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創業を考えるなら、手元のお金の準備はしっかりしておきたいもの。お金がなくなってしまっては、創業できたとしても、事業を続けていくことはできません。
では、創業の融資を受けるには、どのような段取りをすればよいのでしょうか。
第1章 創業の融資を考えるなら、まずは事業計画書から
どこから融資を受けるかにかかわらず、あるいは融資を受けないという判断になったとしても、まずは事業計画書を作成されることをおすすめします。
(1)なぜ融資を受けるために事業計画書が必要なのか
事業計画書を作成した方がいいと一般的にも言われますが、なぜ必要なのでしょうか。それは、融資を受ける受けないに関わらず、多くの人の協力が経営には必須だからです。
事業計画書を作成し、公表することで支援者や援助を集め、行動計画によって、実際にトライ&エラーを繰り返し、軌道修正しながら事業をすすめていくことになります。
まずは事業計画書を作り、自社の事業を客観的に見つめ、人にどう伝えたらよいかを考え抜き、言語化することが大切です。このように作った事業計画書が、経営者自身を励まし、援助者を呼び寄せることになります。
いつの時代も未来が見通せることはありません。事業計画書によって、モノサシができると、自分の判断とのギャップに気づき、軌道修正しながら、未来に向かうことができます。何をやろうとしているのかを事業計画書に落とし込むことで、「じゃあ応援しよう」と支援する会社や人、金融機関が現れるのです。
(2)事業計画書を作成するのに便利なツール
決して融資を受けるためだけに事業計画書を作らないでください。せっかく作る事業計画書は、経営に役立ててほしいと思います。
事業計画書というと難しいイメージかもしれませんが、最近では、無料でダウンロードできて、作りやすいものも増えています。その一部をご紹介します。
中小企業基盤整備機構がリリースしている経営計画策定ツールです。
アプリをダウンロードし、アプリ上で経営計画を作ることができます。完全に無料で使えるアプリです。
質問に答えていくと、事業計画書の中身が埋まっていきますので、初心者でもつくりやすいものになっています。内容は事業のコンセプトや市場分析、自社分析、商品・サービス分析、事業戦略、行動計画まで、漏れのない事業計画が作ることができ、第三者に出すとしても、問題ないものが作れます。
エクセルファイルへ出力し、パソコンでの仕上げができ、融資を申し込む際の事業計画書・借入申込書のベースにすることも可能です。
また、経営計画を作成する上で必要な基礎知識を、クイズ形式で楽しみながら学習する機能もあるため、作りながら経営についての知識を深めることができます。
長年に渡って大阪の中小企業の起業家・事業家を支援している大阪産業創造館のサイトにある「経営お道具箱」ページ。このなかの「ビジネスプランフォーマット」の中に、事業計画書に必要なテンプレートが一通りそろっています。
事業の概要を客観的な視点でまとめる「ビジネスプランサマリー」書式は、事業計画をまとめる前に必ず作成しておきたいものです。
税理士の原直美さんによる著書です。
この書籍を買うと、事業計画書フォーマットがダウンロードできるようになっています。この書籍の流れに従って51の質問に答えるだけで、一通りの事業計画ができます。
自社の強みの分析のみならず、マーケットに対する分析についてもしっかり盛り込まれています。バランスよく質問が用意されており、資金の裏付けについても資金繰り表で明確にできるため、説得力ある計画書を作成できると思います。
創業融資を受ける場合は、どの金融機関から受けるかに関わらず、京都信用金庫の「ここからはじまる」という融資制度紹介ページにある事業計画書フォーマットがおすすめです。
なぜ、この事業をやるのか、マーケット分析はできているのかなど、あらかじめ整理しておかなければならないことが質問形式でまとまっています。
金融機関がつくるフォーマットなので、すなわち融資を受けるときに金融機関が知りたいことがまとまっています。
・日本政策金融公庫 国民生活事業 借入申込書等ダウンロードページ
融資を受けるための事業計画書や創業計画書をダウンロードできるページです。記入例が揃っているので、書き方を参考にしながら記載をすることができます。
とてもコンパクトにまとまる事業計画書ですが、実際に経営に必要な事業計画書としてつくるには、やや不十分かもしれません。
上記でご紹介したツールなどで作成した事業計画書をもとに、こちらに転記していくとよいでしょう。
(3)創業融資で気を付けたいこと
上記のツールなどを使って事業計画を立てるとよくわかるのですが、頭の中で考えているよりも、創業するときには多くのお金が必要です。
「このくらいでいけるだろう」と、かかる費用をギリギリ少なく見積もったり、売上の見通しが甘いと、一旦融資を受けることができても、そのあとで足りなくなってしまうケースがあります。
特に、飲食店など、初期費用が多く、また、お客様がすぐには増えない事業を始める際の資金調達には要注意です。
融資の返済金額を少なくしたいがために、初期費用を抑えて事業計画を作りますが、実際に店舗づくりをするときには、こだわりや欲がでてきて、あれも必要これも必要と当初の見積もりよりも多くの費用がかかってしまったというケースが多いです。
また、開業してすぐに収支トントンとなるだけのお客様が来てくれるわけではない事業がほとんどだと思うのですが、多く見積もっている人が少なくありません。創業の融資を受けるには、客数が足りずに赤字になる期間の持ち出し分についても、資金調達をしておきたいところです。
客観的に把握することが必要ですが、自分ひとりで事業計画を作成すると、主観的な見積りが入ってしまいます。客観的な目線を入れるには、事業計画を第三者である専門家(税理士や中小企業診断士など)と一緒に作成するとよいと思います。
第2章 どこで創業融資を受けるのがよいか
事業計画書を作成し、借入をする金額を見極めることができたら、金融機関へ相談にいきましょう。どこへ相談に行ったらよいのでしょうか。
(1)まずは日本政策金融公庫
日本政策金融公庫の創業融資を利用することがメジャーな創業資金の確保の仕方だといえます。
日本政策金融公庫は、国民生活事業、中小企業事業、農林水産事業の3つの事業を行っています。このうち、国民生活事業が、創業資金の資金調達を支援しています。
新たに事業を始める人、事業開始から税務申告を2期終えていない人を対象に「新創業融資制度」を設けており、一定の要件をクリアできれば、担保や保証人不要で融資が受けられます。
また、「女性、若者/シニア起業家支援資金」という女性や特定の年代の人を対象とした融資制度も取り扱っています。
(2)制度融資も選択肢の一つ
創業融資の選択肢としては、都道府県などの制度融資を使い、創業資金の融資を受けることも考えられます。
制度融資とは、都道府県などの地方自治体が、中小企業や会社を創業したい人へのサポートを目的として行う融資です。
通常、金融機関が窓口となり、自治体からの預託金を用いて融資をします。
金利が低いのがメリットですが、自治体や金融機関、保証協会の3者で審査をするので、時間がかかるというデメリットもあります。
日本政策金融公庫の次の選択肢としてもっておくとよいでしょう。
(3)創業融資に力を入れている金融機関に相談する
また、最近では、民間金融機関、とくに信用金庫でも創業融資に積極的なところが増えてきています。日本政策金融公庫とのジョイントでの融資商品がある金融機関もあります。
創業支援をうたっている民間金融機関から、どんな創業融資商品があるかを確認することも有効です。
第3章 創業融資について金融機関が特に着目していること
次に、創業融資を受けるにあたり、どこに金融機関が着目しているか、相手の視点を確認していきましょう。
(1)自己資金は準備できているか
創業までに自己資金をどのくらい蓄えることができたのかを確認されます。たとえば、日本政策金融公庫の創業融資では、創業に必要なお金の10分の1の自己資金の準備が必要です。
また、自己資金のあるなしに関わらず、自己資金をコツコツ貯めることができたのかどうかで、信用力を見ていることもあります。実際に預金通帳を確認されます。
例えば、給料から毎月どのくらい貯金できているのかという形跡が残っているかどうか。これが重要です。
創業を考えているのであれば、自己資金は大いに越したことはありません。毎月一定額を貯金するようにしましょう。
(2)十分な経験やスキルを持っているのか
創業して営む事業に関する経験を、それまでどのくらい経験してきたかということがチェックされます。それまで経験してきたこととあまりに畑違いなことをしようとすると、なぜそれができるのかという根拠を一層示す必要があるでしょう。
(3)ちゃんと返済はされるのか
どれだけ熱意を持っていたとしても、返済できるだけの利益が将来的に上がるビジネスでなければ、金融機関は貸すことができません。
返済可能性のあるなしは、事業計画書での利益と返済額との比較、そして、事業計画書の実現可能性で見極められます。
ですから、事業計画書は、ある程度現実的に作られたものでないといけませんし、そのうえで、ちゃんと黒字が出せて、返済余力があるものを描くことが必要です。
また、売上を得られる根拠も必要です。実際に、もう顧客がどのくらい確保できているとか、集客ルートはどのくらいあるのかなど、具体的であればあるほど良いと思います。
それには、創業後よりも、創業前にリサーチや見込客づくりをしておくことが重要といえそうです。
(4)資金使途は何か、融資を受けたお金は何に使われるのか
創業で融資を受ける際は、資金の使い道を示す必要があります。
自己資金200万円で融資を1,800万円受けたい場合には、その合計2,000万円は何に使われるのか。この数字はざっくりと見積るよりは、具体的に見積書や物件の家賃の資料などで示す必要があります。
まとめ
ここまで見てきたように、創業の融資には、まずは現実的な事業計画書を作成すること、これが1つ目の出発点です。
そして、事業計画書を作成したら、一度に完成させようと思わないことが大切です。既に起業している方や、専門家や金融機関に相談し、アドバイスを積極的に受け、ブラッシュアップしながら、自分に協力してくれる人を増やしていき、そのプロセスのなかで、創業融資を勝ち取っていきましょう。
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