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日本には、たくさんの中小企業がありますが多くの会社で後継者問題に頭を抱えています。60歳以上になる経営者の数が多いですが、その経営者もいずれは誰かに会社を譲らなければいけません。そのまま会社を畳むのでなければ、事業承継をしなければいけない事を頭に入れておく必要があります。
では、事業承継とはどのようなものでしょうか。
事業承継の意味と承継のパターン
事業承継とは、会社の資産そして株式など後継者に引き継ぐことです。経営者も歳をとりますので、一人の経営者がいつまでも経営者の椅子に座り続けるわけにはいきません。会社が倒産しない限り、後継者を必要とします。日本で最も多い事業承継のパターンは親が子供に任せることです。
また、子供以外でも親族に引き継がせる方法もあるでしょう。これを、親族承継と言います。従来は、親の仕事を子供が引き継ぐのは当たり前でしたが、最近は子供のいない家庭が多く、また親族とのつながりが薄いことから親族承継をするパターンが減少してきています。
一方で、子供がいない場合や親族が会社経営者になることを希望していない場合には、血の繋がっていない従業員に任せる方法を考えることが必要です。これを、親族外承継といいます。従業員の中には、会社経営に向いている人もいるでしょう。経営者と従業員の話し合いの中で、もし会社の経営者になってくれる従業員がいるならばその人に任せてしまったほうがよいことも多いです。
それ以外には、M&Aにより会社売却をする方法があります。これは、経営者が完全に退き会社の商品や従業員そして株式などもほかの会社に手渡してしまうことです。もちろん買い手がいなければ成立しない話ですが、そのまま廃業するよりもこの方法をとることで、従業員にとっても譲渡する経営者にとってもさらには引き受ける会社にとってもメリットが大きい場合が多いです。
実際に、近年はM&Aをする企業が増加している傾向があります。
親族承継をするときのメリットとデメリット
親族承継をするときのメリットは、今まで経営者が築いてきた財産を身内以外に渡さなくて済むことです。
会社経営者としては、今まで自分で築いてきた財産を子供や身内に渡すことで満足できることが多くなります。また、後継者を早い段階で決定することができますので、引き継ぎまでに長期の準備期間を確保することも可能です。結果的に、準備万端の状態で引継ぎができるでしょう。さらには、身内の中で承継させれば会社の所有者と経営者を分離することを回避できる可能性が高くなります。
これに対して、親族承継のデメリットは親族内に経営能力が高い人がいるとは限らない点です。
いくら親子や親族といえども、それぞれ持っている能力が違います。親族の中にも、会社経営に向いている人もいれば向いていない人もいます。経営者の子供だからといって、必ずしも経営に向いていないことは、2代目で倒産してしまっている会社が多いことを見れば理解できるでしょう。
もう一つのデメリットは、相続人が複数いる場合、後継者を決める場面で争いになる可能性があることです。
このような問題点も理解して、親族承継が妥当かを判断する必要があります。
従業員に承継させる場合のメリットやデメリット
経営者と血のつながりがない人に事業承継する親族外承継のメリットは、候補者を探しやすいことです。
会社経営者から見れば、従業員は自分の子供のようなもので、それぞれの能力も理解しています。しかも、身内と違い客観的に従業員の能力を見ることができますので、適任者を探しやすくなります。
一方デメリットは、経営者が築き上げてきた財産を他人に渡さなければならないことです。会社の規模が大きければ大きいほど巨額の財産を渡すことになりますので、適任者を選ぶのが難しくなります。
M&Aで承継する場合のメリットとデメリットは
M&Aで承継する場合のメリットは、身内や会社内の人間にとらわれることなく広い視野で後継者を見つけることができる点です。また、経営者にとっては会社を売却することにより創業者の利益を享受できることもメリットと考えてよいでしょう。
その一方で、デメリットは事業承継の相手を探すまでに時間がかかってしまうことです。マッチングサイトなどもありますが、現実には経営者が理想としている相手を探したとしても相手側は了承してくれないこともあり、長期化する恐れが考えられます。
なぜ事業承継は急いだ方がよいのか
事業承継を行う場合には、早めに行った方がよいとされています。その理由の一つは、準備の段階で時間がかかる可能性があるからです。
事業承継は、やらなければいけないことがたくさんあります。それと同時に、後継者を見つけるのにもそれなりの時間がかかるわけです。そうすると、その間に経営が傾いたり経営者がなくなってしまうこともあります。特に事業承継を考えている経営者は60歳を過ぎていることが多いですので、病気の心配などを考えると急ぐ必要があることが理解できるでしょう。
だからと言って、短期間で事業承継をしようと考えても準備が不十分な状態で新しい後継者に引き継がせることになり、会社が傾いてしまうことも考えられます。それよりも、とにかく早めに準備を行い万全な体制で後継者に譲ることが大事です。
事業承継が簡単に進まない理由と廃業のリスク
事業承継は、会社を新しい経営者に引き継がせることですので、決めなければならないことが山ほどあります。
具体的には、まず会社の現状を把握することです。それと同時に後継者を見つけることが必要ですが、すぐに見つかることは少ないです。たとえ身内でも、すぐに返事をしてくれるとは限りませんので、やはり時間がかかってしまうことを頭に入れておきましょう。
外部から後継者を招く場合でも、その人のことをよく把握しておかなければできません。さらに、後継者との間で決めなければならないこともたくさんあります。例えば、会社の株を経営者が持っている場合にはどれだけの割合を後継者に所有させるか、そして今後の会社の計画や方向性なども明確にする必要があります。
このように、行うことがたくさんありますがあまり事業承継の準備に時間をかけ過ぎても廃業のリスクがあることを理解しておきましょう。社員の中から後継者を見つけるにしても、あるいはM&Aをするにしてもすぐに決まるようなことはありません。M&Aに関しては特に、相手の会社が買い取ってくれなければ、赤字が膨らんでしまいそのまま廃業しなければならない可能性もあります。
いずれにしても、早い段階で事業承継をすることを決めて、早めの準備を行っておくことが吉です。
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