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2019年現在、少子化などによる後継者不足や、事業の将来性に対する懸念から廃業を決断するオーナーが少なくありません。
技術を開発、発展させ、国の経済を支えてきた中小企業を存続させるには、事業承継の重要性への理解と、早期での対策が必要です。
この記事では、事業承継の重要性や国の支援制度について説明し、具体的な方法やメリット・デメリットについても解説します。
政府が事業承継を後押しする理由と、承継を支援する二本の柱「事業承継税制」「事業承継補助金」とは
「事業承継」とは、企業のオーナーが選んだ後継者へと事業を引き継がせることを意味します。
事業を売却して譲渡する事業譲渡と異なるのは、事業そのものが承継されるため、企業の持つ技術や知的財産がそっくり受け継がれるという点です。
ところが、多くの中小企業では承継が進んでいません。
その原因としては、後継者の不足や業績の低迷、資金不足などがあげられ、オーナーは可能な限り自身で経営を続けるものの、その後に関しては見通しが立たない状態となっているためです。
しかし、そのまま後継者が見つからず廃業となってしまえば、従業員は職を失うことになり、また経営者が死亡した場合、事業は遺産として分割され、やはり事業の存続が不可能になる可能性があります。
このような事態が続けば、やがて次代へと伝えられなければならない技術や知識、維持されるべき雇用枠が失われ、日本の経済に大きな打撃となりかねません。
そこで、日本政府は中小企業の事業承継を後押しするべく「事業承継税制」を制定し、事業承継に伴う相続税や贈与税の納付期間や、税額の免除制度を設けています。
制度の適用を受けるには一定の要件を満たしている必要がありますが、相続税あるいは贈与税に対し、その全額について納付期間が延長され、さらに免除されることもあるため、ぜひとも利用したい制度です。
もう一つ、政府が支援事業として行っているものに「事業承継補助金」があります。
こちらは後継者承継支援型と事業再編・事業統合支援型に分かれており、前者は経営者の交代を支援するもの、後者はM&Aを支援するものです。
補助金は政府に認定された税理士事務所などの支援機関に相談し、確認書を作成してもらうことで申請が可能となります。
承継にかかる費用で悩んでいるなら、まず認定支援機関への問い合わせを行うことがお勧めです。
事業承継の方法にはそれぞれメリットとデメリットがあります
事業承継を考えるとき、オーナーにとって最も気がかりなことであり、承継の重要なポイントとなるのが承継先の選び方です。
親族の他には役員など事業に精通した社内の人材が一般的ですが、将来への展望や資産管理上の問題などから、M&Aによる社外への承継という手段が取られるケースも増えています。
これらにはそれぞれメリットもあればデメリットもあるため、オーナー自身が実情をよく把握し、従業員はもちろん、取引先など関係者への影響を踏まえて選ぶことが大切です。
まず、親族への承継は、後継者を含む誰もが、感情的に納得しやすいという点が、何よりのメリットとなります。
そのため、オーナーの子供や孫など後継者を早くから設定でき、時間にゆとりを持って必要な教育を行うことが可能となり、いざというときに人材が見つからないといった悩みが起こりません。
さらに、社内はもちろん取引先からもごく自然に受け止められます。
逆に、デメリットとなるのは、どうしても後継者としての資質を判断する目が甘くなりがちだということ、必ずしも本人の進路や職務への希望と合致するとは限らないことです。
また、他の親族から財産の配分に対して不満が出る可能性も考えられます。
次に、社内の人材への承継では、まず事業を受け継ぐためにふさわしい能力を持った人材を、オーナー自らが見極めることができることがメリットです。
加えて、後継者がすでに事業の内容やこれまでの経営方針、実際の業務の進め方などについて理解していることから、教育に時間がかかりません。
一方、デメリットとしては現オーナーが持つ債務や、業務上設定された担保の切り替え、後継者が株式を買い取るための資金をどうするかといったことがあります。
そして、M&Aによる社外への承継においては、後継者の不在や相続での面倒などを回避できることがメリットです。
後継者がいなくても事業が継続されるため、従業員の生活を守ることができます。
また、事業の売却益を相続財産として分け与えることが容易になり、親族からの不満が出にくくなるのも嬉しい点です。
ただし、買い手を探すことそのものに困難が伴うこと、銀行など取引金融機関が事情を知った場合、なんらかの措置をとられてしまう可能性があることデメリットとなります。
事業承継の手順と、無事成功させるためのポイントについて
事業承継の手順は、まず何よりもオーナー自身が事業の経営状況や資産などについて把握し、問題の有無を検証、基本方針をまとめることから始まります。
事業の継続、発展に向けて、経営力を向上させるために必要なものは何かを洗い出し、中小企業等経営強化法による税の軽減や金融支援が受けられるかどうかを検討、職務権限を見直すなどです。
その上で、最も適していると思われる承継方法を選ぶことになりますが、そこから先は、親族、あるいは社内で後継者を決めて承継を行うか、M&Aに踏み切るかで大きく異なります。
親族、あるいは社内の後継者への承継を選んだならば、次の手順は、あらためて経営目標を設定、後継者の教育に必要な時間も考慮して中~長期(5~10年程度)での事業承継計画を策定することです。
その後、スケジュールに沿って人材育成を行い、税金対策、資産管理を行います。
また、親族間でのもめごとを避けるための力関係の調整なども大事です。
一方、M&Aを選択した場合は、買い手とのマッチングに向けて動いていきます。
通常は取引金融機関などに仲介を依頼しますが、このとき肝心なのは承継にあたっての条件をまとめておくことです。
従業員の雇用条件や、社名の引き継ぎなど、しっかりと意思表示しましょう。
条件の合う買い手が見つかれば、契約の締結へと話を進めていくことになります。
このように、事業承継には綿密な計画を立て、長期的な視野で進めていく必要があり、そのためには、何よりも時間のゆとりがあることが重要です。
さらに、税金や法制度については間違いや見落としの無いよう、早い段階で専門家の協力を仰ぎましょう。
なお、政府は事業承継を推進するため、「事業承継マニュアル」「事業承継ガイトライン」の二つの資料をインターネット上で公開しているので、より理解を深めるために読んでおくことがおすすめです。
ゆとりのあるスケジュール、専門家のアドバイス、基礎的な知識を持つことという3つのポイントを押さえることが、事業承継を成功させるための鍵と言えます。
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