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少子高齢化が進む日本では、後継者不足が原因で廃業に追い込まれる中小企業が増加しています。子どもや親族が事業を引き継ぐことができない場合は、第三者に事業承継することも珍しくありません。
ここでは、後継者不足による事業承継問題の現状と、後継者不足を解決する方法、事業承継のメリット・デメリットについて解説します。
後継者不足に悩む経営者が増えている
企業自体には特に問題がなく、今後も経営可能な状態にもかかわらず、後継者がいないために廃業を余儀なくされる経営者が増えています。日本政策金融公庫総合研究所が行ったアンケート調査では、中小企業の経営者(60歳以上)の約半数が廃業予定であると回答したそうです。
また、その中の約3割は、子どもがいない、子どもに継ぐ意志がないなど、後継者不足を原因とするものです。他にも、帝国データバンクが行った「後継者問題に関する企業の実態調査(2017年)」では、国内企業の約65%が後継者不足に悩まされているというデータを示しています。
経済産業省の試算によると、2025年には経営者が70歳を超える中小企業が6割以上になり、そのうち現段階で後継者がいない企業は127万社にのぼるとのことです。廃業を余儀なくされる企業の約半数は、業績が良好であり、いわゆる黒字倒産です。廃業が増加することにより、2025年までの総計では、約650万人の雇用と約22兆円のGDP(国内総生産)が損失されると考えられています。
後継者不足が起こる原因とは?
後継者不足の原因の一つは、少子化です。従来の事業承継では、親から子へと事業を引き継ぐのが一般的でした。しかし、昨今の少子化により経営者に子どもがいなかったり、子どもがいたとしても事業を継ぎたくないと拒否されたりするケースが少なくありません。これにより、親族間の事業承継は年々減少しています。
また、職業を選択する自由を、子どもから奪いたくないと考える経営者も少なからずいるようです。今は業績がよくとも、数年先はどうなるかわかりません。要らぬ苦労を子どもに押しつけるよりは、自分の代できっぱり終わらせて、子どもには好きな道を選んでほしいと願う経営者も少なくないようです。
さらに、事業承継にはとにかく時間がかかります。後継ぎを育成する期間も考慮すると、5~10年ほどは必要になるといわれています。ところが、帝国データバンクが中小企業を対象に行ったアンケート調査によると、60歳以上の経営者のうち約半数は、事業承継の準備前あるいは準備をしていない、考えていない、と答えたそうです。
この結果から、後継者不足が問題となっているにもかかわらず、実際は何も対策していない経営者が多いことがわかります。これには、日々の業務に追われて余裕がなかったり、そもそも何から始めればよいのかわからなかったりして、事業承継の準備に取り掛かれないという背景が影響しているようです。
後継者不足を解決する方法
後継者不足を解決する方法として最も一般的な方法は、事業承継の専門家に相談することではないでしょうか。事業承継の専門家には、金融機関やM&A仲介会社、事業承継の経験がある弁護士・会計士・税理士などがあげられます。専門知識が豊富なことはもちろん、事業の引き継ぎ先の紹介から事業承継にかかわる手続きまで、トータルでサポートを行っています。
ただし、依頼する専門家によっては、仲介手数料が高額になるケースもあるため注意が必要です。料金体系にはかなり差がありますので、いろいろと比較してみて最適な専門家に依頼するようにしましょう。
例えば、「事業引継ぎ支援センター」は、国が設けた公的支援機関で、平成23年に全国に設置されました。後継者不足の相談や、事業承継相手のマッチング、専門家・金融機関の紹介などをしています。事業引継ぎ支援センターは中小企業庁が管轄している機関であり、信頼性の高さはお墨付きです。高額な料金を請求されるような心配がなく、誰でも安心して利用することができます。
しかし、比較的新しい機関であることから、現時点での認知度はあまり高くはありません。そのため、事業承継のマッチング案件数が少なく、引き継ぎ先が限られてしまう点はデメリットともいえるでしょう。
その他にも、近年増えてきているのが、事業承継のマッチングサイトです。マッチングサイトに登録することによって、オンライン上で後継者を探せるというサービスです。マッチングサイトによってサービス内容は異なっており、マッチングのみで事業承継の交渉や手続きは行わないところもあれば、マッチングから手続きまで一貫してサポートしているところもあります。
マッチングサイトを利用するメリットは、よりたくさんの人にアピールできることです。引き継ぎ先の候補が多ければ多いほど、最適な相手に出会える確率は当然上がります。ただし、マッチングサイトにもいろいろありますので、信頼性の高い会社を選ぶことが大切です。
事業承継のメリット・デメリット
事業承継のメリットには、主に2つがあげられます。
一つは、売却益を得られることです。中小企業の事業承継で多く採用されているのが「株式譲渡」という手法で、リタイア後の生活を悠々自適に送れるほどの売却益が手に入ることも珍しくありません。
もう一つのメリットは、事業や技術が後世に引き継がれていくことです。廃業してしまうと、これまで築き上げてきた事業や技術がそこで消滅してしまいますが、事業承継をすることで大切な経営資産を守ることができます。また、一緒に働いてきた従業員たちを解雇せずに済み、彼らの生活を脅かす心配もなくなります。
一方で、事業承継にはデメリットもみられます。
事業承継を株式譲渡で行った場合は、後継者は債務も引き継ぐことになりますが、引き継ぎ後に簿外債務が見つかることがあります。簿外債務とは、帳簿には出てこない債務のことで、意図的に売り手が隠しているケースもあれば単に気付いていないケースもあり、いずれにせよ入念な企業監査は必須です。
また、引き渡す側と引き継ぐ側の双方が、満足のいく条件で事業承継ができるとは限りません。条件が折り合わなければ、どちらかが妥協することになりますが、どちらも譲らなければ交渉が難航します。交渉が長引けば長引くほど、精神的な負担も大きくなることでしょう。
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