目次 [非表示]
経営者が健在だったとしても、企業が成長を続けるためには事業継承の準備が大切です。いざ事業継承のタイミングが来たとき、正しい準備ができていないと企業力が落ちてしまいかねません。また、余計な費用がかかりすぎてしまう可能性もあります。
この記事では、企業が来るべき事業継承を準備しておく必要性について解説します。
事業継承の準備ができていないとどうなるか
どうして事業継承の準備をしておく必要性があるのかというと、「社会的信用」を保つためです。企業の信用は経営者によって維持されています。経営者が長年残してきた業績や知名度に対し、金融機関やスポンサーはお金を出してくれます。経営者が顧客にとってのブランド力になっているケースも多いでしょう。
事業継承で経営者が変わってしまうと、前任者の積み上げてきた信用がゼロになってしまう可能性があります。そのため、前任者が健在であっても後継者を選んでおき、役職だけでなく信用も引き継いでいけるよう考えなくてはいけません。
次に、事業継承は「費用」という問題も出てきます。相続税や贈与税といった税金がかかるだけではありません。後継者は遺族に遺留分を請求される可能性もあり、すべてを支払っていると資本の50%以上を奪われかねないのです。急に経営者が交代しても費用が少なくて済むよう、対策を整えておきましょう。
そのほか、事業継承をしてすぐ経営体制を安定させ、顧客を失わないためにも入念な準備が求められます。事業継承によって会社の成長が停滞しないように気をつけましょう。
まずは会社の財産を正確に把握する
事業継承の準備では、最初に「会社の財産」をリストアップすることから始めます。会社がどんな資産を抱えており、何を継承していくのかをはっきりさせましょう。
資産の例としては「自社株式」が挙げられます。基本的に、経営者が保持していた株式は後継者に受け継がれます。株式は企業内における発言力に影響する資産なので、正確な数字を把握しておかなくてはいけません。また、企業の建物や自動車、土地なども資産に含まれます。そして、企業の運転資金についても常にチェックできる体制を整えておきましょう。
一方で、事業継承では「形のない財産」も考えなくてはなりません。前任者の頭にあった経営ノウハウなどは、形こそないものの必ず継承するべき財産です。また、社員からの人望、取引先との関係性なども財産だといえるでしょう。企業がものづくりに携わっているなら、職人の持つ「経験」や「スキル」も守っていく必要性があります。
資金や株式と違い、これらの財産は手続きさえ踏めば受け継いでいけるわけではありません。前任者がいるうちにノウハウを言語化したり後継者を取引先に紹介したりして、将来に備えましょう。
後継者はどうやって決めるのか
前任者がどんなに元気でも、後継者候補は定めておきましょう。どんな理由で前任者が働けなくなるかは予想できません。それに、後継者を教育する時間は長いにこしたことがないでしょう。多くの会社は後継者を「家族」と「社員」、いずれかから選出しています。家族に継承する場合、会社は前任者の「財産」なので相続手続きをとらなくてはいけません。
前任者の理想どおりに企業を残すなら、生前相続が効率的でしょう。前任者が誰にどれだけの財産を渡すかを細かく決められるからです。
一方、家族以外の社員に継承するときは、相続をめぐって遺族とトラブルになるリスクもあります。あらかじめ、遺族と財産分与についての話し合いは済ませておくといいでしょう。 また、家族に後継者がいなくて、社内にも適任者が現れないまま時間が経つと、事業継承は難しくなります。
いっそ、M&Aによって外部から新しい経営者を迎えることも一つの方法です。敏腕な経営者なら企業力をさらに成長させられるだけでなく、これまでにはなかったメソッドも注入してくれるでしょう。特に、経営状態が悪くなっていた企業なら起死回生のチャンスにもなりえます。
事業継承は計画に沿って進めていく
前任者が急に健康状態を悪化させるなど、事業継承の必要性はいつ迫ってきてもおかしくありません。そうなってから慌てて準備を始めると、手続きをミスする可能性は高まります。また、税金対策なども杜撰になってしまい、予想外の出費が生まれてしまうでしょう。
事業継承を確実かつ円滑に進めるには「計画書」が重要です。事業継承するべき財産や後任者、行うべき作業をまとめて計画書に落とし込みます。たとえ前任者がいなくても、計画書を見れば事業継承ができるように準備しておきましょう。 計画書で大切な点は、作業内容だけでなく「時期」まで書いておくことです。
事業継承をいつ行うのかが決まれば、そこから逆算して作業を予定していきます。誰がどんな作業を担当するのかまで書かれていると、事業継承はスムーズに行えます。特に、相続税などの税金は支払期限があるので、事業継承では早急に算出しなくてはいけません。納税先も含めて、計画書に詳細が記してあると便利です。
事業継承の準備を進めたほうがいいケースとは
成長をしたいと感じているすべての企業にとって事業継承は避けられない課題です。中でも、必要性が大きくなっているケースとして、「ワンマン経営者」が挙げられます。経営者個人の資質によって発展を遂げてきた企業は、代替わりによって成長が止まってしまうことがあるからです。特に、経営者が実践してきたノウハウが引き継がれないと、大幅に売上が下がっても不思議ではありません。
事業継承計画を作った上で、後継者を育てる意識を持ちましょう。 次に、M&Aによる事業継承を目指しているときも早い段階からの準備が大切です。なぜなら、M&Aはすぐに相手が見つかるものではありません。売り手、買い手が互いの特徴をよく調べた上で慎重に進めていきます。
しかし、準備が整っていないと買い手に求める条件が見えづらくなりがちです。その結果、相性の悪い企業に吸収合併されてしまうリスクも出てきます。M&A後に企業の形を残せずに、全権を奪われてしまうこともありえるでしょう。逆に、事業継承の準備が万全なら、じっくりと買い手を探す余裕が生まれます。
相手の資金力、業種、経営者の人間性などを吟味して、プラス面の多いM&Aが実現するでしょう。両社が相思相愛のM&Aになれば、事業継承は健全に行われてさらなる飛躍が期待できます。
あわせて読みたい関連記事
実質税負担ゼロで自社株が引き継げる特例事業承継税制とは?
事業承継にかかる贈与税や相続税の負担が軽減される?後継者は知っておきたい特例事業承継税制
特例事業承継税制を検討する際にはおさえておきたい特例の落とし穴
ちょっと待って!知っておきたい特例事業承継税制をとりまくリスクと対応策
事業承継をきっかけに家族ともめたくない方はお読みください
事業承継は先代経営者と後継者の問題だけではない。家族ともめやすい遺留分問題とは?
事業を売却するってどういうこと?
法人の事業譲渡とは?~メリット・デメリットと手続き~まとめて解説
企業の承継は、自社株の引継ぎだけじゃない
事業承継・会社/企業の承継って何?承継と継承の違いも合わせて解説
ゼロイチよりも買収!?これから増えるM&Aについておさえよう
M&Aって一体なに?会社に係るM&Aを基礎知識から理解しよう!
親族での事業承継を考えるポイントをまとめました
事業相続・承継!【親族内承継】って何?納税猶予も含めて解説!
中小企業を長年コンサルしてきた元金融機関行員中小企業診断士が語るシリーズ
事業承継との向き合い方②事業承継を幻にしないために〜誰に引き継ぐべきか〜
事業承継との向き合い方④~なぜモメるのか?親子間のボタンの掛け違いから考える事業承継~
事業承継との向き合い方⑤ 事業を譲る側がすべきこととは〜船に船頭は二人もいらない?〜