起業後に起こる社長の椅子をめぐる内紛

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複数人で事業を一緒に立ち上げることがありますが基本的にうまくいっているケースのほうが圧倒的に少ないです。

本当に仲が良いメンバーでスタートしても同じです。
だからといって複数人で事業をやることを否定しているわけではありません。前提として人は変わっていく、状況は変わっていくことなので仕方ないことです。
誰かと一緒にやりたいと思ってやってみたけどダメでしたでもよいと思っています。

ただ、重要なことは、ダメだったということでそのパートナーと別れればだけで済めばよいのですが、事業全体を廃業しないといけなくなってしまったり、実質的にあなたが会社を去らなくてはいけないことがありますので、その点の注意だけ少ししておきます。

よくある失敗の原因として、実質的な代表を決めていなかったこと、やることなど曖昧だったこと、ダウンサイド、アップサイドの話し合いなどの想定をリアルにすり合わせることの不足があります。

事業をはじめる前というのは、事業のアイデアの話やなんとなくの高揚感でとても盛り上がるわけです。
当たり前ですがほとんど全ての事業をやろうとしている人達は、自分たちは特別だ、自分たちはうまくいくと思っているので、楽しい話しかしません。

楽しい話とは、うまくいった後の展開とか、社名とか、どこに引っ越すかとかです。もちろんそれも大切なことなのですが、とても大切なこととして、複数人で事業を行う場合には、一見すると同じ感覚や前提だと思っていたことが全然違う認識を持っていたり、そもそも誰の想定にもなかったことが生じたときにどのようにするかで判断が決定的に分かれたりします。

複数人で事業を行うことは、1人でやるときよりもスピードが圧倒的に上がるはずですが、一方でというか大多数の場合には、実はスピードが落ちてしまうのです。それは内輪もめが本当に多いからです。

複数人でやる場合の一番のリスクというのは、議論などで収拾がつかなくなることです。
また議論の議論や議論が目的化することです。

実質的な代表が不在

形式的な意味でなく、本当に収集がつかなくなった場合に最後に責任をとって決める存在がいない、決めていないのです。特に独立・起業したてのタイミングは何よりスピードが重要にも関わらず、皆の合議制を大切にしているような場合では本来ありません。
(もちろんしっかり機能している合議制やふさわしいメンバーの集まりであればよいですが、なかなかありません。)

ただ、複数人ではじめるため、何となく皆、一緒、同等という感覚があると、形式的にも、実質的にも共同代表などの形を取ったり、意思決定や立場など曖昧にしたままスタートをしてしまい、誰が本当の代表かわからないということがよくあります。

このような状況では、結局、議論が決まらない場合に、永遠に議論をすることになり本末転倒な結果になります。そのため、やはり実質的な代表を1人決めるべきだと思います。その人が代表なのです。

揉めて決まらないことがあった場合には、最後はその人が決めるということを最初に決めておくこと、また、周りの人も揉めたときには最後その人が決めることに当たり前に納得しておくことが必要になります。

この実質的な代表の有無は本当に大切です。性善説で仲良いし、その時に話し合ったら大丈夫だろうということは基本的にはうまくいきませんので明確に決めておくべきです。

圧倒的な摺合せ不足や経験不足

摺合せの不足というのは、色々な価値観、前提、想定の摺合せです。実際は、事業計画書通りに事業がいくことはまずないですし、そもそも論、事業計画書を作成しているのが、はじめての人なわけなので想定しきれないことがたくさんあるわけです。

そのような中にあっても、特に想定が甘すぎるとすぐに空中分解することになります。
空中分解の原因としては、主にお金絡みと、役割・相手に期待することと実際にできることによるものです。

少し詳しく見てみましょう。

最低限話をしておくべきこととして、
・お金の話
・役割、相互に期待することとできること

は大切だと思います。

お金の話ですと、給与の話はもちろんですが、できたら一緒にやる人の借金の有無や、毎月かかっているお金(その人が固定で毎月いくらないとプライベートの資金繰りが回らないのか)なども把握したいところです。毎月いくらあれば最低限無理なく満足できる生活なのかもですね。そうでないと給与的な意味合いで、実際に生活ができないとなってしまったり、無理が生じすぎると精神的にやっていけません。また、お金が異常に必要だということになってしまうと、会社売上がない場合で給与出せない場合には長く持ちません。

また会社の想定で支払える給与の額などを相当シビアに見積もって、いつまでその金額でやっていけるかなどざっくばらんにシュミレーションをするべきだと思っています。

勢いよく、やる気もあったメンバーが実際の生活ができないということで、抜けさせてくださいというのは本当にあるあるです。

また、給与を上げる方法、その際に誰がどのように決めるのか、いくら上げるのかなども最低限決めておけるとよいかなと思います。いざという時になると揉めますし、功績の評価はとてもしにくくなります。給与を上げるというのは本当に難しいことです。

誰がどのようにというのを後出しになってしまうととても決めにくいです。全員が一律に同じ金額上がる場合にはよいですが、実際には、貢献度合いが全然違うことが多々で、そこで差をつけようとなります。そのときに給与の上がりが少ない人がなかなか納得しないことがあります。

役割、相互に期待することとできることですと、全体の中での役割、個々人の役割を決めましょう。その際に、実質的な代表は必ず決めるようにしてください。またその役割に期待することをできれば明確に決めておくべきです。

難しいかもしれませんが、役割に対して明確に決めたことの結果の評価も決めておけるとよいと思います。事後的に一緒に創業したメンバーをメンバー間で評価するというのは結構難しかったりします。もちろん細かい、高度な評価システムなどではなく、明確に客観的なもので構わないと思います。

また、それぞれの得意なこと、苦手なことも話をしておきましょう。特に苦手なことの話は重要だと思います。全体の中で、人数も当たり前ですが、そもそもいませんので、全員攻撃、全員守備のようになってしまうのですが、やはり苦手なことをメインにやるというようなことになってはいけません。ここはお互いがざっくばらんに話すことが大切だと思います。変に弱みを知られたくないと思って、正直に言わないと、後々、全体が困ることになります。

独立、起業当初というのは、本当に1人1人が全ての仕事をやらないといけなかったりします。僕も4名で起業しています。3名は比較的マルチにどんな仕事でも並行してやれましたが、1名は得意・不得意が明確にあるタイプで、1つのことにフォーカスした場合、誰よりも力を出せるのですが、そのようなことを周りがわからず、本人も創業者だし、周りと同じ仕事をという感覚もあったので同じ仕事を任せていたのですが、マルチタスクや圧倒的な業務量で少し体調を崩してしまうということがありました。

また、僕たちの場合には、幼馴染ということもあったので、本当に前提や価値観、想定もざっくばらんに全て共有できていたこともありましたので、給与なども都度どうやって上げていくかを決めていました。数年は一律で上げていくという感じにしていました。その後は受け持ちの業務の成果に応じてという形で決めるようにしています。

基本的には合議制で、実質的な代表というのはスタートして3年目くらいで決めて、僕になったという感じです。

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著者プロフィール

伊藤 健太

伊藤 健太

1986年生まれ、横浜出身、慶應義塾大学法学部卒業。

23歳の時、病気をきっかけに、小学校親友4名、資本金5万円で株式会社ウェイビーを創業。

10年間で10,000人を超える経営者、起業家の「組織づくり」「売上アップ」に携わる。

社長がいなくても回る強い組織、仕組みをつくる「01組織クラウド

小さな会社、個人事業主のビジネス成長を実現する「01クラウド

の01シリーズを展開中。

2016年10月より、世界経済フォーラム(ダボス会議)の日本代表選抜
2018年9月より、徳島大学客員教授就任
2020年4月より、iU 情報経営イノベーション専門職大学客員教授就任

「行動の品質」「自分の力で稼ぐ力を身につける本」など著書7冊。
日経新聞、エコノミスト、NHKなどメディア掲載も多数。