事業承継元年?税優遇策「事業承継税制」の大幅拡充で税負担大幅軽減!

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次世代に自分の事業を継承する「事業承継」は中小企業の事業主にとって最後の大仕事です。2019年現在で、身内・親族への承継は以前の8割強から4割弱に減り「事業承継」のあり方も変わってきています。このような変化の中、国は平成30年から事業承継を支援するための優遇税制を始めています。

この記事では「事業承継」における税に関するポイントについて説明します。

事業承継に関わる税について

事業承継は事業に関する全てのものを後継者に承継します。俗に言う「ヒト・モノ・カネ」ですが、当然資産値価値があるものには承継するにあたって税金が発生するものがあります。

まず、親族が事業承継する場合で先代が亡くなることで承継したときは相続税が発生します。事業承継であっても、引き継ぐものが土地や建物、現金など個人で相続するものと同じものについては、一般の相続と同じ税率で相続税が発生しますが、株式だけは計算が異なります。

また、上場している公開株であれば、価値は市場で決まっているので明確ですが、中小企業の多くは株式会社であっても上場はしていません。 したがって、株価を評価額として計算する必要があります。この場合、公認会計士などのプロの手を借りないと第三者(特に税務署)を納得させる金額にならないので、未公開株の株価算定に詳しいプロの手を借りましょう。

一方、先代が存命で事業承継する場合は最低でも株式は譲渡することになるので、贈与税が発生します。事業に必要な土地や建物などを譲る場合も贈与税が発生します。注意しなければならないのは、株式の贈与税は税率が高いことです。後述しますが、計画的に贈与することで税金を抑えることができるので、その点に留意しましょう。

次に、親族外承継で役員・従業員など個人に承継する場合は、後継者が事業資産を買取るときは相続や贈与は発生しませんが、後継者が事業を引き継ぐのに必要な資金を持っていなければなりません。そして、最終的には親族が後継者となる予定で、一時的に経営のみを引き継ぐ場合も税金は発生しません。

ただし、経営者から後継者に事業資産が贈与された場合は、贈与税が発生します。しかし、親族外承継の場合、贈与を行なうことは少ないので、後継者が資金を調達できるかの方が問題になります。

そして、M&Aで承継する場合、2つのパターンがあります。M&Aには5つの方法がありますが、事業承継に使われるのは主に株式譲渡と事業譲渡です。株式譲渡は会社全部を譲渡するときに、事業譲渡は会社の一部を譲渡するときに使われます。

中小企業の場合、M&Aによる事業承継として会社全部を譲渡することが多いので、実際に行なわれるのは大部分が株式譲渡です。株式譲渡でかかる税金は株主(事業主)が個人か法人かで異なります。片や、個人の場合、譲渡所得となり所得税15%と住民税5%で計20%が譲渡益に対してかかります。法人の場合、法人の事業益として扱われるので法人税40%がかかります。

このように、事業承継においては事業資産の譲渡に伴う税金がかかり、金額が大きくて払えずにあきらめるパターンもあります。事業承継を計画するときにはかかる税金のことも考慮しましょう。

事業承継税制について

中小企業の事業承継を後押ししたい政府は、「事業承継税制」を制定して、事業承継の際に発生する税金を一部猶予していました。そして、平成30年にこの制度をさらに拡充して、10年間の期限つきで事業承継の際に相続税や贈与税を100%納税猶予する「経営承継円滑化法【相続税、贈与税の納税猶予制度の特例】」を施行しました。そのために、平成30年を「事業承継元年」という人もいます。

この制度を利用すると、前述した事業承継の際にかかる株式の相続税や贈与税の納税を10年間猶予してもらうことができ、認定期間後に次の後継者に株式を贈与したときや後継者が死亡するなどの特定の事由が発生した場合、納税自体が免除されます。 これにより、税金の納付がネックとなっている事業承継の問題をクリアすることができます。

もちろん、無条件ではなく、まず特例承継計画を作成して、認定経営革新等支援機関(商工会議所など)の所見をもらったものを提出する必要があります。これは、平成30年1月1日から平成35年3月31日までに提出できます。この計画書が都道府県知事の「認定」を受けられれば納税を猶予してもらえます。

申告期限後(平成35年4月1日以降)は報告期間中(原則として贈与税の申告期限から5年間)に「年次報告書」を都道府県庁に「継続手続書」を税務署に提出する必要があり、後継者が代表者として経営を行わなければなりません。 また、この期間中は会社の雇用の8割を維持することも求められます。

その後5年間は、後継者が代表でなくてもかまいませんが、対象株式を保有することが求められます。加えて、3年に1回税務署へ「継続届出書」提出する必要があります。なお、特例措置期間中でも従来の「事業承継税制」(一般措置)を受けることは可能です。

その他の税金対策

まず、経営者の突然の死亡による相続では税金対策はほとんどとれないので、事業承継が視野に入る50歳台ぐらいから準備を始めましょう。

まず、親族へ承継する場合は、生前贈与を活用しましょう。特に株式は年間110万円の非課税枠を使い、10数年に渡って贈与を行なうことで、かなり税負担を軽減することができます。また、大半の中小企業は上場していないでしょうから、贈与額を算出するときは未公開株の株価算定を行なうことになります。

利益が減少したときは株価算定の評価額が低くなるので、含み損のある資産を償却したときや役員退職金などで経費が大きくなったときは贈与を行なうチャンスです。多めに生前贈与してしまいましょう。

そして、M&Aによる事業承継では、株式譲渡を行なう方がメリットが大きいです。なぜなら、経営者個人が株主であることが多く、前述した個人による譲渡所得となり税率は20%(住民税込み)となります。ですから、事業譲渡の法人税40%よりかなり税金を軽減できます。

そもそも事業承継(事業の後継者への引き継ぎ)するので、事業分割で必要な事業譲渡は行なわないことが大半でしょうが、一部事業のみ売却して残りを親族に事業承継する場合もありえます。この場合、事業譲渡益分は税金が高くなります。

なお、株式譲渡を行なう場合、事業承継と同時に経営者が退職して退職金を受け取ることで、退職金を損金計算して課税額を減らすことができます。 さらに、退職所得は株式譲渡とほとんど税率がかわらないので、M&Aの売却益を低くすることで自分の手取り額を増やすことが可能です。

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