補助金がそれを支援するという位置付けに過ぎません。その相談者に「補助金は、コンペ方式ですから、出ないこともあります。
もし、補助金が出なかったとしても、起業しますか?」と尋ねましたが、「それなら、やりません」とのことでした。
補助金が出ても出なくとも、採算が取れるビジネスモデルでなければなりません。補助金ありきでは、成り立たないのです。
このように、補助金の目的に合わせて行動を選択するのではなく、自社の進みたい方向やそのための課題にあった補助金があれば、申請する、という考え方の方が、申請書の記載もしやすくなりますし、筋が通り、その結果、採択されやすくなります。
補助金が合ってもなくても、常に自社の経営計画を策定しておき、何が課題かを把握しておくと、いざ補助金が発表されたときにも、すぐに対応できるでしょう。
課題を整理したいときは、ローカルベンチマークツールがお勧めです。このフォーマットに従って、自社の課題整理をしておくとよいでしょう。
第2章 補助金申請のポイントと自社にあった補助金の見つけ方
(1)これをすれば採択率が上がる!補助金申請のポイント
補助金は、生産性向上や販売促進などの政策目的があり、その目的の遂行のために、国費を持って設定されるものになります。その目的に合わない、合っていないと判断されたものは、まず採択されません。
また、書類上の審査で決まってしまうため、補助金の目的に合っていることを、限られた紙面上で、表現して審査員に伝えなければならないものになります。
採択率を上げるためのポイントをまとめました。
審査基準を満たす
補助金の申請は、フィギュアスケートのショートプログラムのようなものだと言われます。何を盛り込まないといけないかは明らかです。
公募要領をよく読み込むと、「審査の観点」は明らかに掲示されていることがわかります。この観点に沿って書かなければ、まず採択は難しいでしょう。しかし、ちゃんと読み込まない方が8~9割だそうです。
審査員が聞きたいことを書かずに、語りたいことを申請書に書いてしまう方が多いそうです。まずは公募要領と併せて「審査の観点」をしっかり読み込むこと。これだけで上位1割に入ることができます。
勝ち筋をつくる
補助金を出す方は、集めた税金を原資に支給するため、ちゃんと活用される必然性を求めます。
たとえば、ものづくり補助金の場合、「既に引き合いがあって、資金負担の問題で作れていないんです」という状況が語れるかどうかで違いが出ます。既に需要があるが、これを製品化したり、軌道に乗せたりするために補助金を使わせてもらいたい。こういう絵をかくことが大切だそうです。
一番効果的なのは、「こういう商品やサービスがあったら、買いますか?」とお客様に先に聴いてみること。
逆に言うと、需要があるのかないのかわからないものについては、補助金は出しづらいということになります。
良すぎる未来を描かない
2つめと矛盾するように思うかもしれませんが、「これが成功したらザクザク儲かる」ように書きすぎると、「じゃあ補助金いらないのでは?」と判断されてしまうということです。
補助金によっては、補助金の成果として、経常利益がいくらになるという試算を出さないといけないものもありますが、経常利益率5~10%くらいで抑えておくことがポイントだそうです。
(2)補助金情報が集まる場所をチェックしておこう
「補助金はセルフサービス」とも言われます。なぜなら、補助金を出す側から情報がこちらに熱心にお知らせが送られてくるわけではないからです。自分で自分に必要な補助金情報は取りに行かなければなりません。
また、補助金は期間限定のコンペ方式。申請期間が短期間に限られていることが少なくありません。さらに、かなり直前になってから、公募が明らかになることもあります。注意しておかないと、知らないうちに補助金の公募が始まっていて、気づいたときには締め切りまであと1カ月もなかった、ということにもなりかねません。情報収集の方法を確保し、タイムリーに情報が集まるような工夫が必要です。
具体的に、どこで補助金情報を見つけたらよいかを下記にまとめました。
- 中小企業ビジネス支援サイト J-NET21
中小企業基盤整備機構が運営しており、補助金情報のみならず、中小企業への視線施策の情報発信を行っています。施策の自成功事例や申請書を記入する際に必要となる様々な業界の市場調査データも公開されています。
メルマガに登録しておくと、まもなく公募・今公募中の補助金・助成金情報が速やかに入手できます。スマホアプリもあります。検索もしやすくて便利です。
- ミラサポ
中小企業とその支援機関のマッチングをコンセプトとしています。こちらにも公募情報が載っています。需要の高い補助金については、ポイント解説もあります。
一部の補助金の電子申請ができるので、ユーザー登録をしておくと便利。メルマガも登録しておくと情報が届きやすいです。
- みんなの助成金
LINE@にも登録しておくとよいです。
(その他民間の補助金の情報が集まるサイト)
- CANPANフィールド
日本財団運営のサイトですが、ややマニアックな公募情報が集まってます。競争率はやや高めです。マッチするものがあればよいですね。
- 公益財団法人 助成財団センター
- 国立研究開発法人 科学技術振興機構(技術系)
- 国立研究開発法人 日本医療研究開発機構(医療系)
-
各省庁や都道府県、市町村のWEBサイト
-
補助金を得意とする士業や士業事務所からの情報(SNSなど)
案外いい情報を集めることができます。補助金を得意とする士業や士業事務所のアカウントをフォローしておくと、旬な情報がゲットできるかもしれません。
(3)補助金申請で絶対におさえておきたいこと
補助金は後払いなので資金繰りに注意!
補助金は返済不要のもらえるお金ですが、後払いであることに注意が必要です。
例えば、総費用200万円のプロジェクトに対して、補助金を100万円をもらう場合、実質的な自己負担は100万円ですが、先に200万円の全額を支払い、プロジェクトが終了してから、受給申請をして補助金100万円が入金されることになります。
つまり、先に200万円のお金の工面はしておかないといけないのです。
最近では金融機関でも、補助金が支給されるまでのつなぎ資金の融資をしてくれるところもあります。
先払いが厳しい、と思われる方は、金融機関にも相談してみましょう。
もともと申請した通りのお金の使い方をしないと支給されないことがある
補助金の申請をする際には、何にどのくらいのお金を使うのかを明記して申請します。
補助金の申請が締め切り間際になると、概算でもいいのではないかと細かく調べることを省略してしまいがちなのですが、あとで「こんな経費も必要だった」というような申請漏れがあるとその分については補助金が受給できません。
少し面倒かもしれませんが、いずれしないといけない作業です。業者に見積もりを取るなどして、早めに準備をしておくことが乗り切るコツです。
補助金の交付決定通知書の到着までは、開始してはいけない
補助金の申請をし、審査を経て、交付決定がなされるのですが、交付決定通知書が送られてくる前にプロジェクトをスタートしてしまうと、補助の対象外になってしまうので、要注意です。
何をもってスタートをするかですが、顧客に対して受注や契約をしたり、また、業者に対して発注や契約をしたりすることを指します。
これらの書類の日付はチェックされますから、フライングしないように、気をつけましょう。
経費に対する証拠を残そう
補助金は、あらかじめ申請したプロジェクトにかかる経費を、目的通りに使用したものを補填するためのものです。そのプロジェクトに税金を原資とした返済不要のお金を支給するわけですから、お金が本当にかかったのかどうかは、きっちりとした証拠が必要です。
契約書、注文書、納品書、請求書、領収書(あるいは振込の履歴がわかるもの)は、一つも省略せずに、保管しておきましょう。
補助金受給後も報告や検査がある
プロジェクトを実行して、補助金を受け取ることができても、これで終わりではありません。補助金は、目的に沿った成果が出たかどうかで、その補助金が評価されます。
補助事業終了後、「補助事業の成果」と「経営状況」について報告書を出さなければならないのです。
それほど、事務的な負担が大きいものではありませんが、後々のチェックが入ることもお忘れなく、すべての資料は保管しておくことが求められます。
また、補助金の使い道や、実際どのように経理されているかなど、実地検査がある場合もあります。
第3章 現在公募中あるいはこれから公募が始まる補助金
春は補助金のシーズンです!現在公募がすでに始まっている補助金や、これからの補助金についてご紹介しましょう。
(1)ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金
「ものづくり」というタイトルがついているので、製造業向けの補助金だと捉えられがちなのですが、製造業でなくても申請ができます。
生産性向上に資する革新的サービス開発・試作品開発・生産性プロセスの改善を行うための設備投資などを支援するものとなります。
補助額は100万円~1,000万円で、補助率は原則として1/2ですが、場合によっては2/3です。
2019年2月18日から公募が始まっています。第1次締切は2月23日でした。第2次締切は5月8日です。詳細はこちらをご覧ください。
平成30年度補正「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」の公募について(2019.2.18 全国中央会)
こちらの補助金の大きな目的は、中小企業の生産性の劇的な向上です。
目的の理解には、中小サービス事業者の生産性向上のためのガイドラインです。この目的に沿うものであることが大前提となりますので、申請を考える際は、必ず目を通しておくとよいでしょう。
(2)小規模事業者持続化補助金
毎年補正予算で行われている小規模事業者持続化補助金、今年も実施される予定です。
小規模事業者を対象として、その販路拡大のために要する資金の一部を負担するもので、具体的には、ホームページ制作やチラシの作成、店舗改修などです。
小規模事業者の定義は、従業員20人以下(商業・サービス業は5人以下となります)の企業です。
実施時期はまだ公表されていませんが、4月以降、まもなく開始されると見込んでいます。内容は、これまでとほぼ同一の内容となる見込みです。
2019年度から、(4)でご紹介するIT導入補助金でホームページの作成ができなくなりました。よって、ホームページの制作については、小規模事業者持続化補助金でカバーすることがよいでしょう。
補助額は最大50万円、補助率は2/3です。予算が50億円ですから、1万社の会社が受給のチャンスありということになります。
小規模事業者持続化補助金の申請をするには、商工会議所へ相談に出向かなければならないので、予約が必要です。申請書をある程度記載してから、商工会議所へ出向く必要があります。
詳細はまだ公表されておりませんが、中小企業庁のホームページにて公表される予定です。
平成31年度予算関連事業/平成30年度補正予算関連事業
(3)事業承継補助金
事業承継、事業再編・事業統合を行った中小企業が、経営革新を伴う新しい取組を行った場合に、その挑戦を支援するための補助金です。
2016年4月1日以降に事業承継(代表の交代)や、吸収合併や事業譲渡などのM&Aや事業再編・事業統合を行った、あるいは行う事業者が補助対象となります。
ただ、事業承継や事業再編があったことに対してではなく、そのあと、経営革新や事業転換など新しい取組を行った事業者である必要があります。
後継者承継支援型であれば、補助額上限200万円、補助率は1/2または2/3です。事業所や既存事業の廃止などの事業整理を伴う場合は、補助額が上乗せとなります。
事業再編・事業統合支援型であれば、補助額の上限は600万円、補助率は1/2または2/3です。こちらも事業整理を伴う場合は、上乗せされ、最高で1,200万円の補助が受けられることとなります。
公募期間は、2019年4月12日~5月31日です。
こちらに公募要領が掲載されているので、ご確認ください。
平成30年度第2次補正予算事業承継補助金の公募要領を公表します(4月12日公募開始予定)
中小企業ビジネス支援サイト J-NET21やミラサポから情報が届くようにしておくとタイミングを逃しません。
(4)IT導入補助金
2019年もIT導入補助金の公募の実施が決まっています。
中小企業や小規模事業者が自社の課題やニーズに合ったITツール(ソフトウェアやサービス)を導入する経費の一部を補助することで、生産性向上・販路開拓を支援するものになります。
ソフトウェア費や導入関連費について補助されます。
2019年の補助額は、下限額が40万円で、上限額が450万円、補助率は1/2以下となります。前回の下限は15万円でしたので、30万円以上のIT投資が補助対象となったのですが、今回は下限が40万円と大幅にUPされています。
補助率が1/2ですから、80万円以上のIT投資が対象となり、それよりも少額なものについては、補助対象ではなくなることにご注意ください。IT投資のハードルが上がったことになります。
4月15日からIT導入支援事業者の登録申請が始まり、登録するITツールの提供者が採択される予定です。登録されたIT導入支援事業者の提供するITツールでなければ、応募できません。
導入したいITツールがある場合は、その提供業者が、IT導入支援事業者として登録申請をするのかどうかをあらかじめご確認ください。
主なスケジュールは次の通りです。
公募期間は、第1次公募が2019年5月27日開始予定です。第2次公募は2019年7月中旬予定。
なお、2017年、2018年のIT導入補助金を受給した企業は応募することができません。それは、IT投資後の評価期間があるからです。2016年のIT導入補助金を受給した企業は、今回からは応募できるそうです。
詳細はIT導入補助金2019トップページからご確認ください。
まとめ
補助金は返済不要ののお金ですが、国や団体が補助金を出すからには、出す目的があるので、その目的に沿ったものでないとお金を出す意義がありません。
補助金をもらう、もらわないは関係なく、まずは日頃から自社の状況や課題を整理しておきましょう。今後すべきことについて、マッチする補助金があれば、申請にチャレンジすると、よりブラッシュアップできるチャンスになります。
そのように補助金制度を生かしてもらい、単にお金をもらうことで終わらせず、自社のさらなるレベルアップに繋げることを願っています。
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